人生を変えた名作、仕事やプライベートに気付きをくれる最旬作。プレシャスキャリアは実はマンガ世代! その「推し」作、手に取ってみませんか?
同年代が何人かいる場面で、ふとマンガの話になり、「私も読んでた〜!」「あのキャラが好きで〜」と思わず盛り上がった、という経験、ありませんか?
『ベルサイユのばら』でオスカルに胸をときめかせ、『BANANA FISH』でアッシュに恋し、『ハッピー・マニア』のシゲカヨに共感し――私たちのそばには、いつもマンガがあったのです。
今回は、マンガを愛する人たちが「読んできた」「読んでいる」数々の作品と共に、自身のたどってきた「マンガ道」を熱弁!きっと、手に取りたくなる一冊に出合えるはず!
ブルボン小林さん×犬山紙子さんが熱く語り合います!知れば知るほど奥深い「マンガ」の世界の魅力とは…
マンガ好きで知られるコラムニストのブルボン小林さんと犬山紙子さんによる贅沢対談。マンガが好きになるきっかけになった作品から、今まさにハマっている作品、そして互いに「ぜひ読んでほしい!」作品まで、縦横無尽にマンガ論を繰り広げます!
ブルボン小林(以下、ブ):今回、『Precious』でのマンガ特集ということで、何を挙げようかすごく迷ったんですよね。あまり直球でもつまらないし、でも際どい球も危険だし、と…。
結果、もう考えまい、と全部やめた(笑)。でも、せっかく犬山さんと対談するんだから、『ドラえもん』じゃなくて『ウメ星デンカ』、『パタリロ!』じゃなくて『ラシャーヌ!』、『伝染(うつ)るんです。』じゃなくて『戦え!軍人くん』と、代表作を外して狙ってみました。
犬山紙子(以下、犬):ありがとうございます(笑)。代表作ということでいえば、以前、ブルボンさんが文芸誌の岡崎京子特集で、「岡崎京子は『リバーズ・エッジ』がベストじゃない」と書いていらしたのを読んで、勇気があるなあと思いました。
ブ:あれは勇気いりましたね。
犬:人によってベストは違いますよね。私は『危険な二人』なんです。岡崎さんが描く女同士のなんでもないおしゃべりとか、今風にいえばシスターフッド的な世界がすごく好きで。
ブ:バブルっぽくて浮わついているようで、実は登場人物全員、しっかり地に足がついているんですよね。
犬:女の子たちが主体性をもっていて、自分の“好き”をちゃんと知っていることに、すごく憧れました。
ブ:今見てもおしゃれですね。装丁も『Precious』っぽい(笑)。今回、犬山さんが挙げた作品では、僕は『BANANA FISH』は読んでましたね。コミックスの装丁のカッコよさたるや!
犬:私、親戚にマンガ家を目指していたお兄ちゃんがいて、そこで読んだんです。最初は難しくて、1巻を読みきれなかったんですよね。それを5回くらい繰り返したところで、急にハマって、そこから読みふけりました。そうなるともう誰かと共有したくて、ふだんマンガを読まない姉を引きずり込んで。その後姉も、空を見ながら「アッシュ…」とつぶやくように(笑)。
ブ:SNSがない時代だから、人力で啓蒙するしかないんだよね。僕も『BANANA FISH』は友達が1巻だけ貸してくれて、2巻がどうしても読みたくて閉店間際の本屋に走って買いに行った(笑)。美内すずえ『ガラスの仮面』も1巻だけ置いていかれて「続きは!?」と。
犬:最近はほとんど電子書籍で読んでしまうので、貸し借りとか回し読みってなくなりつつありますよね…。私、どうしても読んでほしいときには、電子マネーを送金するんです。今どハマリしている葦原大介『ワールドトリガー』は、熱烈なファンが多くて、有無を言わせず全巻送りつけるファンもいるらしくて。
ブ:啓蒙“したさ”がすごいんだ…。僕、まだ読めてないんですが。
犬:電子マネー送りますか?
ブ:大丈夫です、自費で。
犬:やった! 啓蒙成功!(笑)
ブ:さっき、『BANANA FISH』の1巻は何度かチャレンジした、って話があったけど、どんなにおもしろい作品でも、自分のコンディションによって、なんか読めない、ハマらない、ってこと、ありますね。そのマンガがダメってことじゃなくて。
犬:わかります。
ブ:相撲の立ち合い。カチッて自分と作品のタイミングが合う瞬間があって、そんなふうにやっと立ち会えた作品は、人に「いいから読んで!」ってすすめたくなる力がある気がする。僕も電子マネーを送るべきだったなあ。『オーイ! とんぼ』っていうゴルフマンガなんだけど。ことあるごとに紹介してるんだけど、僕が熱弁をふるいすぎて、「そんなに好きなんだ」って“熱”だけとられて、どうおもしろいのかという“弁”のほうはとってもらえない(笑)。
犬:今、1巻ポチります! 1巻でハマりますか?『ワールドトリガー』はまず5巻までなんですよね。そこまで行けば、あとは一気に。
ブ:あのね、『オーイ! とんぼ』は25巻に読みどころがあってね…。
犬:25巻は遠い(笑)。
ブ:主人公のとんぼのライバルの女の子の、優勝がかかったパットのシーンがあるんですよ。その描き方がすごいの(と該当ページを開く)。みんなの緊張した顔とボールがこう並んで、次のページを開くと、真っ白な見開きの中に彼女とボールだけが描かれていて、さらにページをめくると、「わーっ!」って。
犬:マンガだ! これぞマンガ!
