「ご厚志ありがたく頂戴しました」や「ご厚志を頂きました」といったフレーズ、どこかで聞いたり目にしたりしたことはありませんか? 本日は、仕事の現場で使われることは稀でも、祝賀の席や弔事の際に失礼がないよう知っておくべき「ご厚志」について学びます。大人のマナーとして身に付けたい、間違いのない「ご厚志」の使い方や敬語表現を、まるごと使える例文や言い換えと共にご紹介します。
【目次】
【「ご厚志」とはお金のこと?「読み方」と「正しい意味」】
まずは「ご厚志」の基礎知識から。どんなシーンで見たり聞いたりしたことがあったか、思い出しながらチェックしてください。
■「ご厚志」はどう読む?
「ご厚志」と書いて「ごこうし」と読みます。「厚志」に接頭語の「ご」が付いた尊敬表現です。日常会話や通常の業務で使われることはあまりないので、使いなじみがないかもしれませんね。
■「ご厚志」はお金を指す? 意味を正しく理解しよう
では意味を見てみましょう。「厚志」とは、「人に対する思いやりの深い気持ち」や「心のこもった親切」を表す名詞です。ビジネスシーンでは、上司や主賓などから頂いたお金のことを指して言うことが多いので「厚志=金銭」と思われがちですが、本来の意味は「深い親切心」なのです。
■こんなシーンで堂々と使いたい!
「深い親切心」とはいえ、実際に「ご厚志」を使用するのは「厚意による金銭」が行き交うこんなシーンです。
・歓送迎会 ・忘年会 ・祝賀会 ・打ち上げ ・葬儀 ・法要
次に、具体的な例文をご紹介します。
【そのまま使える「例文5選」と「使用上の注意」】
■1:「昨日は祝賀会にご参加くださり、誠にありがとうございました。またご厚志まで頂きましたこと、一同心より感謝しております」
■2:「ご出席の〇〇様よりご厚志を頂きました。〇〇様、ありがとうございました」
■3:「本日の歓送迎会は、〇〇部長からご厚志を頂戴しています。ありがたく受け取らせていただきましたこと、ここに報告いたします」
■4:「先日は弊社〇〇の葬儀にご参列いただき、誠にありがとうございました。また過分なご厚志を賜りましたこと、遺族に代わりまして御礼申し上げます」
■5:「本人の希望もあり家族葬とすることにいたしました。つきましては、香典や弔電などのご厚志は固く辞退申し上げますこと、ご理解いただけますと幸いに存じます」
このように「ご厚志」は慶弔時に使用することが多いため、タイミングと敬語の使い方に気を配りたいもの。また、打ち上げやちょっとした会食などの際に、上司が提供する「感謝や労いの金銭」も「厚志」のうち。下記に使用上の注意点をまとめます。
・式や会などで厚志を受け取ったことの報告はその現場で。本人が参加している場合にもその場で。
・香典や弔電などの厚志をもらった場合は、一段落した数日のうちにお礼をする。
・厚志を辞退する場合は現場ではなく前もって伝える、が鉄則。
【「厚志を受け取らない」のはマナー違反?】
「厚志」は相手からの「厚意」ですから、受け取らないのは失礼にあたります。基本的にはありがたく頂戴すべきですが、「厚志を辞退している葬儀での香典」といったケースは、受け取るか否か悩ましい問題ですね。
■「厚志を辞退している葬儀」での香典や弔電は…
近年は香典などを辞退するケースや、葬儀への参列や弔電も不要という家族葬も多くなりました。その場合には「どちら様からも頂戴しておりませんので」「故人の遺志ですので」と断ればいいのですが、付き合いの深い相手には難しいですね。逆の立場になってみると、「お別れが叶わずとも、せめて香典や弔電を…」という気持ちがわかるので悩ましいところ。
いずれにしても、「ご厚志辞退」のインフォメーションは「事前に、声高に」が肝心。そして、基本的には故人や遺族の思いを尊重するのがマナーと心得ましょう。どうしても香典などを受け取ってほしいのであれば、少なくとも人前を避ける気遣いを。
【「厚志」を言い換えるなら? 「類語」と「使い分け」】
■1:芳志(ほうし)
他人を敬って、その親切な心遣いをいう語です。「ご芳志に感謝申し上げます」
■2:厚情(こうじょう)
厚い情け、心からの深い思いやりの気持ちを表します。「ご厚情にあずかり感謝に堪えません」
■3:厚意(こうい)
思いやりのある心、親切心。「ご厚意に甘えさせていただきます」
■4:心付け
感謝や労いの気持ちを示すために与える、金銭や品物のこと。祝儀やチップ。「あらかじめ心付けを用意しておく」など渡す側が使う言葉で、受け取る側が「お心付けありがとうございます」などと言うのは失礼にあたります。この場合は「ご厚志ありがとうございます」が正解。
■5:寸志
「寸志ですがお受け取りください」というように、自分の贈り物をへりくだって言う語。「心づけ」同様、受け取る側が使うのはNGです。
「厚志」は金銭や品物に、「芳志」「厚情」「厚意」は気持ちや行為に対して、「心付け」や「寸志」は与える側のみが使う、と覚えておくとさそうですね。
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本日レッスンした「ご厚志」は、改まった席や少々緊張する場面で使用されることの多い“大人のワード”でした。「香典」など直接的な表現を避けたいシーンで重宝し、“デキる”印象もアップするのでぜひ使ってみてください。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館) :