長い歴史を誇る日本の温泉文化において、近年はただ伝統を受け継ぐだけでなく、そこにコンテンポラリーな要素を融合した個性的な湯宿が続々とオープンしています。老舗旅館の鄙びた風情も味わい深い一方、建築家が手掛けたスタイリッシュな空間も気分が上がるものです。
そこで、温泉で日頃の疲れを癒すと共に、趣に満ちた建築美に触れて感性まで磨かれそうな湯宿を、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんにピックアップしてもらいました。今回ご紹介するのは、大分県別府市にある「ガレリア御堂原」です。
公式サイト
まるで美術館!別府の「いま」を表現するアートホテルが誕生
JR別府駅から車で15分ほど。老舗の湯宿を数多く擁する別府の地にて、2020年12月、自然と現代アートが融合した新感覚のホテル「ガレリア御堂原」が誕生しました。
「源泉数・湧出量ともに日本一を誇る別府温泉は、別府八湯という8つの温泉地から成り立っています。そのひとつである堀田温泉を客室で楽しめるのがガレリア御堂原。別府の名湯に癒されつつ、美術館に泊まっているかのような非日常感も味わえるのが魅力的です」(植竹さん)
ガレリア御堂原は、エントランスから心奪われます。自然光が差し込む開放的な空間で、しばし立ち止まって旅情に浸りたくなるような雰囲気。
ロビーでは、数々のアート作品がお出迎え。新進気鋭の日本人アーティストが別府の地からインスピレーションを得て、ガレリア御堂原のために制作したというオリジナルのものばかりです。
そもそも宿名にある“ガレリア”とはイタリア語で回廊を指す言葉。その名のとおり、回廊が設置されて路地のような趣がある館内は、冒険気分でアート巡りの散策をするのにもってこい。
「館内の至るところに展示されているアート作品は、全て別府と何らかの関わりがあるもの。たとえば、別府を撮影した2万枚以上の写真をコラージュして一枚の大きな地図に仕立てた作品や、湯けむりをモチーフとした作品、別府の地獄巡り気分を味わえる色鮮やかな写真シリーズなど、どれもテーマは別府なのですが、それぞれ作家さんの個性が際立ち、見る者を飽きさせません。
また、通常、美術館は撮影禁止のルールがありますが、ガレリア御堂原では自由に撮影してOK。滞在中、お気に入りの作品をじっくり鑑賞するとともに、旅の思い出として画像を好きなだけ残しておけるのもうれしいポイントです」(植竹さん)
全室天然の半露天風呂付き!別府の名湯をプライベート空間で堪能
ガレリア御堂原の客室は、無駄を排したスタイリッシュなデザイン。木の温もりが感じられるほっと安らぐ空間で、広い窓からの眺望も抜群です。時と共に表情が移り変わる別府の街と別府湾を望めば、日常の煩わしさからも解放されそう…。
そして、別府といえば日本有数の温泉地。ガレリア御堂原では全客室に天然の半露天風呂が付いており、24時間好きなだけ名湯を堪能することができます。
「こちらの湯はかなり高温なので、あつ湯が苦手な人は加水して湯の温度を調整を。ただ、源泉かけ流しの上質な湯を薄めてしまうのは少々もったいない話。別府の湯の恵みを余すところなく満喫するのであれば、加水はせずに、しっかりかけ湯をして体を慣らしてから入るとよいでしょう。私が入ったときには48度ほどあり、『これぞ別府の洗礼!』という感動がありました」(植竹さん)
「あつ湯は交感神経を優位にする作用があるので、しゃきっと目覚めたいときや、気合いを入れたいときにおすすめです。ちなみに、温泉は“湯の温度が高いほど体が温まる”と思われがちですが、実はこれは誤解。たしかに、入っている最中は熱いと感じられますが、その反動で湯上り後は一気に体を冷まそうとする作用により、清涼感が得られます」(植竹さん)
彩り鮮やかな絶品料理を五感で堪能!
アートがあふれるガレリア御堂原では、お食事までもがフォトジェニック。
「宿泊棟の隣に位置するレストラン『The Peak』では、大分ならではの食材をふんだんに盛り込んだコースやアラカルトメニューをいただけます。“大分椎茸のポタージュ カプチーノ仕立て”や“錦雲豚キーマカレーと季節の野菜”など、素材のよさをいかした上品な味つけです。空間自体もおしゃれですが、料理もひとつひとつが精緻なアート作品のようで、まさしく五感で楽しむことができました」(植竹さん)
以上、「ガレリア御堂原」をご紹介しました。美しいアートに囲まれながら、別府の名湯をお部屋でたっぷり堪能したい人は、次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか?
問い合わせ先
- ガレリア御堂原
- 住所/大分県別府市堀田6組
- 客室数/全35室
- 料金/1名 ¥39,125~(税込)
- TEL:0977-76-5303
- WRITING :
- 中田綾美
- EDIT :
- 谷 花生