《本当の自然、それはなるべく手の届かないところにあるのがいい。 それに憧れ、時折り訪問者となることを夢見ながら、僕は都心とその周辺に暮らす。小さな聖域をまもり、時に代替物を求めながら、本当の自然と心をつなぐ、それで今は満足だと思っている。》
この文章は、1984年に発刊されたエッセイ集『アーバン・アウトドア・ライフ』にある一節。著者の芦澤一洋さんはグラフィック・デザイナーとして活躍する一方で、1970年代初頭からアメリカのアウトドア・ライフを取り入れ、その文化を定着させた人物。日本におけるナチュラリストの第一人者と称されている。
著書のタイトルにある「アーバン・アウトドア」という言葉は、「都会的」という意味を持つ「URBAN」と「屋外」を意味する「OUTDOOR」を組み合わせた造語。ざっくりといえば、都会で生活しながら自然(アウトドア)を楽しむということ。仕事で多忙な芦沢さんは、東京で暮らす日々の中で、着こなしや自宅のインテリアなどに自然のテイストを取り入れるというライフスタイルを実践していたのだ
アーバンアウトドア・ファッションの先駆け的な存在
今や、様々なカテゴリーに採り入れられている「アーバン・アウトドア」という言葉と志向だが、日本のファッションにおいてその先駆けと言えるのが、「ザ・ノース・フェイス パープルレーベル」。
「ザ・ノース・フェイス パープルレーベル」は、ジャンル、年齢、性別を超えたニュートラルなデザインの“時代性のあるスタンダードウエア”を提案する「ナナミカ」と、世界のアウトドアファッション界を牽引し続けてきた「ザ・ノース・フェイス」がコラボレーションしたライン。
ベースになるのは、世界的なアウトドアブランドである「ザ・ノース・フェイス」がこれまで世に送り出してきた名品たち。そこに、時代にあったシルエット、アウトドアギアとして進化したマテリアルやディテールをブレンドすることで生まれる、新たな感性をまとったアウトドアカジュアルウエア。それを提唱してきたのが「ザ・ノース・フェイス パープルレーベル」だ。
そして今……。芦澤一洋さんの提唱がひとつのきっかけとなって日本に浸透していった「アーバン・アウトドア・ライフ」は、どこか閉塞感が漂う今の時代にこそ大事にするべき生活様式ではないだろうが。そんな思いを込めて展開されている今シーズンのラインナップの中から、「これぞザ・ノース・フェイス パープルレーベル!」といえるアイテムを、ここに紹介する。
ザ・ノース・フェイスを象徴する65/35ベイヘッドクロスを使用
「ザ・ノース・フェイス パープルレーベル」を代表するアイテムとして、ここで紹介するのは“65/35ベイヘッドシリーズ”にラインナップされているアウターウエアだ。
用いられている素材は、ザ・ノース・フェイスが開発したポリエステル65%、コットン35%の混紡「65/35ベイヘッドクロス」。水分を含むとコットンの繊維が膨張するため生地密度が高まり、雨などの水の浸入を防ぐ効果を発揮。一方のポリエステルの性質により、軽さと速乾性も併せ持っている。
さらに、マットな光沢感によって醸し出される上質さも魅力。レイヤリングで個性を光らせたり、クラシックなスタイリングに磨きをかけたり、上質なアーバン・アウトドア・ファッションを楽しみたい。
1976年にリリースされたザ・ノース・フェイスのマウンテンパーカをベースに、シルエットやディテールをアップデート。表地は65/35ベイヘッドクロス。裏地には50デニールのリサイクルポリエステルリップストップとロゴ入りリサイクルポリエステルエンボスタフタを使用。腰のスピンドル、コードストッパーはひと回り大きいクラシックなタイプを採用している。カラーバリエーションは5色と豊富。
1980年代のフィールドジャケットをベースに、ザ・ノース・フェイスのアーカイブアイテムのフィッシングベストのディテールをミックス。表地は65/35ベイヘッドクロス。裏地はロゴ入りリサイクルポリエステル・エンボスタフタ。衿、裾、袖口は肌当たりのいいリブ仕様。身幅にゆとりをもたせたオーバーサイズシルエットになっている。カラーバリエーションは3色。
US NAVYのCPOシャツをベースにデザインをアップデート。65/35ベイヘッドクロスの一枚仕立てで、THE NORTH FACEロゴドットボタンを使用。身幅、肩幅にゆとりをもたせたオーバーサイズシルエット。カラーバリエーションは3色。
マウンテンパーカのデザインをベースにしたAラインのマウンテンコート。表地は65/35ベイヘッドクロスで、裏地にGORE-TEX INFINIUM WINDSTOPPER(R)をライニング。防風性と透湿性を備えるため、常に快適な着用感をキープすることができる。ゆとりのあるビッグ・シルエットのため今の気分で着こなせる。カラーバリエーションは3色。
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
問い合わせ先
- TEXT :
- 堀 けいこ ライター
- PHOTO :
- 島本一男(BAARL)
- STYLIST :
- 河又雅俊
- 参考資料 :
- 「アーバン・アウトドア・ライフ」(中公文庫) ※2018年発売の復刻本