創業125周年を迎えた2010年、初の自社製ムーブメントを発表し、「マニュファクチュール宣言」を果たした「ブルガリ」。以来、薄型ムーブメントにおいて数々の世界記録を打ち立て、非常に高度な技術力を要するハイコンプリケーションウォッチにも貪欲に挑んできました。
永久カレンダーやトゥールビヨンといった複雑機構を搭載した機械式時計を「コンプリケーション」、或いは「ハイコンプリケーション」ウォッチと呼びますが、今回発表した2モデルは、ハイコンプリケーションウォッチのなかでも、最も高度な技術力を要する「鳴り物」――音で時を告げる“グランソヌリ”と“カリヨン”。
わずか10年あまりの間で、「機構の美学」の達人としての地位を完全に確立した、マニュファクチュール「ブルガリ」が誇るふたつのハイコンプリケーションウォッチが、新たなアプローチによって、エレガントな「機構のシンフォニー」を奏でます。
マニュファクチュールとしてさらなる高みへと到達したコンプリケーションが奏でる「機構のシンフォニー」
ひとつ目の“オクト ローマ エメラルド グランソヌリ”。“グランソヌリ”とは、ムーブメント内に組み込まれた4ハンマーとゴングによって、1時間、そして15分ごとに鐘を鳴らす機構のこと。これを製造できるマニュファクチュールは、名門のなかでもごくわずか。そのため「複雑機構の女王」と呼ばれ、時計愛好家にとっては究極の夢であり、ロマンです。
「ブルガリ」は今回、ダイヤモンドのみをあしらった“オクト ローマ グランソヌリ”に続き、バゲットカットのザンビア産エメラルド446個! そして計30カラット以上のダイヤモンドをセッティングし、ハイコンプリケーションであると同時にハイジュエリーウォッチでもある傑作を生み出したのです。
ちなみにこれは、世界でただ1本だけのユニークピース。どんな方がその手にされるのか!? 追跡できることなら、ぜひインタビューをしてみたいです。
今回の「ブルガリ」のレポートで最後のご紹介になるのは、“オクト ローマ ブルー カリヨン トゥールビヨン”。
この“カリヨン”も、“グランソヌリ”同様、非常に高度な複雑機構で、優雅な音を奏でる、わかりやすく言えばオルゴールのようなもの。
2021年にファーストモデルを発表した、“オクト ローマ カリヨン トゥールビヨン”は、3つのハンマーを搭載し、3つの音色でメロディーを奏でます。
オールブラックのファーストモデルから一変、ブルーをまとったこの新作は、オープンワークを施した機構の美が、より鮮明に際立った印象。“カリヨン”に加えトゥールビヨンも搭載しながら、無骨さはゼロ。ローマン・ハイジュエラーの粋によって、エレガントで洒脱なマスターピースに仕上げました。
以上、ご紹介してきた「ブルガリ」の新作時計。
記事を書きながら、数年前に取材で伺った、スイスのマニュファクチュール、そしてローマのハイジュエリー工房での光景が蘇ってきました。
どちらも、最新テクノロジーを取り入れながらも、熟練の職人たちがひとつひとつの作品に魂を込めながら向き合っていたこと。
そして真剣ななかにも、明るい表情で幸せそうに作業されていたこと。
2022年3月30日から開催される『WATCHES & WONDERS GENEVA 2022』では、「ブルガリ」はまた、どんな新作を発表するのか?
「時計の春」は、もうそこまでやってきています。
“LVMH ウォッチウィーク 2022”レポート、次回は「ウブロ」です。
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- TEXT :
- 岡村佳代さん 時計&ジュエリージャーナリスト