豊富なキャリアをもつ人気スタイリストの犬走比佐乃さんに、大人の女性に必要なファッションについて教えていただく連載。第36回のテーマは、夏のトップス。1枚でおしゃれに見える「大人の夏トップス」について、私服コーディネートとともに選ぶポイントを伺いました。
犬走さん流・「大人の夏トップス」選びのポイントは、素材感&技ありデザイン
暑い季節はできるだけ涼しく、軽やかにすごしたいもの。トップスも無地のTシャツやカットソーなど「シンプルなアイテムの出番が増える」という方が多いのではないでしょうか。とはいっても、プレーンなトップス1枚でおしゃれに見せるのはなかなか難しいですよね。
今回は、さまざまなおしゃれを経て犬走さんがたどり着いた「大人の夏トップス」最適解を披露! こだわるべきポイントは、素材感と技ありデザイン。私服コーディネートとともに夏トップスの選び方を指南していただきました。
夏トップスの定番といえば無地の白Tシャツですが、年を重ねるにつれて、犬走さんの好みは生地がしっかりしていて、デザインにひとひねりをきかせたタイプへとシフトしてきたのだとか。
「白Tシャツにデニム、みたいなカジュアルな着こなしがサマにならなくなってきたんですよね。今、Tシャツ1枚っていう着方はしないかな。すとんと着るだけでおしゃれに決まる、技ありなトップスを選ぶようになりました」
「例えば、袖にボリュームがあったり、おなじみのボーダー柄でもラメが効いていたり、ひとくせある素材だったり。派手や奇抜とは違う、ちょうどいい按配で気の効いたトップスに惹かれますね」(犬走さん)
技ありのデザインに加えて、犬走さんが重視しているのが素材感。少し厚手のあるタイプやハリがあるタイプなど、身体の線を拾わない、しっかりした生地を選んでいるそう。
「基本的に透けない生地が好みですね。透けるタイプであれば、今日持ってきたメッシュ素材のように透ける方向に振り切ったものを選びます」(犬走さん)
今回お持ちいただいたトップスは、いずれも夏に向けて今年購入したもの。しっかりした生地×技ありデザインという条件をクリアしたトップスたちを、1点ずつコーディネートとともにおすすめのポイントを伺います。
袖のボリュームにひと目惚れ!Tシャツ感覚で着られてモードに仕上がる優秀トップス
袖のボリューム感にひと目惚れして購入したというコスの黒いコットントップスは、Tシャツ感覚で楽に着ることができるのにモード感が漂う優れもの。程よく厚手のしっかりした生地と、Tシャツのようなクルーネックもお気に入りだそう。
「袖が少し長めで、ちょうど肘が隠れるくらいの丈なのも重要。肘には年齢が現れやすいので、あまり出さないようにしているんです。夏でもこれくらい長めの袖が好きですね。このトップスは袖がたっぷりしたシルエットで肌に貼り付かないので、長めでも暑く感じません」(犬走さん)
合わせたのはオールシーズン愛用しているという細めのプリーツスカート。「夏のオールブラック」でも重たい印象に見えないのは、異素材を組み合わせて新鮮さと軽やかさを出しているから。シンセティックレザーのスカートですが、薄手でほんのり光沢感があるタイプ。細かなプリーツで動きがあるので、夏でもさらりとした印象です。
足元に旬のグルカサンダルを合わせているのもさすが! ワンツーコーデでもアイテムを厳選すればモード感やトレンド感がしっかり楽しめるという好例です。
定番のボーダー柄トップスはシルバーのラメタイプで華やかさをアップ!
昔からボーダーが大好きだという犬走さん。「私服でも撮影でも活用しすぎて、封印しようと思ったことがあるくらい」だとか。そんな犬走さんが、ボーダー好きが高じて作ったプルオーバーがこちら。犬走さんが手がけるアクタークローゼット(ショップチャンネルで販売)の春夏もので、生地は程よい厚さの天竺素材。シルバーのラメ糸で編み上げたボーダーが華やかです。
「カジュアルなイメージが強いボーダーを、ラメにすることで大人っぽくアップデートしました。やや厚手の生地ですが、身幅に余裕をもたせてゆったりとしたつくりに。着ていて楽ですし、空気をはらむシルエットなので夏でもそんなに暑さを感じないはず」
「その代わり腕は細身に仕上げて、だらしない感じにならないようバランスを取りました。肘が隠れる袖丈、首周りをすっきりと美しく見せるボートネックにしたのもこだわりです」(犬走さん)
ラメボーダーのトップスに合わせたのは鮮やかなカラーパンツ。大人のカジュアルスタイルには、無難なデニムやチノパンツよりもこれくらいパンチの効いたボトムのほうがおすすめ。パンツのデザイン自体はシンプルなので、難しく考える必要もなし。ワンツーコーデなのに、ラメボーダー×ビビッドなオレンジの相乗効果で新鮮な着こなしが完成します。
足元には清潔感のある白&脚長効果が期待できる厚底のスニーカーをセレクト。こなれ感と上品さをあわせもった大人のカジュアルスタイルです。
いつもは着ない素材にトライして、新鮮なコーディネートを楽しむのも一案
「マイ定番」なアイテムには安心感がありますが、いつもは着ない服にチャレンジするのもおしゃれの楽しみのひとつですよね。犬走さんにとって、このメッシュプルオーバーはそんな存在。それまでメッシュ素材のトップスを持っていなかったそうですが、店頭で見かけて、ふと気になって購入したのがウィム ガゼットのトップス。
「普段メッシュ素材を着ないので、自分的にすごく新鮮! クルーネック、長めの袖と自分の好きな要素を備えているほか、バランスが取りやすい短めの丈も魅力。メッシュ素材のトップスのインナーには、今日みたいに同系色をもってきて落ち着いた印象に仕上げるか、白を選んで逆に透け感を思いっきり楽しみたいですね」(犬走さん)
合わせたのは、数年前に購入して以来、大活躍しているというマニプリの総柄パンツ。シンプル&シックなトップスなので、対照的にボトムはカラフルな柄物を選んで賑やかな印象に。ここでも足元はトレンドのグルカサンダルが活躍!
「このパンツはシワになりにくい生地で旅にもぴったり。裏地付きで下着の線が目立たないところもお気に入りです。柄物は一見難しそうに感じるかもしれませんが、柄に入っている色と同系色のトップスを選べばOK。こういう総柄は、たくさん色が入っているのでトップスに選べる色の幅が広い。派手に見えて、実は着こなしやすいんです」(犬走さん)
人気スタイリストの犬走比佐乃さんから、大人の女性に必要なファッションについて教えていただく連載。第36回は、夏のトップスにフォーカス。つい無難なデザインを選びがちな季節ですが、プレーンなトップス1枚でおしゃれに見せるのは至難の業。今回は、さまざまなおしゃれを経て犬走さんがたどり着いた「大人の夏トップス」決定版を教えていただきました。
こだわるべきポイントは、素材感と技ありデザイン。犬走さんのセレクトやコーディネートをお手本に、ぜひ夏を軽やかに、そしておしゃれに乗り切りましょう!
- PHOTO :
- 黒石あみ(小学館)
- WRITING :
- 門前直子
- EDIT :
- 谷 花生