ブ:ぜひ25巻までは読んでほしい。僕も『ワールドトリガー』読むから。バーターじゃないですけど(笑)。
犬:この2作は連載中ですが、昔の作品でも、人と共有したいものってありますよね。私、『ぼくの地球を守って』は、初対面でもその人が読者だったら、「あのシーンが!」「あのキャラが!」って盛り上がれます。
ブ:『ぼく地球(たま)』ですね。高校生のとき、図書局の女子が読んでたなあ。僕、高校の部活動は図書局だったんですよ。放送局、とか新聞局、みたいに、図書館を運営する部活動。
犬:ええ〜、初めて聞きました。
ブ:北海道と青森にしかないという説もあるんですが。その部室、まあオタクの巣窟なわけだけど、そこにありましたよ、『ぼく地球』。そして、男女を問わずハマっていたのが、『3×3EYES』。ゲームやアニメっぽさがあって、「厨二病(※1)」成分を満タンにしたような作品でしたね。
犬:その年代年代で必要な要素ってあるんですよね。そしてそれは、時を経てまた別の切り口で繰り返したりもする。私は小学生の頃、氷室冴子『なんて素敵にジャパネスク!』のマンガ版にハマっていたんですが、30代になってから読み返したとき、「なんでこれをいちばん悩んでいた29歳のときに読まなかったんだ!」と、すごく後悔したんです。
ブ:そのときにいちばん効くサプリメントですね。昔読んでおもしろかった。でも、その1回で終わりじゃない。マンガでも本でも、読書の効用というのが、そこにすごく表れていると思う。そう考えると、少年マンガとか少女マンガとか、大人向け子供向けとか、昔のマンガとか今のマンガとか、そういうことは気にせずに並列で読めばいいんですよね。
犬:今の私は少年マンガと中年女性向けマンガばかりですね…。『ゆりあ先生の赤い糸』は、50歳の女性が主人公で、彼女が若い男と付き合ったり、夫にも若い愛人がいたりして、不思議な家族生活が展開されていく話で、めちゃくちゃおもしろいです。
ブ:僕は『コロコロ』や『ちゃお』も読んでますよ。うちの5歳児が激ハマり中なのが、ウェブの『週刊コロコロ』で連載しているまえだくん『ぷにるはかわいいスライム』。犬山さんの娘さんも同じくらいの年ですよね?
犬:年長さんです、ひとつ上。
ブ:きっと好きだと思いますよ。
犬:じゃあポチろうかな。
ブ:今日持ってきたので差し上げますよ。うちには1冊あるので。
犬:ありがとうございます!
ブ:でもごめんなさい、本のほうだけで。特装版限定で付いているアクリルスタンドはもらってっていいですか? 娘に持って帰るので(笑)。
犬:もちろんどうぞ(笑)。
ブ:まだまだ犬山さんに読んでほしいマンガたくさんあるなあ。島崎譲『THE STAR』、かわぐちかいじ『ハード&ルーズ』…。誌面が足りない。また対談やりましょう。
犬:連載でぜひ(笑)。
【ブルボンさんの推しマンガ】
■1:『3×3EYES』
三つ目の妖怪・パイと、彼女と一心同体の不死人・藤井八雲との、人間になるための冒険。1987年連載開始。外伝、続編もある。
■2:『オーイ! とんぼ』
幼い頃に両親を亡くした大井とんぼが、トカラ列島の島で漁師をする祖父に引き取られ、ゴルフと出合う。
■3:『ウメ星デンカ』
故郷の「ウメ星」を爆発で失った宇宙人の王室一家が、平凡な日本の家庭に居候。『ドラえもん』の連載が始まる直前まで描かれていた。
【犬山さんの推しマンガ】
■1:『ぼくの地球を守って』
植物の声を聞くことのできる亜梨子と、彼女を慕う少年・輪。異星人の記憶をもつ7人の男女が現代日本に転生、前世に翻弄される。
■2:『BANANA FISH』
ストリートキッズのリーダー、アッシュ。「バナナ・フィッシュ」という言葉を調査するうちに、陰謀に巻き込まれ…。
■3:『ゆりあ先生の赤い糸』
手芸教室で教える伊沢ゆりあ50歳。夫がホテルで倒れ、病院に駆けつけると、そこには見知らぬ美青年が。運命の赤い糸が絡み合う。
※掲載商品の価格は、すべて税込みです。
※マンガの価格はコミック版のものになります。
- PHOTO :
- 岡本 俊
- EDIT&WRITING :
- 正木 爽・宮田典子・剣持亜弥(HATSU)、喜多容子(Precious)