ブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』は、1999年のBBC Twoのドキュメンタリーによる実話をもとに製作された、同名の映画に着想を得た作品です。潰れかけたイギリスの靴工場の若きオーナー・チャーリー(小池徹平)と、のちにはからずも彼と工場を救うことになるドラァグクイーンのローラ(城田 優)がふとしたことで出会い、人としてともに成長していく姿がコミカルにドラマティックに描かれます。3回目の上演の舞台稽古を前に、小池さんが今感じていることを率直に語っていただきました。

小池徹平さん
俳優
(こいけ・てっぺい)1986年大阪府出身。2001年に「JUNONスーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを受賞。2002年に『天体観測』(フジテレビ)にてドラマデビュー。2005年にウエンツ瑛士さんと音楽ユニット「WaT」を結成して、2016年まで活動する。2013年に宮本亜門氏演出の舞台『メリリー・ウィー・ロール・アロング〜それでも僕らは前へ進む〜』でミュージカルに初出演。2016年には舞台『1789—バスティーユの恋人たち--』『キンキーブーツ』(ともに初演)での演技が評価されて第42回菊田一夫演劇賞にて演劇賞を受賞し、ミュージカル俳優としての地位を確立する。2022年には客席が360度回転する劇場で、ミュージカル『るろうに剣心 京都編』の緋村剣心役をアクロバティックに演じて話題となる。連続テレビ小説『あまちゃん』(13/NHK)、『リバース』(17/TBS)、『大恋愛〜僕を忘れる君と』(18/TBS)、『奪い愛、夏』(19/AbemaTV)、『青天を衝け』(21/NHK)、人気俳優×吉本タレント×クリエイターによる映画『半径1メートルの君〜上を向いて歩こう〜』(21/吉本興業)など、話題のドラマや映画に多数出演。プライベートでは2018年に結婚、男児の父としての顔ももつ。俳優生活20周年を迎えた今年、ミュージカル『キンキーブーツ』日本公演の再々上演が決定し、注目を集めている。

“最高のカンパニーだった”と思っていただけるような舞台にしたい

―今回、『キンキーブーツ』の上演は3回目です。どのような舞台になりそうですか?

「そうですね。これまでとの大きな違いはやはり、新しいキャストが加わったことでしょうか。2016年の初演、2019年の再演と、ローラ役の三浦春馬と一緒につくりあげてきた『キンキーブーツ』ですが、今回は作品の中で大切な存在であるローラを、僕の古くからの友人でもある城田 優が演じます。演じ手が変わればまた違ったローラになると思いますし、それはほかのキャストの方の役も同じです。一方で、脚本家や演出家は変わらず、初演や再演時のキャストも参加しています。培ってきたチーム力や、家族みたいなあたたかさをもつカンパニーの良さを兼ね備えた、そんな舞台ができあがるのではないかと思っています。

俳優・小池徹平さん
「家族みたいなあたたかさをもつカンパニーの良さを兼ね備えた舞台になるのでは」小池徹平さん

また、再々演ということで、リピートしてくださるお客様からは高いレベルへの期待から厳しい視点があるかもしれません。春馬の不在ももちろんあります。コロナ禍での上演でお客様も反応を表に出しにくいという状況もあるでしょう。そうした中で“最高のチームだったね”と感じていただける舞台にしなくてはと願っていますし、そうでないと春馬も納得しないだろうと。いい舞台を目指して、チームを牽引していかなければと気持ちを引き締めているところです」

―物語はチャーリーとローラのふたりが主役です。それぞれのキャラクターについて教えてください。

「チャーリーはどちらかというと保守的なタイプで、当初はドラァグクイーンのローラとの距離感も多少感じていた若者です。しかし、自分の工場で働く人たちを身内のように思う人情みをもちあわせていたり、先代が築いた工場を受け継ぐ二代目ならではの、少し未熟な部分もあったりします。そんな彼が父の急逝を機に、倒産の窮地に立たされてしまいます。ローラと出会うことでドラァグクイーンのブーツづくりというニッチな市場に打開策を見い出すわけですが、ブーツ開発の過程でローラにどんどん刺激を受けて、人として成長しながら変わっていくんです。自分とは異なる他者を受け入れることで変化していく姿が、非常に魅力的であると思います。舞台の上で目を引くのはローラですが、チャーリーは物語に欠かせない屋台骨のような存在と言えるかもしれません。

