髭剃りや髪の手入れをはじめとするメンズグルーミングは、紳士のたしなみとしてイギリスで成熟した経緯がある。それは世界最古の理髪店であるトゥルフィット&ヒルが1805年にロンドンで創業したことや、それと時を同じくして、イギリス中部の工業都市、シェフィールドでナイフやフォークなどの刃物産業が発展し、理髪店で上質な剃刀が使われるようになった影響が大きい。
髭剃りを発展させた、英国の刃物産業
剃刀は、取り扱いにも研ぎ出しにも、熟練した技術が必要だったため、当時、髭を剃ることはホームケアではなく、理髪店で行うことが一般的だった。そのため、理髪店では髭剃り後に保湿ケアを施して、肌のコンディションを整えたり、さらには爪のケアまで行うようになり、それらすべてが伊達男の身だしなみとして定着したのである。
英国紳士が豊かな髭を蓄えつつも、清潔感が損なわれない理由はここにある。
映画『007』シリーズで初代ジェームズ・ボンドを演じたショーン・コネリーは、まさにそのロールモデルだろう。
ショーン・コネリーの気高い顔立ち
理髪店で整えられた髭は、どの角度から見ても凜々しくサマになっている。しかも、その髭の下には、なめらかでツヤのある素肌がのぞいており、その抜かりなきグルーミング感が、彼の気品や威厳を十分に醸し出している。
豊かな髭の下にはなめらかな肌がのぞく
そんなショーン・コネリーのような髭顔を仕立てるには、実践するべき手順がある。
まず、ひとつ目は肌をなめらかに保つために、乳液やクリーム状のエイジングケアを使うこと。
メンズプレシャス世代は加齢や乾燥によって、肌が硬くごわついた印象になりがちだ。そこへ髭剃りや日やけによるダメージが重なると、肌色が鈍くくすんだり、キメが粗く見えてしまう場合がある。そんな悩みに応えてくれるのが、こっくりとした濃厚なテクスチャーのエイジングケアだ。乾燥や疲労感による肌トラブルを修復して、やわらかな見た目へと整えてくれる。肌の滋養強壮ケアといってよいだろう。
それに加えて、髭を剃る際の肌ダメージを最小限に抑えることも大事なポイント。
剃刀負けや炎症を防ぐために、髭剃り前にはシェービングクリームやローションを活用してほしい。これらは、トゥルフィット&ヒルやサンタ・マリア・ノヴェッラなど、多くの老舗ブランドからも発売されているように、古くから伊達男たちに愛されてきたグルーミングケアだ。髭剃り前に塗布することで、剃刀やシェーバーのすべりを格段に向上させるため、深剃りができるようになり、髭の剃り残しがなくなるのだ。さらに、クリームの厚みが、肌を剃刀から保護することから、髭剃り後のひりつきを予防することもできる。また、外気の乾燥が進んでしまう秋冬には、髭剃りをした後に、ポストシェーブで肌の保湿や修復を促すのもいい。ダメージを受けた肌を速やかに回復できるほか、その後に使うエイジングケアのなじみも向上する。
揺るぎのない、ノーブルな髭顔をつくる8選
なめらかでハリのある肌をつくるエイジングケアと、洗練された髭顔をつくるシェービングアイテムを厳選。これら名品とともに、気高い顔立ちを育んでいこう。
肌にうるおいを与え、ハリのある素肌を取り戻す
快適な髭剃りをサポートするシェービングケア
エイジングケアやシェービングクリームを活用することで、肌にうるおいを蓄えておけば、たとえ無精髭を生やしたとしても格好よく見える。ラフでゆるい印象ではなく、端正でありながら色気もある、そんなジェントルマンらしい髭スタイルに仕上がるのだ。
※価格はすべて税抜です。※2015年秋号掲載時の情報です。
- TEXT :
- 加藤智一 美容ジャーナリスト
- BY :
- MEN'S Precious2015年秋号ジェントルマン的・顔と体のエイジング道より
- クレジット :
- 撮影/小寺浩之(ノーチラス) スタイリスト/石川英治(tablerockstudio) イラスト/須藤 俊(HUESPACE) 構成/加藤智一