Something Preciousを日々探している秋山都さん。今回は、沖縄本島・恩納村のラグジュアリーホテル「ハレクラニ沖縄」へ! 幸せエネルギーをたっぷりチャージしてきたようです。
「天国の家」にふさわしいラグジュアリーリゾートホテル「ハレクラニ沖縄」
「禍福はあざなえる縄のごとし」とは中国の『史記』にある言葉ですが、幸と不幸は編んだ縄目のように表裏一体であるという意味だそう。「良いこと、悪いことは順々にやってくるのだから一喜一憂しても仕方ない」ともとれるし、また「一見良いように思える事象の裏にも良くないことが潜んでいる」ともとれる含蓄の深い言葉です。
私自身の50年ほどの人生を振り返っても、まさに禍と福は縄目のように、いえ結び目のように複雑にこんがらがった状態で降ってきました。
いちばん激しいケースを端的に書くなら、某ファッション誌の編集長に就任して、パリコレのフロントロウに座るような華やかな日々が一転、発行元の代表がすべてのコスト未払いのまま消息を絶ち、残された債権者の対応に大わらわ……。
これはちょっとドラスティックな事例でしょうが、どんなに幸せそうに見えている人であれ、その人生に多少のアップダウンはあるはず。むしろたくさんの光を浴びている人ほど、影は暗く、大きく穴を開けているのかもしれません。
私自身がこの大きな「禍」に襲われている渦中のことは、あまりに辛かったせいか記憶があまりないのですが、いまも鮮明に憶えているのは、朝起きたとき「今日一日を生きなくては」と自分に言い聞かせていたこと。目をつぶったまま、かつて幸せだった日々や時間を脳内再生してから「よし!」と起き上がっていました。
その“脳内再生”にひんぱんに使われていたのがハワイの名門ホテル「Halekulani(ハレクラニ)」でのシーンです。かつて家族や友人たちと宿泊し、小鳥たちが遊びにくるテラスでサンデーブランチを楽しんだり、エレベーターで当時の横綱力士と乗り合い、お腹を触らせてもらったこと。当時人気だった「焼き肉ヒロシ」でしこたま食べて帰ってきたら、クルマのドアを開けてくれたページボーイが「Oops! You went to Korean BBQ!」と大笑いしていたこと(私たち、相当匂っていたのでしょうね)。
ほかにも白と淡いブルーを基調とした静謐な部屋の様子や、ワイキキビーチの向こうへ沈むサンセット、毎晩ベッドサイドに置かれる貝殻……大なり小なりの思い出が、すべて私にとっては幸せの象徴になっています。
その「Halekulani」が沖縄・恩納村で「ハレクラニ沖縄」として誕生したのは2019年7月。ハワイで100年超の歴史を持つホテルが初の海外進出を果たしたということで、すぐにも飛んでいきたいと思っていましたが、長引くコロナ禍のためなかなか訪問を果たせずにいました。
このたび、ようやく機が熟して沖縄へ。同じ「ハレクラニ」ブランドといっても、ハワイと日本は別の国、異なる文化圏です。失望するのがこわくて「あんまり期待しすぎるんじゃないよ、自分」と言い聞かせながら恩納村を訪れました。
「ハレクラニ沖縄」は極楽だった
結論から申し上げてしまうと、ここ「ハレクラニ沖縄」はハワイに引けをとらず素晴らしいリゾートでした。もちろん、日本なので、あのハワイ独特の花のような甘い香りの空気やゆるい雰囲気には欠けますが、それでも東京に比すれば充分に楽園。
ハワイの言葉でハレ=家、クラニ=天国、つまりハレクラニ=天国の家という名前にふさわしく、思い切りリラックスできて、さらにはエネルギーをチャージできるような……ひと言でいえば極楽でした。
ではこの「ハレクラニ沖縄」のどこが極楽か、ポイントごとにご紹介しましょう。
「エグゼクティブオーシャンフロントスイート」が極楽!
