【目次】

【「ご厚志」とは?「意味」と「読み方」】

「読み方」 

「ご厚志」の「厚志」は「こうし」と読みます。「ご厚志」は「厚志」に接頭語の「ご」が付いた尊敬表現です。

「意味」 

「厚志」とは、「深い思いやりの気持ち」や「心のこもった親切」を表す名詞です。相手から受けた親切を「ご厚志」と尊敬語の表現にして、感謝の意を述べる際に使われます。ビジネスシーンでは、上司や主賓などから頂いたお金のことを指して言うことが多いので「厚志=金銭」と思われがちですが、本来の意味は「深い親切心」なので覚えておきましょう。

■「ご厚志辞退」とは

「ご厚志」を法要や葬儀の席で使う場合、お供物やお花、香典、弔電等々、贈り物など、参列者からの金品すべてを意味します。事前に故人のご家族や関係者から「ご厚志はご辞退申し上げます」と連絡があった際は、「お供物やお花、香典などのすべてを遠慮させていただきます」という意味ですので、お供物やお花、香典は贈らないようにします。


【「言い換え」表現】

公式な場や手紙では、相手側のものはすべて敬って表現します。「ご厚志」と同じような意味の言葉も覚えておきましょう。

■1:ご芳志(ほうし)

他人を敬って、その親切な心遣いをいう語です。「ご芳志に感謝申し上げます」

■2:ご厚情(こうじょう)

厚い情け、心からの深い思いやりの気持ちを表します。「ご厚情にあずかり感謝に堪えません」

■3:ご高配

他人を敬って、その心配りをいう語が「ご高配」です。「御高配を賜りありがとう存じます」

■4:ご厚意(こうい)

思いやりのある心、親切心。「ご厚意に甘えさせていただきます」  

■自分の気持ちについては:寸志

「寸志ですがお受け取りください」というように、自分の贈り物をへりくだって言う語。「心づけ」同様、受け取る側が使うのはNGです。


【「お心遣い」との違い】

「お心遣い」も「ご厚志」の類語と言えますが、「ご厚志」「ご芳志」「ご厚情」「ご高配」は、フォーマル度が高く、「ご配慮」や「お気遣い」などよりも深い心遣いのイメージです。


【使い方がわかる「例文」】

ビジネスシーンで実際に「ご厚志」を使用するのは「厚意による金銭」が行き交うこんなシーンです。例文で確認していきましょう。

・歓送迎会 ・忘年会 ・祝賀会 ・打ち上げ ・葬儀 ・法要

■1:「本日の歓送迎会は、〇〇部長からご厚志を頂戴しています。ありがたく受け取らせていただきましたこと、ここに報告いたします」

■2:「ご出席の〇〇さまよりご厚志を頂きました。〇〇さま、ありがとうございました」  

■3:「昨日は祝賀会にご参加くださり、誠にありがとうございました。またご厚志まで頂きましたこと、一同心より感謝しております」

■4:「先日は弊社〇〇の葬儀にご参列いただき、誠にありがとうございました。また過分なご厚志を賜りましたこと、遺族に代わりまして御礼申し上げます」

■5:「本人の希望もあり家族葬とすることにいたしました。つきましては、香典や弔電などのご厚志は固く辞退申し上げますこと、ご理解いただけますと幸いに存じます」

このように「ご厚志」は慶弔時に使用することも多いため、タイミングと敬語の使い方に気を配りたいもの。また、部内の打ち上げや会食などの際に、上司などから頂戴する「金銭」も「ご厚志」です。これには「会を取りまとめてくれてありがとう」という目上の方からの感謝や労をねぎらう意味合いがあります。また、ちょっとした食事の際に上司が多めに支払う行為も「ご厚志」に含まれます。 


【ご厚志辞退を受けたとき、「弔電」や「香典」はどうする?】

近年は香典などを辞退するケースや、葬儀への参列、弔電も不要という家族葬が多くなりました。葬儀の場では、故人や遺族の思いを尊重するのがマナーです。こちらとしては「お別れが叶わずとも、せめて香典や弔電を…」という気持ちになるものですが、生前の故人の意思を受け止めるべきですし、深い悲しみにあるご家族に余計なお気遣いをさせるのは本末転倒といえます。どうしても香典などを受け取ってほしいのであれば、後日落ち着いてから、お手紙やお花などで気持ちを表すのがよいとされています。

また、「供物・供花の儀はご辞退申し上げます」との連絡を受けた場合、香典は持参してくださいね。


【ご厚志を受けたときの「お返し」「お礼状」は?】

基本的に「ご厚志」をいただいたとき、辞退するのは失礼とされています。ありがたく受け取ったうえで、以下の注意点を頭に留めて置いてくださいね。

・式や会などで厚志を受け取ったことの報告はその現場で。本人が参加している場合にもその場で。
 乾杯や最初の挨拶の時が、報告のタイミングです。

・香典や弔電などの厚志をもらった場合は、一段落した数日のうちにお礼をする。

・厚志を辞退する場合は現場ではなく、前もって伝えるのが鉄則。

「ご厚志」をいただいたお礼は、メールあるいは手紙でお伝えします。

■1:「昨夜は、お忙しい中、親睦会へご参加くださりありがとうございました。ご厚志まで頂戴し、改めて感謝申し上げます」

■2:「このほどの弊社創立〇〇周年にあたりまして、ご丁寧なご祝辞と身に余るご厚志を頂戴し、誠にありがとうございました」

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「ご厚志」とは「深い思いやり」や「心のこもった親切」を指す言葉です。普段あまり使わない言葉ですが、大人のマナーとして身に付けておきたい言葉のひとつといえるでしょう。

そして、基本的に、「ご厚志」は辞退したり、お願いしたりするものではありません。法要で使われる「ご厚志辞退」は現代の葬儀のひとつのスタイルで、通常の「ご厚志」とは異なるものであることを覚えておきましょう。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『これ一冊であとはいらない! 大人の語彙力大全』(中経の文庫) :