「10時からオリエンを始めますので、新入社員は第一会議室にお集まりください」なんていうアナウンス、会社勤めの人なら聞いたことがあるでしょう。「来期に発売されるA社新商品のオリエンが近々あるようだ」などのようにも使われる「オリエン」、本日はこのカタカナビジネス用語について解説します。
【目次】
【「オリエン」を正しく使うための「基礎知識」】
■「オリエン」は、ずばり「オリエンテーション」の略
まずはもともとの英単語「オリエンテーション[orientation]」の意味を確認します。
・(環境などに)順応させること ・進路指導 ・指南力 ・(建物などの)位置や配置 ・状況判断
上記は一般社会人に関係のありそうなものをピックアップしたものですが、「(渡り鳥や伝書バトなどの)帰巣本能」という意味もあったり、心理、科学、動物の分野で専門的に使われていたりなど、実に幅広い意味を持つ名詞です。
■一般的なビジネスシーンでの2つの使い方
冒頭に例文を出した通り、一般的に使われるのは2つのシーンであると覚えておけばいいでしょう。
使用例1:新入社員に向けて、組織の仕組みやルール、業務内容や就業規則などについて説明すること
使用例2:新規案件について、対象物の説明や広告の要点、予算やスケジュールなどを説明すること
「オリエンテーション」を略した「オリエン」は、まさにビジネス語として一般化したカタカナ語ともいえそうです。使用例2は、広告業界で大変よく使われます。次に具体的な例文を紹介しましょう。
【「オリエン」の「ビジネス例文」6選】
■1:「新入社員へのオリエンは来週を予定しています」
■2:「会社が目指していることや社会での役割などを再認識できるので、オリエンを担当する先輩社員の士気も上がる」
■3:「今回の商品については、オリエンからプレゼンまで2週間しかないようです」
■4:「採用の内定が決まった学生に、オリエンの開催日時を通達してください」
■5:「オリエンは、クライアントの意向と、制作の方向を決定づける重要な役割を担っている」
■6:「オリエンだけは十分とはいえないので、担当代理店の手腕がプレゼンを勝ち取るカギになる」
【正しい「言い換え例」と「似ているようで違うワード」】
■正しい言い換えフレーズ
ビジネス用語としてのカタカナ語は、使いすぎると“頑張ってる感”が出すぎたりしてあまり品がいいとはいえません。「オリエン」の意味や使用シーンを理解したところで、「正しい言い換え」も覚えておくと安心です。
「新人向けの説明会」「新規案件についての説明」
■似ているようで違う「ガイダンス」
似たようなビジネスシーンで「ガイダンス」というワードが使われることがありますが、それぞれの違いを確認しておきましょう。
・オリエン → さらに詳しい説明
・ガイダンス → まったく内容を知らない人に向けた説明
【「オリエン」にまつわる「関連用語」】
■広告業界で使われる「オリエンシート」
「オリエンシート」とは、広告や販促を実施する対象(商品、サービス、ブランドなど)について、「訴求するターゲット」「伝えたいメッセージ」「予算や納期」などを明文化した資料。プロモーションを行う際の方針ともいえるので、広告の分野では非常に重要であるといえます。
■間違えると恥ずかしい「オリエンテーリング」
ビジネス語としてのカタカナ語「オリエン」の語源は「オリエンテーション」ですが、似ている単語「オリエンテーリング」についても触れておきましょう。
「オリエンテーリング」は、地図上に示されたいくつかの地点を、できるだけ短時間で回る競技のこと。ドイツ語で「方向を定めて走る」を意味する[Orientierungslauf]を語源としています。「オリエンテーション」とはまったく異なるワードです。
■言い間違えにご注意!「オリエント」
「オリエン」に1文字加えただけの「オリエント」も、うっかり間違えそうなワードですね。「オリエント[orient]」は東方の国や東洋、東方を意味する英単語です。
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今回解説した「オリエン」というカタカナビジネス用語は、会社やチームなどに新たに加わった人に向け、「指導的役割としての説明」を意味するワードでした。組織にとっても新人にとっても、その存在は大変価値のあるものですね。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)/『情報・知識imdas』(集英社)/『現代ビジネス用語事典』(日本文芸社)/『すっきりわかる! 超訳「カタカナ語」事典』(PHP文庫)/『あの新語もわかる カタカナ語 すぐに役立つ辞典』(河出書房新社)/『いまさら聞けない ビジネス用語BOOK』(成美堂出版)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館) :