まずはゲストルームから。「ハレクラニ沖縄」の客室(全360室)はすべてバルコニニー付きのオーシャンビュー。プライベートプールと天然温泉を備えたヴィラもあります。ハワイのそれとテイストをそろえたオフホワイトのソファや、真っ白な窓のルーバーを見ただけで懐かしく、泣きそうになりました。
そして、特筆すべきはそのサービスのすばらしさ。たとえば私がディナーに出かけている間にターンダウンサービスが行われていたのですが、ちらかしたバスルームはきれいに整えられていたし、ベッドサイドにはパジャマに加えて、亀さんのキーチャームが。
ハワイの「ハレクラニ」ではベッドに毎晩貝殻が置かれ、「We hope this Hawaiian shell call you back to Halekulani(この貝殻があなたをもう一度ハレクラニに呼び戻してくれますように)」とメッセージが添えられていますが、沖縄にもその同じスピリッツが伝えられているのでしょうか。
「ハレクラニ」は決して安価なリゾートではないので、かつてあのシェルを手にするたび、「お仕事をがんばってまた『ハレクラニ』に泊まろう」と励まされていたことを思い出しました。
「SHIROUX(シル―)」ディナーと「House Without A Key(ハウス ウィズアウト ア キー)」の朝食が極楽
リゾートの楽しみを円グラフで分けるなら、ゲストルームが30%、サービスが10%、スパなどのアクティビティが10%……で、残り50%が飲食です(あくまで私の場合ですけれど)。
「ハレクラニ沖縄」で楽しみにしていたのは、あのミシュラン2つ星レストラン「フロリレージュ」川手寛康さんがコンサルティングシェフを務めるイノベーティブなレストラン「SHIROUX(シル―)」。
実は私、いわゆるイノベーティブなお料理がさほど得意ではないのですが、沖縄のローカルな食材が姿を失わずに(イノベーティブなレストランでは何を食べているのかすらわからなくなることが多々あります)、より洗練された味わいで提供される内容には大変満足しました。ホテル内なのに10品のコースで1万7500円(税込)というのはコストパフォーマンスも高いと感じます。
翌朝の朝食は、オールデイダイニングの「House Without A Key(ハウス ウィズアウト ア キー)」へ。ハワイ「ハレクラニ」での同名レストランの朝食は数々のアワードに輝いていますが、こちらも遜色なくすばらしい朝食でした。
ブッフェスタイルのお料理は、フレッシュなフルーツや野菜、コンチネンタルなお料理に加えて、沖縄そばやジューシー(豚バラの炊き込みごはん)などローカルフードもいろいろ。コーヒーをお代わりしながらゆるゆると1時間、贅沢な朝食を楽しみました。
スイミングプールや沖縄の自然が極楽!
朝食後はチェックアウトまでビーチをゆるゆる散歩したり、プールサイドのデッキチェアでSNSにいそしみました。本当は「読書を楽しんだ」と書きたいところですが、「ハレクラニ沖縄」にはフォトジェニックな場所がありすぎて、インスタの投稿やストーリーのアップに忙しくなってしまいます。このあたり、余裕のなさが庶民丸出しでしてお恥ずかしい限りです。
「ハレクラニ沖縄」での滞在は1泊2日と短いものでしたが、私の“脳内再生用プレイリスト”にしっかりとまた幸福なワンシーンが追加されました。これでいつ来るともしれない「禍」に襲われても大丈夫……とは言えないけれど、今後しばらく分の「福」メモリーがセーブできました。それにしても、できるなら「福」の目が少しでも多く出る人生を歩みたいものですね。
「ハレクラニ沖縄」でエネルギーをチャージできたいま、私はとっても前向きな気分です。
問い合わせ先
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ハレクラニ沖縄
住所/沖縄県国頭郡恩納村名嘉真1967-1
TEL:098-953-8600(ホテル代表)・0120₋860-072(宿泊予約直通) - アクセス:那覇空港から車で約75分。
※秋山さんは往路はバスで、復路はタクシーを利用。
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※外出時には新型コロナウィルスの感染対策を十分に講じ、最新情報は公式HPなどでご確認ください。
- TEXT :
- 秋山 都さん 文筆家・エディター
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- WRITING :
- 秋山 都