今回解説するのは四字熟語の「万里一空」です。読めますか? 聞いたことはありますか? 日常会話で使うことはなさそうでも、四字熟語はビジネスシーンや飲み会などで小噺的に重宝しそうです。転入や異動などの挨拶にも使える「万里一空」を、しっかりチェックしていきましょう。
【目次】
【「万里一空」は宮本武蔵の言葉?「意味」など基礎知識】
■読み方
「万里一空」は「ばんりいっくう」と読みます。「万理一空」と表記しても間違いではありませんが、「万里」のほうが一般的でしょう。「万里」は「まんり」と間違えやすいのでご注意を。
■意味
「万里一空」は「目標に向かって努力し続けること」を意味します。「万里」は非常に遠い距離や、極めて距離が離れていることを示し、「一空」はひとつの空という意味。「万里一空」は「どんなに離れていても同じ空の下にいる」とも解釈できますが、「ひとつの目標に向かって努力することの大切さ」を説く熟語です。
■由来
そもそも「万里一空」は、宮本武蔵の武道書『五輪書(ごりんのしょ)』に書かれたもの。
宮本武蔵はご存じの通り、江戸時代前期に“剣豪”と呼ばれるほど活躍した武道家ですが、実は剣術のほか、書や画、彫刻などにも非凡な才能がありました。そんな武蔵が人生最期に残したのが、兵法の奥義を「地・水・火・風・空」の5つに分類して説いた『五輪書』です。『五輪書』は武蔵が長年の修行で得た精神的境地を綴ったもので、「山水三千世界を万里一空に入れ、満天地ともまとめる(世界はひとつの空のもとにあり、どこまで行っても同じ世界である)」と書き、「心迷わず精神を修養し、身体の鍛錬を極めれば目標に到達できる」ことを表しました。それが転じて、「目標や目的に向かって、やるべきことを見失わず努力し続けること」という意味で「万里一空」が使われるようになったのです。
【ビジネスシーンでも使える「万里一空」の「例文」5選】
■1:「みなさまのお力になれるよう、万里一空の精神で励みます」
■2:「万里一空の境地に至るには、まだまだ努力が足りないようだ」
■3:「彼女がスピード出世したのは、入社時から目的意識をもって鍛錬した、万里一空の努力の賜物だ」
■4:「万里一空の心で練習に励んできたことが結果につながった」
■5:「私の座右の銘は万里一空です」
このように「万里一空」は、「精神」「境地」「努力」「心」などと一緒に使われることが多い熟語です。
【「万里一空」の「類語」は?「言い換え」は?】
目標に向かって惜しまず努力を続けることを表す「万里一空」。似た意味の熟語も一緒に覚えておきましょう。
■一路邁進(いちろまいしん)
目的を達成するためにひたすら進むこと。例:「完成に向かって一路邁進する」
■勇往邁進(ゆうおうまいしん)
目標に向かって、わきめもふらず勇ましく前進すること。例:「全国制覇を目指して勇往邁進する」
■粉骨砕身(ふんこつさいしん)
力の限り懸命に働くこと。例:「新しいプロジェクトが成功するよう粉骨砕身する」
■粒粒辛苦(りゅうりゅうしんく)
一粒一粒が辛苦の結晶であるということ。米を作る農民の苦労を表した熟語。転じてコツコツと苦労を積むことや、物事を成就するために努力を続けることを表します。例:「粒粒辛苦した末に教授にまで上りつめた」
■一心不乱(いっしんふらん)
ひとつのことに集中して、ほかに気をとられないこと。また、そのさま。例:「一心不乱に祈る」「一心不乱に研究する」
【「万里一空」にぴったりな英語は?】
■aim high
「高みを目指す」といった意味なので、「万里一空」の「諦めずに努力する」と同じように使えるでしょう。
■I will never give up
同じく「決して諦めずに努力し続ける」という意味では〔I will never give up〕も同義といえますね。
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「万里一空」は、スピーチや自己紹介、挨拶などでよく使われます。元プロ野球選手で現在はジャイアンツのファーム総監督を務める桑田真澄さん(今はマットのパパ、と言ったほうがわかるでしょうか)も、「万里一空」を座右の銘にしていたとか。目標を見失わず努力し続けることの大切さを教えてくれる四字熟語です。
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『決定版 すぐに使える! 教養の「語彙力」3240』(西東社)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA)/『デジタル大辞泉プラス』小学館 :