マツダ車は、男ウケする。クルマづくりにおける信念のようなものを感じさせるところだろうか。クラフツマンシップを思わせる、自分がよしと思う道を追求する姿勢は、同類を見つけることすらむずかしい。2017年に登場した現行「CX-5」も、やはり、マツダ的にていねいに作られたクルマだ。

さる2021年11月、そのCX-5がマイナーチェンジを受けた。それがなかなかよい内容で、この全長4.57メートルのSUVの魅力が増したといえる。

改良の内容は、車体フレームへの減衰構造の採用、スプリング(バネレートを高める)とダンパー特性の見直し(伸びがわの減衰性を下げる)、静粛性や快適性の向上など、広い範囲にわたる。フロントとリアを中心に外観にも手が入れられた。

“推し”のモデルは「フィールドジャーニー」

全長4575ミリ、全幅1690ミリと日本ではじゅうぶん余裕あるサイズ。
全長4575ミリ、全幅1,845ミリ、全高1690ミリと日本ではじゅうぶん余裕あるサイズ。
「XDフィールドジャーニー」の2188cc4気筒ディーゼルエンジンは、147kW(200ps)の最高出力と450Nmの最大トルクを発生。
「XDフィールドジャーニー」の2188cc4気筒ディーゼルエンジンは、147kW(200ps)の最高出力と450Nmの最大トルクを発生。

私が乗ったのは、今回あらたにラインナップに加えられた「XDフィールドジャーニー」なるグレード。ベースは2.2リッターのディーゼルモデル「XD」。もうひとつ、同時にガソリンの「20S」にもおなじくフィールドジャーニーが設定された。

「家族や仲間と日常生活もアウトドアライフも楽しむために」と、マツダではこのモデルのコンセプトを説明している。アウトドアブームがいまも活況を呈しているなか、メーカーとしては“推し”のモデルなのだ。

フィールドジャーニーの専用装備は、「Mi-Drive」なるドライブモードに「オフロード」モードが設定されていることがひとつ。これ、ワンプッシュで作動するところが特徴になる。

作動させると、ドライバーのハンドル操作に応じてエンジンの駆動トルクを変化させ、4輪への接地荷重を最適化して4輪への接地荷重を最適化する「G-ベクタリングコントロール」を専用チューニング。悪路での接地性を高めるとともに、コーナリング性能を上げていると説明された

さらに、「オフロード」モードの機能としては、急坂(のぼり)での発進時はエンジンのアイドリング回転数をすこし上げることで、ドライバーのアクセル操作を手助け。下りでの発進時には、逆に、アイドリング回転数を下げる制御があげられる。

エンジン制御が、上記のように積極的に行われる。「オフロード」モードを作動させているときは、シフトアップのタイミングをやや遅らせる。予期せぬうちにギアが上がると、意図していたよりトルクが落ち込んだり、戸惑うもの。ドライバーの使い勝手を考えての設定といえる。

多くのSUVでは、オフロードモードが細かくて、たとえば「泥濘地」「岩場」「砂地」「雪上」などとあったりする。いま自分が走っている路面がどれに当たるか、判断で当惑した経験をもつひともけっこういるのでは。

「北米のように荒れた路面がいきなり出現するような状況下では、路面の状況を判断していちいち“最適”モードにダイヤルを合わせるより、路面から目を離さずボタンを押せたほうが安全と判断しました」。操縦安全性を担当したマツダの山崎章史氏氏の説明も、マツダらしいというべきか、明快だ。悪天候時はオンロードでもこのモードが効果を発揮するという。

改良の度合いをしっかりと感じられる出来栄え

フィールドジャーニーはライムグリーンのアクセントが使われる。
フィールドジャーニーはライムグリーンのアクセントが使われる。
オフロードモードを作動させると計器盤のカラーが専用になる。
オフロードモードを作動させると計器盤のカラーが専用になる。

CX-5のなかで唯一オールシーズンタイヤ装着であることに加え、外観上の特徴もさまざま。まず、フロントグリル内のライムグリーンのアクセントが眼をひく。加えて、シルバー塗装のガーニッシュ(加飾)が前後バンパーとサイドに設けられるとともに、ブラックのドアミラーやグレーメタリック塗装の17インチアルミホイールが採用された。

内装面では、上記フロントグリルのライムグリーンを、シートのステッチとパイピングに採用するとともに、ダッシュボードのエアコンルーバーもこの色で塗装された。

はたして、ドライブしての印象は、マツダの開発陣が、上質さをめざしたというだけあって、乗り心地はさらにしなやかになるとともに、静粛性が上がって高級感が出ている。そしてなににも増して、走らせたときのパワー感と、ステアリングホイールを動かしたときの車体の反応のよさが印象的だ。

つまり、クルマとしての楽しさがより強く感じられるようになり、積極的にCX-5に乗る意味が見いだせるようになっていると思う。あいにくオフロードは未体験で、マツダが作った仮説のモーグル(コブのようなもの)を通過したとき、高い走破性の片鱗をうかがわせてくれた。

どこのメーカーも、年次改良といって、発売から販売終了までは、コツコツとクルマに手を入れていくものだが、マツダのばあいは、目立ってよくなる。そこが、以前から興味ぶかいと、私は思ってきた。

今回は、「フィールドジャーニー」(XDで355万3000円、20Sで323万4000円)とともに、あと2つの特別仕様が設定された。ぜいたく装備を増やした「エクスクルーシブモード」(25Sで352万5500円~、XDで384万4500円~)、それにブラック基調の外観でスポーティな仕立ての「スポーツアピアランス」(25Sで325万6000円~、XDで357万5000円~)である。

フィールドジャーニーのシートにもライムグリーンのステッチが使われる。
フィールドジャーニーのシートにもライムグリーンのステッチが使われる。
マツダがフィールドジャーニーの走破性を体験させてくれようとした特設コース。
マツダがフィールドジャーニーの走破性を体験させてくれようとした特設コース。

問い合わせ先

マツダ

TEL:0120-386-919

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。
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