冬の味覚の王様といえば「蟹」。プリプリの蟹の身や濃厚な蟹味噌に舌鼓を打ち、そのあとは温泉でゆるりと心身を癒す…。そんな極上の旅時間を過ごすには、何と言っても宿選びが肝となります。

そこで、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんから、蟹尽くし料理が絶品の湯宿をピックアップしてもらいました。今回ご紹介するのは、石川県・山代温泉にある「あらや滔々庵(とうとうあん)」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の2500スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

北大路魯山人も魅了した美食の宿で加能蟹のコースに舌鼓

館内には北大路魯山人の作品が多数飾られている
館内には北大路魯山人の作品が多数飾られている

石川県加賀市・山代温泉の湯元に佇む「あらや滔々庵」は、当代で18代を数える老舗旅館。海の幸・山の幸に恵まれた山代に位置し、稀代の芸術家、美食家として知られる北大路魯山人を魅了したという「あらや滔々庵」では、冬の蟹尽くしコースも絶品!

ずわい蟹コースの一例
ずわい蟹コースの一例

「ずわい蟹は産地によって呼び名が異なり、石川県産のオスは加能蟹、メスは香箱蟹(orセイコガニ)といいます。あらや滔々庵で提供されるのは加能蟹のなかでも品質が保証された青タグ付き。加賀の橋立漁港で獲れたての新鮮な蟹をメインはもちろんのこと、先付からシメに至るまで、思う存分、堪能できます」(植竹さん)

丹精に作り込まれた八寸
丹精に作り込まれた八寸

「私がチョイスしたのはゆで蟹コース。刺身で食べられるほどフレッシュな蟹は、ゆでるとよりいっそう甘みを増し、天に召されるよう。濃厚な蟹味噌は、身に絡めたり、ご飯にのせたりしてもおいしく、舌がとろけるとはこのことかと思いました」(植竹さん)

焼き蟹も絶品
焼き蟹も絶品

「蟹の品質もさることながら、ここは料理長さんの技術も素晴らしいの一言です。特に印象に残っているのは香箱蟹(メスのズワイガニ)のゼリー掛け。さっぱりした土佐酢が蟹の濃厚な甘さを引き出していて、見た目の美しさにも感動しました。ほかの料理も控えめで上品な出汁などが絶妙で、決して素材のよさにあぐらをかかない芸術作品のような創作会席に大満足です」(植竹さん)

漁期が短くて大変貴重な香箱蟹のゼリー掛け
漁期が短くて大変貴重な香箱蟹のゼリー掛け

湯量は1日10万リットル!山代の名湯を源泉かけ流しで満喫

檜やヒバに囲まれて木の香りも楽しめる大浴場「瑠璃光」
檜やヒバに囲まれて木の香りも楽しめる大浴場「瑠璃光」

もともとは加賀百万石・前田家から湯番頭を命じられた「あらや滔々庵」は、美食だけでなく歴代藩主を癒してきた湯も一級品。3か所の大浴場「瑠璃光」「原泉閣「鳥湯」では、それぞれ雰囲気の異なる空間美も必見です。

「ここ山代の湯は地下わずか数十メートルから湧いている、全国的にも大変珍しく貴重な温泉。なかでも、あらや滔々庵は湯元にあることから、1日約10万リットルと湯量が豊富。源泉かけ流しで温泉三昧も楽しめます」(植竹さん)

大浴場「原泉閣」。柱や壁のアートにも注目。
大浴場「原泉閣」。柱や壁のアートにも注目。
敢えて照明を落とした「鳥湯」。温めと熱めに設定された2つの浴室で交互浴ができる。
あえて照明を落とした「鳥湯」。温めと熱めに設定された2つの浴室で交互浴ができる。

「泉質は、ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉。硫酸塩泉は美人の湯のひとつで肌を蘇生する作用があるといわれています。蟹目当ての投宿だったのが、温泉で肌のハリアップもしっかり実感できたのは嬉しい誤算です。また、私が泊まったお部屋では、客室にも半露天風呂が付いており、檜の湯船で24時間、好きなときに源泉を独り占めできて贅沢の極み! お風呂以外の時間は書院や広縁でまったり寛ぐなどして、非日常空間でたっぷりリフレッシュすることができました」(植竹さん)

客室「若菜」の露天風呂
客室「若菜」の露天風呂
植竹さんが宿泊した客室「松風・雷鳥」
植竹さんが宿泊した客室「松風・雷鳥」
趣のある書院
趣のある書院

以上、「あらや滔々庵」をご紹介しました。青タグ付きの加能蟹と山代温泉の源泉かけ流しで心身を癒したい人は、次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか?

※外出時には新型コロナウィルスの感染対策を十分に講じ、最新情報は公式HPなどでご確認ください。

問い合わせ先

WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生