長い歴史を誇る日本の温泉文化において、近年はただ伝統を受け継ぐだけでなく、そこにコンテンポラリーな要素を融合した個性的な湯宿が続々とオープンしています。老舗旅館の鄙びた風情も味わい深い一方、建築家が手掛けたスタイリッシュな空間も気分が上がるものです。

そこで、温泉で日頃の疲れを癒すと共に趣に満ちた建築美に触れて感性まで磨かれそうな湯宿を、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんにピックアップしてもらいました。今回ご紹介するのは、福島県の裏磐梯にある「ホテリ・アアルト」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の2500スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

会津の自然の中で北欧のラグジュアリーなライフスタイルを実現

フィンランド語で「HOTELLI」は“ホテル”、「AALTO」は“波”を意味する
澄んだ水を湛えた大きな湖沼も非日常の解放感を盛り上げて

福島、山形、新潟の3県にまたがる磐梯朝日国立公園内に佇む「ホテリ・アアルト」。フィンランド語で「HOTELLI」は“ホテル”、「AALTO」は“波”を意味します。築40年の山荘をリユースしたこちらのお宿は、会津の豊かな自然の中で源泉かけ流しの温泉と北欧のライフスタイルが満喫できると話題です。

「ホテリ・アアルトの開業は2009年。建築やインテリアで最近のトレンドとなっている北欧テイストですが、私の知る限りここはその先駆けともいうべき存在です。設計は東京藝術⼤学名誉教授の建築家・益⼦義弘⽒ら3人。天井が高く木の温もりが感じられる別荘のような雰囲気のお宿は、ただスタイリッシュなだけでなく、初めて訪れたときから不思議と居心地がよく、ゆったりくつろげます」(植竹さん)

北欧の名作家具やユニークなオブジェ
北欧の名作家具やユニークなオブジェ

「その居心地のよさを生み出しているのは、上質な北欧インテリア。長く厳しい冬をお部屋で快適に過ごすという北欧のマインドを取り入れて、ホテリ・アアルトではラグジュアリーな家具を館内にコーディネートしています。例えば、私が泊まったお部屋では、窓に面したデスクと椅子の高さが絶妙でずっと座っていても疲れず、目の前に広がる静かな沼の景色も相まって、思いがけずワーケーションがはかどりました」(植竹さん)

別館でも特に人気の105号室はワーケーション利用する人も多い
別館でも特に人気の105号室はワーケーション利用する人も多い

「客室は全17室すべて趣が異なり、どの部屋にしようか迷ってしまうほどですが、そのなかでも人気が高いのは、離れのスイートルーム(1室)や別館の客室(4室)。専用の源泉かけ流しの温泉付きで、思う存分湯浴みしたい人にぴったりです」(植竹さん)

ラグジュアリーな離れのスイートルーム
ラグジュアリーな離れのスイートルーム

自家源泉だから鮮度抜群!優しい浴感の硫黄泉に癒される

別館の大浴場からの眺め
別館の大浴場からの眺め

「北欧のライフスタイルを満喫できるだけでなく、ホテリ・アアルトは温泉(硫黄泉)も一級品。何といっても敷地内の沼のほとりから源泉が湧いているので、鮮度抜群です。硫黄泉ではにごり湯が多いのですが、ここの湯は湧きたてで透明。こんなにフレッシュな硫黄泉はかなり貴重ではないかと思います。

ふんわりと硫黄が香るやわらかい湯で浴感はマイルド。露天風呂からも内湯からも森林や沼の絶景を望むことができ、最高に贅沢なリフレッシュタイムが叶いました」(植竹さん)

本館の大浴場「弁天の湯」
本館の大浴場「弁天の湯」

地産地消の創作料理&オール・インクルーシブのドリンクも絶品

メニューは日替わりなので連泊しても飽きない
メニューは日替わりなので連泊しても飽きない

お食事は、本館ダイニングの「たごころ食堂」で。“たごころ”とは、一皿一皿に“思い”を込めるとの意味で、地元の米や野菜、山の幸をふんだんに取り入れた創作料理は、メニューが日替わりというこだわりぶりです。

そして、ホテリ・アアルトでは、各種飲み物がアルコールを含めてオール・インクルーシブなのもうれしいところ。特に、湯上りの地ビールや、会津磐梯サイダー、飲むヨーグルト、コーヒー牛乳は格別との評判です。

「フリードリンクをはじめ、かゆいところに手が届くきめ細やかなサービスが印象に残っています。私が宿泊した際は、21時半にお部屋におにぎりの夜食が届くというサプライズが。しかも、わざわざノックするのではなく、さりげなく差し入れられていて、つかず離れずの上質なおもてなしを感じられました」(植竹さん)

朝食はハーフビュッフェ形式。朝からシャンパン飲み放題なのもうれしい
朝食はハーフビュッフェ形式。朝からシャンパン飲み放題なのもうれしい

「朝食は8時から10時、チェックアウトは12時という、ゆったりとしたスケジュールもありがたかったです。もちろん、朝から温泉にも入れますし、朝食時にはシャンパンも飲み放題など、まさしく大人の休日を満喫するのにぴったりなお宿だと太鼓判を押せます」(植竹さん)

浸かってよし、飲んでよし、食べてよし。はたまた、何もしないでただのんびりくつろぐもよし。スタイリッシュな北欧空間にて思い思いの贅沢時間を過ごせば、日頃のたまった疲れやストレスがきっと解消されることでしょう。


以上、「ホテリ・アアルト」をご紹介しました。裏磐梯の美しい沼と森に囲まれたリゾートホテルでご褒美時間を過ごしたい人は、ぜひ次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。

※外出時には新型コロナウィルスの感染対策を十分に講じ、最新情報は公式HPなどでご確認ください。

問い合わせ先

WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生