なかには、ひどく腑に落ちて、胸がスッキリしてしまう離婚がある

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今年4月に婚約を発表したジェニファー・ロペスとベン・アフレック

セレブの離婚にまつわる報道を目にするたびに、思うことがある。心から残念に思うケースと、なんだかひどく腑に落ちて、胸がすっきりしてしまうケースとの両方があるということ。

人の不幸で胸がすくなんて不謹慎だけれども、端的に言って、“スピード離婚”と言われるカテゴリーの中には、案の定続かなかったねと世間が沸き立つ関係が山ほどあって、例えば、今も婚約中のジェニファー・ロペス。レストランのウェイターとの1度目の結婚は11カ月、バックダンサーとの2度目の結婚は8カ月で破局している。格差婚だからいけないという話ではなく、明らかに熟慮なき結婚であることが伝わってきたから、その当然の結末を世間は面白がりながらも、何かホッとしたりした。モヤモヤがスッキリするような感慨を持ったはずなのだ。

ちなみにスピード離婚の常習者として、ドリュー・バリモアやブリトニー・スピアーズが思い浮かぶけれど、この人たちも酔った勢いの格差婚をアッという間に終わらせていて、世間はそりゃそうでしょうという反応だった。もちろんそれで長続きすれば、これ以上素晴らしい結婚はないという感想になるのだけれども。

要するに世の中は、セレブたちの結婚に1つの理想を見つけたいのだ。なんだかんだ言っても、夢のような幸せな結婚をそこに見出して、結婚ってやっぱり良いものだと思いたいのである。

一方で、何とか添い遂げてほしいと、心から願えるカップルもいる

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ジゼル・ブンチェンとトム・ブレイディ

だからちょっとショックであったのがこのニュース。 結婚13年に及ぶジゼル・ブンチェンとアメリカンフットボールのスーパースター、トム・ブレイディが、離婚の準備を進めていると言う。いわゆる“おしどり夫婦”として知られていただけに、とても意外だったが、“おしどり夫婦の破局”はよくあること。夫婦間の事情って、本当にわからない。

トムがアメリカンフットボールの現役引退を撤回したことが離婚危機の原因とされているが、すでに45歳のトム、近々引退せざるをえない日が来るのだろうし、何だかそれが原因とは思えないが、もしそうであるなら引退さえすれば関係は続くはずで、それまで持ちこたえられないのだろうかと思うほど、何かもったいない気がするのは自分だけだろうか。

ともにそれぞれの世界No. 1カリスマ同士が愛し合うという絵面の美しさに加えて、ライフスタイルの素晴らしさも伝わってきていたからこそ、他人事ながら、別れてしまうのはもったいない、何とか! と強く思うのである。それこそ、一般人がセレブの結婚に託す“夢の象徴”のようなカップルだったから。

アンジェリーナ・ジョリーはなぜ離婚訴訟を今さら蒸し返すのか?

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2011年カンヌ国際映画祭のアンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピット

さて「ブランジェリー」の呼び名も生まれたほど、ベストカップルの見本のような存在だったブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの結婚は、結果的に“略奪愛”だったとしても、やはり究極の組み合わせだった気がしたし、養子実子を合わせて6人の子どもたちと共に、世界中を旅する姿は、まさしく世界平和の偶像のような気配を漂わせていた。

だからこのファミリーは一体どこまでいくのだろう、とりわけブランジェリーは一体どこまで夫婦の理想像を極めるのだろうという、ワクワクするような期待があった。

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ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー、ファミリーで東京訪問

しかし、もう夫婦円満などというものを越えてリスペクトしあっているものとばかり思っていたら突然の離婚行動。この時も非常にがっかりしたし、子どもたちに対するブラピのDVという離婚原因も衝撃的だったと同時に、何か非常に違和感があった。

まぁ“夫婦の事はわからない”ということでその時は済んだものの、じつは最近になってまたアンジェリーナ・ジョリーが過去のDV問題を蒸し返している。

もともとは、ブラピがアンジーは子どもたちに甘すぎるという不満をもったことで、心のすれ違いが生まれたこと。直接的な原因とされたブラピのDV自体はプライベートジェットの中でのたった一回の出来事だったとされるが、最近になって、アンジーが実際の状況はもっとひどかったということを改めて言い出したのだ。

 ここには、不動産売買による問題が絡んでいると言われるけれど、親権争いおいても共同親権が成立するものの、アンジーがあの手この手でブラピの親権を奪う形となり、どう考えても未だブラピを憎くて仕方がない様子。結婚していた時、ブラピは素晴らしい夫であり父親だと褒めちぎっていたアンジーが、今なぜこういう態度に転じたのか? 不思議でならない。逆に、本当は離婚を後悔してるのではないかという大胆な見方もできてしまうほど、不可解である。

この離婚でイメージダウンしたのは、原因を作ったブラピよりあのアンジー?

