アストンマーティンが2022年1月に発表していらい、おおきな話題となってきた、アストンマーティンDBX707に、サルディニア島で乗ってきた。ボディは大きめサイズのSUVでありつつ、707馬力のV8と超強力なパワープラントを搭載。走りも、期待以上に楽しいモデルだ。

おどろくほど楽しい操縦性

4月のサルディニア島は場所によっては陽光、場所によっては雪。
4月のサルディニア島は場所によっては陽光、場所によっては雪。
9段変速機はパドルを使ってマニュアルシフトするとじつに楽しい。
9段変速機はパドルを使ってマニュアルシフトするとじつに楽しい。

英国って、ほんとうにおもしろい。とくにクルマの世界を見ていると、深さとか広がりが、並大抵ではない。フォーミュラ1のコンストラクターの数は多いし、量産車だって、超がつく高級セダンからラグジュアリーなSUV、それにスポーツカーにいたるまで多様性に富んでいる。

英国のスポーツカーを代表するメーカーといえるアストンマーティンも、1913年の創業いらい、プロダクトを通して名声を確立。直近では、DBシリーズという伝統的な名前をもったスポーツモデルを手がけるいっぽう、ハイブリッドのスーパースポーツ「バルハラ」を開発。同時に、高級SUVであるDBXを2020年に送り出した。

4リッターV8エンジンを徹底的にチューンナップし、最高出力はオリジナルの405kWから520kW(707ps)に、最大トルクは700Nmから900Nmに引き上げたのが、今回のDBX707だ。23インチの超大径タイヤのオプション設定をはじめ、スタイリングも高出力化にともなってよりアグレッシブに。

SUVでありながら、アストンマーティンの伝統的イメージをうまく取り込んだ、唯一無二の存在感とともに、おどろくほど楽しい操縦性で際立つモデルだ。低重心のボディを活かしたハンドリング性能は、山がちなサルディニア島の山岳路で真価を発揮した。

SUVなのにアストンマーティンのスポーツカーを感じられる上手な意匠。
SUVなのにアストンマーティンのスポーツカーを感じられる上手な意匠。

車内にいるだけで気持ちが昂ぶる

運転しやすいコクピットでは、センターコンソールに円筒形のドライブモード
運転しやすいコクピットでは、センターコンソールに円筒形のドライブモード
シートは好みでさまざまな仕様が選べるのも魅力的。
シートは好みでさまざまな仕様が選べるのも魅力的。

「GT」に加え、「スポーツ」と「スポーツプラス」、さらに「レーススタート」という猛烈なダッシュが得られるモードも。

GTはエアサスペンションがていねいに動き、終始、フラットな乗り心地をもたらせてくれる。車内のノイズの低いし、快適そのもの。707馬力のスーパーSUVとはべつの魅力といっていいかもしれない。

私だったら、GTモードで充分なのだが、運転が好きで山岳路に行きたいなんてひとなら、スポーツモードもぐっとダイレクト感が出て、いいかんじだ。エアサスペンションが引き締まったハンドリングを味わわせてくれるはず。スポーツプラスモードは、サーキット用にとっておけばいい。かなり速いクルマである。

いっぽう、凝った意匠の内装も、べつの魅力。オーガニックとよびたいような造型感覚と、個性的な素材えらびと色づかい。どれもアストンマーティンの大きな強みだ。車内にいるだけで、気分が昂揚する。素材と組み付けの精度を重視し、造型ではあまり遊ばないドイツ車ではなかなか得られない歓びだ。

サルディニア島での試乗会の基地になったのは、リゾートで知られるコスタスメラルダ。DBX707は、ヨットのマストが林立するマリーナにもよく合うイメージだ。4名のおとなが快適に乗っていられるし(後席の乗り心地もいい)、荷物は運べるし、たまにはマウンテンサイドでドライビングを楽しむこともできる。

一般道では快適に、山岳路ではスポーティにと、多様な楽しみに対応。
一般道では快適に、山岳路ではスポーティにと、多様な楽しみに対応。

【Aston Martin DBX707】
全長×全幅×全高:5039x2050x1680mm
エンジン:3982ccV型8気筒
駆動方式:全輪駆動
最高出力:520kW@4500rpm
最大トルク:900Nm@6000rpm
車両本体価格:¥31,190,000〜

問い合わせ先

アストンマーティン

この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。