「成功裏」は「物事が成功した状態であること」を指す言葉です。「成功の裏だから失敗なのでは?」「だったら『裏』は何のためについてるの?」と、素朴な疑問が頭に浮かびますよね。この記事では「成功裏」と「成功」の違いや「成功裏」の使い方について、詳しく解説します。

【目次】

「裏」には「人の目にふれない部分」という意味があります。
「裏」には「人の目にふれない部分」という意味があります。

【「読み方」「意味」は? 「基礎知識」】

■読み方

「成功裏」は「せいこうり」と読みます。「せいこううら」ではありませんよ。

■意味

「成功裏」は「物事が成功した状態であること」を指します。

もともと「成功裏」は「成功裡」と書かれていました。ところが「裡」が常用漢字ではなくなったために、「成功裡」は公的な文書や書類では使用できなくなってしまいました。そこで「裡」の代わりに「裏」という漢字が当てられたのです。そもそも「裡」は「裏」と同様、「物事において、人の目にふれない部分。また、二面ある物事のうちで、人目につかない側面」という意味をもっています。

つまり、「成功」が単なる出来事、成功したという結果を指すニュアンスであるのに対し、「成功裏」は、人の目には触れにくい「成功」に付随した出来事や「成功」に至る経緯なども含まれた言葉なのです。

■英語で表現すると?

「運ぶ」「導く「もたらす」という意味をもつ[bring]と「成功」を意味する[successful]を使った[bring ~ to a successful conclusion]は、「~を成功裏に終える」ということになります。

・We bring the project to a successful conclusion」(私たちはプロジェクトを成功裏に終えた)


【ビジネスシーンでの「使い方」がわかる「例文」3選】

「成功裏」は個人よりも組織や集団の「成功」を表現するのに用いられることが多い言葉です。ビジネスシーンだけでなく、イベントやスポーツのシーンなどでも使われます。言い回しとしては「成功裏に終わる」というフレーズが代表的。「成功」ではなく、あえて「成功裏」という言葉をチョイスすることで、成功の陰には何らかの困難や紆余曲折があったという想像の余地を残すことができます。裏を返せば、「成功裏」は予想通り順風満帆に進んだ出来事については使用しない言葉であるということもできますね。

■「途中、アクシデントがあったもののイベントは成功裏に終わったといえるだろう」

■「新しいプロジェクトの推進にはさまざまな困難もあったが、なんとか成功裏に収めることができた」

■「経験不足もあり順調には進まないだろうが、何とか成功裏に進めたい」

■NG:「成功裏のうちに終わる」

「裡」には「物事の内側」や「~の内に」という意味もあります。「成功裏のうちに」とすると「成功の内にうちに」と意味が重なってしまうため、誤用となります。


【「成功裏」の「類語」「言い換え」表現】

「成功裏」の意味は理解したとはいえ、何だか誤解も生みそうな言葉ですよね。類義語もご紹介しましょう。

■成功のうちに終わった ■実を結んだ

「実を結ぶ」という言葉も、成功という結果を残せたその過程を想像させますね。

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「成功裏」は「裏」という感じが使われているため、「失敗のこと?」と誤解してしまいそうな言葉ですが、実は成功の陰に存在する、人目には触れることのない苦労や努力を想像させる言葉です。「成功」ではなく、あえて「成功裏」を選んだ人の心情に思いを馳せることで、違った景色が見えてくるかもしれませんよ。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館)/『これ1冊であとはいらない! 大人の語彙力大全』(中経の文庫) /『ひと言で知性があふれ出す 大人の語彙力が身につく本』(かんき出版) /『とっさに使える敬語手帳』(新星出版社) /『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書) :