クラシック音楽やオペラに詳しくない人でも、マリア・カラスやルチアーノ・パヴァロッティの名前は耳にしたことがあるのではないだろうか。いずれもオペラ史上に残るスター歌手だ。オペラ界には、このふたりのように、黄金の歌声と称えられる声とオーラをもつ歌手がときおり現れ、人々を熱狂させてきた。オペラ好きになったきっかけが、こうした歌声に出会って一瞬にして心を奪われたから、という人も多い。

 そんなオペラの声には、さまざまな声域あるが、一般に、マリア・カラスのようなソプラノとルチアーノ・パヴァロッティのようなテノールとが花形と言われる。その理由のひとつとして挙げられるのが、この二つの声域が人の耳にはっきりと聞こえやすいということ。ソプラノやテノールは、耳から入ったその歌声がいきなり聴衆の心にまで届き、感銘を与えたり、興奮を引き起こしたりするというわけだ。かつて「三大テノール」が一世を風靡したことからも、その魅力の大きさはうかがい知れる。

 今も世界中で引っ張りだこの人気オペラ歌手は何人かいる。そんな中、まさにスター街道驀進中のふたりの若手テノール、ディミトリー・コルチャックとサイミール・ピルグが相次いで新国立劇場の舞台に登場する。

オペラ界に彗星のごとく現れたふたりの若きテノール

ディミトリー・コルチャック

ロシア出身のディミトリー・コルチャック
ロシア出身のディミトリー・コルチャック

  2月28日初日の『ホフマン物語』に出演するディミトリー・コルチャックはロシア出身。2004年にフランチェスコ・ヴィナス国際コンクールおよびプラシド・ドミンゴ国際オペラ・コンクール「オペラリア」で受賞して注目を集め、国際的な活動を開始。これまでにミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、英国ロイヤルオペラ、パリ・オペラ座など数々の歌劇場で活躍。新国立劇場には2016年『ウェルテル』にタイトルロールで初登場し、大好評を博した。それ以来、贔屓にしているという日本のファンも多い。

サイミール・ピルグ

アルバニア出身のサイミール・ピルグ
アルバニア出身のサイミール・ピルグ

 もうひとりのスター・テノール、サイミール・ピルグが出演するのは、3月14日が初日の『愛の妙薬』。ルチアーノ・パヴァロッティに憧れてテノール歌手を目指したというピルグは南東ヨーロッパのバルカン半島にあるアルバニア共和国の出身。念願かなってイタリアでパヴァロッティに師事し、2004年にはザルツブルク音楽祭に男性歌手として最年少デビューを果たすという輝かしい経歴をもつ。メトロポリタン・オペラハウスやミラノ・スカラ座をはじめ、世界の主要な歌劇場のほとんどにデビューを果たしている。新国立劇場へは、今回が満を持しての初登場となる。

 詩人ホフマンの恋の遍歴を幻想的に描いた、オッフェンバック唯一のオペラ『ホフマン物語』。ドニゼッティの代表作で、楽しいストーリーの中に時折流れる哀愁漂うメロディーが心に響く『愛の妙薬』。ふたつの永遠の名作に出演するふたりの若きスター・テノールは、観客の心を鷲掴みにする美声とともに、映画俳優並みの容姿の持ち主という点でも共通している。まさに、男も惚れるテノール! これは絶対に見逃せない!

『ホフマン物語』新国立劇場2013年公演より。撮影:三枝近志
『ホフマン物語』新国立劇場2013年公演より。撮影:三枝近志
『愛の妙薬』新国立劇場2013年公演より。撮影:三枝近志
『愛の妙薬』新国立劇場2013年公演より。撮影:三枝近志

新国立劇場 2017/2018シーズンオペラ
『ホフマン物語』【全5幕/フランス語上演 日本語字幕付】
公演日:2018年2月28日(水)~3月10日(土)

『愛の妙薬』【全2幕/イタリア語上演 日本語字幕付】
公演日:2018年3月14日(水)~3月21日(水・祝)
会場:新国立劇場 オペラパレス/東京都渋谷区本町1-1-1 

問い合わせ先

■2018/2019シーズンラインナップも発表されました!
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/variety/

この記事の執筆者
音楽情報誌や新聞の記事・編集を手がけるプロダクションを経てフリーに。アウトドア雑誌、週刊誌、婦人雑誌、ライフスタイル誌などの記者・インタビュアー・ライター、単行本の編集サポートなどにたずさわる。近年ではレストラン取材やエンターテイメントの情報発信の記事なども担当し、ジャンルを問わないマルチなライターを実践する。
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