互いの意見や好みがまったく違っている状況を指して「あなたと私は相容れない部分が多い」などと言いますが、この「相容れない」という言葉の意味を正しく理解していますか? 「相容れない状況」はトラブルを招きかねません。「相容れない」について、サクッと解説します。
【目次】
【「相容れない」とは?「読み方」「意味」】
■読み方
「相容れない」は「あいいれない」と読みます。 「あいいれない」は聞いたことや使ったことがあっても、漢字で即座に「相容れない」と書けるでしょうか。「相入れない」は誤用です。
■意味
互いの主張や立場が相反していて両立しないこと。
「相(あい)」という漢字には、「ふたりで互いに槌(つち)を打ち合わすこと」という意味が。「相槌(あいづち)」はここからきているのですね。また「相四つ(あいよつ)」や「相憐れむ(あいあわれむ)」など、接頭語として使用する場合は「互いに」という意味をもちます。そして「容」という漢字には「聞き入れる」「許す」という意味が。こうして文字自体がもつ意味からも、「互いを聞き入れない、互いを許さない=相反して両立しない」となることがわかりますね。
【「使い方」がわかる「例文」5選】
「相容れない関係」や「相容れない状況」「~の考え方とは相容れない」などというふうに使いますが、ビジネスで陥りそうな状況を鑑みた例文をご紹介します。
■1:「制作部と広告部の意向が相容れないから、この仕事は難航しそうだ」
■2:「努力しても、社風と働き方が相容れない場合は、転職もひとつの選択肢だ」
■3:「何度話し合っても相容れず、解決しないまま持ち越しとなった」
■4:「相性が悪いというレベルではなく、あのふたりは生涯相容れない関係かもしれない」
■5:「相容れない者同士が同じチームになるとやっかいだから、人選には配慮しよう」
【「相容れない」を言い換えると?】
■一致しない
■両立しない
■共存できない
■ぶつかり合う
■対立する
■理解し合えない
■分かり合えない
■認められない
■水と油
【ことわざ「氷炭相容れず」とは? 】
「相容れない」の「ない」を「ず」に言い換えた「相容れず」を用いたことわざをふたつご紹介しましょう。
■氷炭相容れず(ひょうたんあいいれず)
性質が反対で合わないたとえです。氷と炭は性質も使い方もまったく異なるもの。「氷炭相並ばず(ひょうたんあいならばず)」も同じ意味です。
■枘鑿相容れず(ぜいざくあいいれず)
ふたつの物事が、互いに食い違っていて合わないことのたとえ。「枘鑿」は「円鑿方枘(えんさくほうぜい)」の略で、木材や石材を組むときに丸いほぞ穴に四角いほぞを入れる(=入らない)ということからのことわざです。
【「相容れない」を英語では?】
■be incompatible(一致しない)
Making money is incompatible with his artistic conscience.(金儲けは彼の芸術的良心と相容れない)
■be out of harmony(~と調和しない)
What he advocated was out of harmony with the times.(彼の主張は時勢と相容れなかった)
■oil & water/apples and orenges(正反対)
They don't go together like oil and water(apples and orenges).(相容れない同士だ)
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仕事の現場で遭遇することもある、相容れない状況。このような場合は、弱い立場のほうが折れるか、決裂するか…だけではありません。互いが相手を認めて歩み寄ることができれば、うまくいくこともありますよね!
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『決定版 すぐに使える! 教養の「語彙力」3240』(西東社)/『故事成語を知る事典』(小学館)/『プログレッシブ英和中辞典』(小学館) :