「郊外移住者の増加現象は、都会一極集中へのアンチテーゼなのかもしれない」――今回おさらいするのは、この文章で使われている「アンチテーゼ」です。わかっているつもりでいる人も、「アンチテーゼって?」と問われたら答えられないかもしれませんね。正しい意味や由来、ビジネスでの使い方などを見ていきましょう。 

【目次】

「アンチ〇〇」と「アンチテーゼ」の意味は異なるのでご注意を!
「アンチ〇〇」と「アンチテーゼ」の意味は異なるのでご注意を!

「アンチテーゼ」とは?堂々と使うための基礎知識】

■意味

「アンチテーゼ」とは、「反対の意見」「対立する理論」を表すドイツ語の〔Antithese〕からくるカタカナ語です。簡単に言えば、「ある主張(理論)を否定する主張(理論)」のこと。「アンチ」は「反対の」、「テーゼ」は「命題」を意味するので、「反対命題」や「反定立」とも訳され、「アンチテーゼを提唱する」「現代社会へのアンチテーゼ」といった使い方をします。

■由来と英語表記

「アンチテーゼ」という言葉は、「ドイツ観念論」の大成者である哲学者・ヘーゲル(1770-1831)によって知られるようになりました。彼はギリシャ以来の哲学に「対立や矛盾を越えて物事は発展する」という独自の弁証法を用いましたが、それを構成するひとつの要素が「アンチテーゼ」なのです。ちょっと難しい話になってしまいましたが、「アンチテーゼ」は英語ではなくドイツ語に由来する、くらいは覚えておきましょう。ちなみに英語では〔antithesis〕と表記します。


【「アンチテーゼ」はこう使う!「例文」3選

前述したように「アンチテーゼ」は完全否定ではありません。さらに言えば、ある主張に対する別の主張なので、ただの否定的な主張でもありません。理論を進めるための対立意見であることが「アンチテーゼ」なのです。まずはアンチテーゼを提唱する会話例を見てみましょう。

主張A「着物は日本を代表する文化です」

主張Aに対するアンチテーゼ「着物は日本の服飾文化ですが、現代では日常生活で着る人が少ないので日本を代表する文化とはいえません」

主張B「犬は誰からも愛される動物だ」

主張Bに対するアンチテーゼ「犬は多くの人に愛されている動物だが、苦手な人や、アレルギーを発症する人がいることも考慮しなければならない」

次に、「アンチテーゼ」という言葉を用いた例文を紹介します。

■1:「昨日の首相の答弁にアンチテーゼを唱える市民が、国会議事堂前に集まった」

■2:「消費社会へのアンチテーゼとして、リサイクルやリユースを推進すべきだ」

■3:「アンチテーゼが提唱されるくらいでないと、大衆に認知されたとは言えない」


日本語でわかりやすく言うと?「類語」「言い換え」「対義語」も!

■類語

・反対意見 ・反対理論 ・異論 ・意義

■言い換え

・異を唱える ・反論する

■対義語

・肯定意見 ・テーゼ 

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「アンチテーゼ」の「アンチ」は完全否定するという意味ではありませんでした。また、「アンチ巨人軍」のように、特定の団体などを嫌う人に使う「アンチ」とは異なることも理解しておきましょう。

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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『すぐに使えて、きちんと伝わる 敬語サクッとノート』(永岡書店)/『今日から役に立つ! 使える「語彙力」2726』(西東社) :