「チャーリーは物語に欠かせない舞台骨のような存在」小池徹平さん
「チャーリーは物語に欠かせない舞台骨のような存在」小池徹平さん

一方のローラは、いい意味で怪物みたいにタフネスで、圧倒的な存在感があり、ものすごくキラキラしているキャラクターです。そして今回、お客様が舞台の上の僕たちを見たときにたぶん“すごい身長差だな”という印象もあるかと思います。ローラと対峙したときに僕のチャーリーはいったいどう映るんだろうかと、そこは今回の楽しみな部分でもありますね」

高校時代からの盟友・城田 優とは、実は初めての共演になります

―2016年の初演から6年、再演から3年がたちました。当時と比べて、LGBTQであったり、マイノリティである方に対する世の中の空気が少しずつ変化しているのを感じます。今、この舞台を通じてどのようなことを届けたいですか。

「初演のときはローラに対して“男性がただ女装をしているだけだ”という認識の方もいらっしゃった時代ではありました。そして確かに近年はその捉え方も徐々に変化して、作品自体も世の中に浸透してくれました。その流れを受けて、2022年版の脚本の中では、少しだけ変化がありました。今の時代にマッチした自然な表現に、セリフをマイナーチェンジした箇所があるんです。そこは、初演や再演をご覧になった方にも、より物語の世界に入っていきやすさを感じていただけるのではないかと思っています。

俳優・小池徹平さん
「今の時代にマッチした自然な表現に、セリフもマイナーチェンジしています」小池徹平さん

ただ、メッセージとして自分からあえて伝えたいものがあるかと聞かれたら、そこはあまり意識していないかもしれません。見終わって“ああ、面白かった!”でも、“ローラが自分自身を自由に探し求められる環境って、素敵だな”と感じてくださっても、自由に観てくださったらそれがいちばん。僕らは『キンキーブーツ』という自分たちが愛する大好きな作品を、ひとりでも多くの方にお届けできたらうれしいです」

―舞台稽古はまだこれからとお聞きしました。城田さんとのタッグはどのようなものになりそうですか。

「彼とは高校時代からの長いつきあいですが、同じ板の上に立つのは実は初めてなんですよ。だから一緒にものをつくりあげる作業がすごく新鮮です。ああみえて彼はガラスのハートの持ち主なので、おそらく抱えている不安も大きいのではと思います。でも稽古場ではそんなことは顔に出さずにきっと飄々とした感じでふるまうんじゃないかと思います。そのあたりは、僕が同級生という信頼関係をベースに一役者同士の関係性をもって、うまくコンビネーションをつくっていけたらいいなと思っているところです」

舞台『キンキ―ブーツ』10月1日より再々上演!

ブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』 英国の田舎町ノーサンプトンにある老舗靴工場の4代目として生まれたチャーリー。フィアンセとロンドンで生活しようとしていた矢先に父が急死し、家業を継ぐことになった彼は、工場が倒産寸前であることを知り……。

脚本/ハーヴェイ・ファイアスタイン 音楽・作詞/シンディ・ローパー 演出・振付/ジェリー・ミッチェル 
日本版演出協力・上演台本/岸谷五朗 訳詞/森雪之丞 
出演/小池徹平、城田優、ソニン、玉置成実、勝矢、ひのあらた ほか 
10月1日~11月3日/東京・東急シアターオーブ 11月10日~20日/大阪・オリックス劇場

『キンキ―ブーツ』公式サイト

PHOTO :
トヨダリョウ
STYLIST :
松下洋介
HAIR MAKE :
加藤ゆい
WRITING :
谷畑まゆみ