創刊18周年を迎え幸せに思うことは、これまでPreciousで紹介してきた数あま多たの逸品が、今も女性たちの愛用品として現役で活躍していることです。名作バッグに刻まれた傷も、飴色に変化した革靴も、古びて見えるどころかむしろそれぞれの個性が際立ち、輝きが増してラグジュアリー!

使って、使って、使い倒してはじめてわかるものの価値…。愛用品が紡ぐ物語はこれからも、私たち女性ひとりひとりの心を豊かにする、揺るぎない存在であり続けてくれると信じています。

スタイルある女性たちが行き着いた自分らしさ、「愛用品」との付き合い方。生き方が凛と美しい人々は、どんなものを、どのように慈しんできたのでしょうか。手に入れた経緯から、愛用品への育み方まで、4人の女性が、自らの人生論と共に語り下ろします。

今回はテニスプレーヤーである伊達公子さんにインタビュー。愛用品は、カルティエの腕時計『パンテール ドゥ カルティエ』です。

カルティエの腕時計|伊達公子さん(テニスプレーヤー)

インタビュー_1,時計_1,コート_1,パンツ_1,トップス_1,ピアス_1,ネックレス_1,ブレスレット_1,指輪_1
“ステファノ”のコート¥159,500・“レストレーゲ”のパンツ¥37,400(チェルキ)、インナー¥57,200(カシミカ)、ピアス¥913,000・ネックレス¥1,366,640・ブレスレット¥533,500・リング¥489,500(カルティエ)、その他/私物
伊達 公子さん
テニスプレーヤー
(だて きみこ)1970年京都府生まれ。高校3年時にインターハイで三冠を達成し、卒業と同時にプロに転向。世界ランク4位を記録し、1996年に引退。11年半のブランクを経て、2008年「新たなる挑戦」を開始。2017年ファーストキャリアより長い9年半の現役生活にピリオドを打つ。現在はジュニア育成に力を注ぐほか各方面で活躍中。

「エレガントな人生を歩みたい。そう決意した記憶がよみがえります」

弾けるような笑顔がまぶしい。オールホワイトのコーディネートに少し焼けた肌、そこにカルティエの『パンテール ドゥ カルティエ』をのぞかせる。ゴールドのブレスレットウォッチをここまでヘルシーにつけこなす人は、ほかにいないだろう。

「腕時計、好きなんです。19歳でプロデビューして以来、大金星を挙げたり、名だたる大会で優勝したり、世界ランキングを上げたり…現役生活の節目節目で少しずつ手に入れてきました。20代のことですから、最初はもちろんドキドキ。でも『頑張ったもん! いいよね、エイヤッ』と。

全身全霊を傾けてエネルギーを注いだその記憶を、時計に刻むといえばいいのでしょうか。ある時代の音楽を聴くと、甘酸っぱい記憶が思い出されること、ありますよね。そんなイメージで、時計を見ると、努力して、泣いて笑って、戦い尽くした記憶が鮮やかによみがえってくる。歴史を刻むように、自分と時計を重ね合わせて、ひとつひとつ大切に迎え入れてきました」

1990年代、テニス選手のジュエリー使いは華やかだった。ダイヤモンドのピアスにネックレス、テニスブレスレット。伊達さんはそこに頑丈なロレックスを重ねることもあった。そして1996年、マディソンスクエアガーデンの試合を最後に、現役を退くことを決意する。

「試合を終え、ニューヨークのカルティエブティックを訪れたとき、目に飛び込んできたのが、『パンテール ドゥ カルティエ』でした。ずっと憧れていた、でもまだ早いと遠くから眺めていた、その時計が今目の前にある。華奢なシルエット、ゴージャスなオーラ、エレガントな存在感、今までもっていた時計とは真逆のキャラクターに強烈に惹かれました。

私はアスリートを卒業する。強くあれと律して生きてきたけど、明日からは少し柔らかな人生を歩みたい…その決意と共に、清々しい気持ちで手に入れた、メモリアルな逸品なのです」

インタビュー_2,時計_2,コート_2,トップス_2,ピアス_2,ネックレス_2,ブレスレット_2,指輪_2
手元に胸元に、イエローゴールドをさりげなくリフレイン。洗練されたジュエリー使いがおしゃれ巧者の証

以来、スーツやドレス、ときにデニムと合わせ、伊達さんの人生を彩ってきた。

「一時期、『アップルウォッチ』に傾倒したこともあったのですが、一日の歩数を稼ぐため、夜ベッドの上で懸命に腕を振る自分がばかばかしくなって(笑)。またこの『パンテール』をオーバーホールに出したとき、この年代のモデルは貴重と聞いて、さらに愛着を深めているところです。

私は大切に手に入れたものこそ、日常使いするタイプ。時計やジュエリーのほか、食器やグラス、カトラリーもそう。なぜかというと、好きなものに囲まれて生きていたいから。好きなものに囲まれると、自然にポジティブになります。

今なお続けているテニスも同様。好きなことにエネルギーを注いでいれば、気持ちが健やかになり、同じ意志をもつ人々が集まってくる。今こそ愛用品がもたらすハッピームードのなかで暮らしていきたい。そう願ってやまないのです」

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

問い合わせ先

PHOTO :
久富裕史(N°2)
STYLIST :
カドワキジュン子(impress+)
HAIR MAKE :
hiro TSUKUI(Perle/ヘア)、三澤公幸(Perle/メイク)
NAIL :
中島理恵(uka)
WRITING :
本庄真穂
EDIT&WRITING :
兼信実加子、喜多容子(Precious)