雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。
今回は認定NPO法人「マギーズ東京」共同代表理事 鈴木美穂さんの活動をご紹介します。
がんに影響を受けた人が集い、心の重荷を下ろせる場所をつくりたい
テレビ局で記者をしていた鈴木さんは24歳で乳がんを患った。
「大げさではなく、人生が終わったと思いました。治療法を調べるにも、これまで仕事で情報を収集、選択、発信していた自分が当事者となると怪しい情報に流されそうにもなりました。当然『今後、私は結婚、出産できるのだろうか』などの心の悩みを打ち明ける場所もありませんでした」
回復後は仕事をしながら、若いがん患者に向け、自分が当時欲しかった情報を載せたフリーペーパーを発刊。その活動が注目され、国際会議に出席する機会を得た。
「当時、がんに影響を受けた人が集える場所を運営しようと、中古戸建てを仮契約中でした。そのプランをお話ししたのですが、欧米の参加者からはあなただけが頑張るのはサステイナブルではないと言われたんです」。
そのとき、あなたのやりたいことは英国の「マギーズセンター」(※)と似ていると言われ、調べると、それはまさに鈴木さんの考えの一歩も二歩も先を行く理想の形だった。看護師や心理士など医療従事者が常駐し、いつでもがん患者やその家族が訪れ、無料でお茶を飲んだり悩みを打ち明けられる場所。鈴木さんは、「マギーズ東京」創設のため、仲間を集めて土地探しや資金繰り、広報活動に奔走し、厳しい規程をクリア。ここには毎月約500人もの人が訪れ、自分を取り戻すための時間を過ごす。
「泣き崩れてやってきた人が顔を上げて帰る姿を見たり、利用者さんが元気になりボランティアで支える側に回る循環を目の当たりにする毎日。治療中、真っ暗闇をさまよっていた昔の自分に、こんな場所があったらよかったね、と言える場所です」
【SDGsの現場から】
●クラウドファンディングで集まった2200万円の資金を元手に建設
●「障がい者みらい創造センター」は教員時代に設立
※「マギーズセンター」とは…英国のマギー・K・ジェンクスが、がん体験から「治療中もひとりの人間でいられる場所が欲しい」と創設。英国には20か所以上ある。
- PHOTO :
- 篠原宏明
- EDIT&WRITING :
- 大庭典子、喜多容子(Precious)
- 取材・文 :
- 大庭典子
- 撮影 :
- Koji Fujii(TOREAL)