冬の味覚の王様といえば「蟹」。プリプリの蟹の身や濃厚な蟹味噌に舌鼓を打ち、そのあとは温泉でゆるりと心身を癒す…。そんな極上の旅時間を過ごすには、何と言っても宿選びが肝となります。

そこで、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんから、蟹尽くし料理が絶品の湯宿をピックアップしてもらいました。今回ご紹介するのは、兵庫県豊岡市・城崎温泉にある「西村屋本館」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の2500スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

ブランド蟹「津居山蟹」を贅沢に味わう至福の蟹尽くしコース

「西村屋 本館」の外観
「西村屋 本館」の外観

兵庫県北部にあり、志賀直哉の小説『城の崎にて』の舞台としても知られる城崎温泉。日本海に近く、新鮮な魚介類が揃う海の幸の宝庫ですが、なかでも蟹は当地を代表するグルメです。その城崎温泉にて、創業160年の歴史を誇る老舗旅館「西村屋本館」では、季節限定の松葉蟹プランが人気を博しています。

松葉蟹コースの一例
松葉蟹コースの一例

「城崎温泉近くの漁港・津居山港で水揚げされたブランド蟹“津居山蟹”を使った本生会席は至福のおもてなし。津居山蟹は松葉蟹の一種ですが、高い鮮度とみずみずしい味わいが特徴です」(植竹さん)

蟹にぎり寿司
蟹にぎり寿司

「一口にブランド蟹といっても、蟹は生き物ゆえ、お店で食べた際どうしてもブレというか、当たりはずれを感じてしまうこともあるのではないでしょうか。この点、西村屋の蟹にはずれなし。城崎温泉において随一の伝統と歴史を誇る旅館だからこそ、地元の漁港とも強い信頼関係があり、ブランド蟹のなかでも厳選された質の高いものだけが、西村屋に集まっているように感じられます。ぎっしり詰まった身は全くみずっぽさやくさみがなく、旨みが実に濃厚です」(植竹さん)

蟹刺し氷鉢
蟹刺し氷鉢

「甘くとろりとした食感のお造り、あっさりとしていくらでも食せそうな茹でなど、さまざまな調理方法で旬の味覚を堪能できますが、私のイチ推しは蟹のすり流し。白味噌ベースの出汁と蟹の甘みのハーモニーが絶妙です。そして、仲居さんが目の前で手際よく焼いてくれる炭火焼きでは、蟹味噌のまろやかさに感動。蟹味噌こそ蟹の真骨頂といいますか、素材の良し悪しがダイレクトに表れる部位だと思うので、蟹味噌が苦手だったり食わず嫌いだったりする人こそぜひ西村屋で開眼してほしいと思います」(植竹さん)

蟹のすり流し
蟹のすり流し
炭火焼き蟹
炭火焼き蟹

城崎温泉で湯浴み三昧!風情ある空間美で心身をリフレッシュ

檜がふんだんに使われた「吉の湯」
檜がふんだんに使われた「吉の湯」

城崎温泉といえば、開湯1300年という歴史を誇り、多くの文人にも愛されてきた名湯。「西村屋本館」では、「吉の湯」、「福の湯」、「尚の湯」と3種の湯処を擁し、滞在中は心ゆくまで温泉を満喫できます。

「泉質は塩化物泉。特徴は、一言でいうと”温まりの湯”です。皮膚に塩分が付着し温泉成分のコーティング作用により保温や保湿効果が期待でき、湯上りもポカポカ感が持続するので、蟹のシーズンにぴったり。3種の湯処もどこも雰囲気がいいのですが、特に印象に残っているのは『福の湯』。中国の舗地の趣向を取り入れたというエキゾチックな空間で、丸窓からの眺めも絵になります」(植竹さん)

エキゾチックな雰囲気の「福の湯」
エキゾチックな雰囲気の「福の湯」
中庭を望む「尚の湯」
中庭を望む「尚の湯」

「そして、温泉好きにとって嬉しいことに、西村屋本館に宿泊すると、姉妹ホテルの『西村屋ホテル招月庭』の貸切露天風呂も利用できるんです。ジャパニーズ、バリニーズ、チャイニーズの3種あるうち、私が利用したのはジャパニーズ。山里の草案のような和の空間で、かなり広々とした温泉を70分も独り占めできたのは、実に贅沢な体験でした」(植竹さん)

姉妹ホテル・西村屋ホテル招月庭の貸切露天風呂「ジャパニーズ(吟月)」

以上、「西村屋本館」をご紹介しました。本場の上質な松葉蟹をさまざまな調理方法で味わい尽くしたい人は、次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか?

※外出時には新型コロナウィルスの感染対策を十分に講じ、最新情報は公式HPなどでご確認ください。

問い合わせ先

  • 西村屋本館
  • 住所/兵庫県豊岡市城崎町湯島469
  • 客室数/33室
  • 料金/1名 ¥82,500~(税込)
  • TEL:0796-32-4895 (予約専用)

WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生