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ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー

理想の夫婦がこのような形で憎しみ合っていることに、私たちはやっぱり裏切られた気がしてしまう。とりわけ、過剰反応が目立つアンジェリーナ・ジョリーは、この結婚で世界的にスペシャルな女性として光り輝いただけに、唐突な離婚と不可解な言動によって、それまで築いてきた信頼や憧れ、女性としてのオーラまでを失ってしまった気がしないでもないのだ。

どちらにせよ、結婚によって、離婚によって、素顔が見える人、印象をがらりと変えてしまう人、にわかに評価を上げる人、下げる人、得をする人、損をする人……結婚離婚はどこまでも人のイメージを大きく変えるのである。

単独の人生ではありえないくらい劇的に人の印象を変える。だから怖いし、面白い。魔物が住んでいるとも思えるほど。

もしデップに認められなかったら、アンバー・ハードはここまで自分を壊さなかった?

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ジョニー・デップとアンバー・ハード

自ら起こした離婚訴訟における衝撃的なまでのイメージダウンによって、180度運命が変わってしまったのが、アンバー・ハードだろう。ジョニー・デップとの法廷ドラマを超えるような裁判の証言は世界中の度肝を抜いた。

映画での演技よりも、よほど不自然な芝居かかった証言は、その内容のあり得なさ以上に、女優としてちょっと致命的だったのかもしれない。ジョニー・デップは驚いたことに正式にはこれが初婚、トップスターをメロメロにした23歳年下妻として突然脚光を浴び、何かのバランスが崩れてしまったのだろうか。

うがった見方をすれば、ジョニー・デップに見染められなかったら、彼女はここまで自分を壊してしまわずに済んだのかもしれない。同情には値しないが、結婚が鬼門となり、生き方まで崩してしまうことってあり得るのだということを思い知らせた。

結果として、この離婚にはある種のカタルシスを感じてしまうほど、悲劇的なメッセージをはらんでいた。だから良くも悪くも、セレブの結婚離婚からは目が離せないのである。

結婚離婚は、まだ人生途中の出来事、それぞれの運命はどう変わるのか?

“スピード離婚の女王”ジェニファー・ロペスの、過去に婚約解消した相手ベン・アフレックとの結婚はこれから。一生添い遂げることになれば、評価はこの上なく上がるのだろう。そう言いながらも、続くのだろうかと心配だけれど。

一方、ひょっとするとアンジェリーナ・ジョリーは元夫ブラッド・ピットにたびたび新恋人の存在が報道されるから、ある種の嫉妬から離婚訴訟をさらにややこしいものにしているのかもしれず、だとしたら彼女の今後がさらに心配。

そしてアンバー・ハードは、一体どこまで落ちていくのか、いやあるいは“次なる結婚”で一発大逆転と言うこともあり得る女性だ。

そして、離婚の仕方次第ではせっかくのパーフェクトなイメージを崩しかねないとところにいるジゼル・ブンチェン……何かと私たちをハラハラさせるセレブたちの結婚離婚。人間というものを露骨に描き出す人生の縮図、せっかくだから色々と学ばせてせてもらおう。

どちらにせよ結婚離婚によって軸がぶれてしまう女性は、やはり生きることに不器用なのかもしれないし、自分がよく見えていないのかもしれない。だから評価も180度変わったりしがちなのは確か。それだけに人として余計に興味深いのだけれど。

全く逆に、結婚離婚でイメージを変えない、評価が変わらない女性こそ、本当に地に足のついた、心が成熟した女性なのだろうことも含めて、セレブの結婚離婚はやっぱり女の人生を学ぶのに、最も手っ取り早いサンプルで あることには間違いないのである。

 

この記事の執筆者
女性誌編集者を経て独立。美容ジャーナリスト、エッセイスト。女性誌において多数の連載エッセイをもつほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザー、NPO法人日本ホリスティックビューティ協会理事など幅広く活躍。『Yahoo!ニュース「個人」』でコラムを執筆中。近著『大人の女よ!も清潔感を纏いなさい』(集英社文庫)、『“一生美人”力 人生の質が高まる108の気づき』(朝日新聞出版)ほか、『されど“服”で人生は変わる』(講談社)など著書多数。好きなもの:マーラー、東方神起、ベルリンフィル、トレンチコート、60年代、『ココ マドモアゼル』の香り、ケイト・ブランシェット、白と黒、映画
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Getty Images
EDIT :
渋谷香菜子