雑誌『Precious』8月号では「私を語る印象派ジュエリー」と題して、4人のジュエリー賢者がたどり着いた今の結論をご紹介。上質でシンプルな服を愛するプレシャス世代は、その人らしさを象徴し、鮮やかに印象づけるステディジュエリーをもっています。

本記事では、立命館大学准教授の富永京子さんに想い出のストーリーやセレクトの決め手をうかがいました。

富永 京子さん
立命館大学准教授
(とみなが きょうこ)日本学術振興会特別研究員を経て、立命館大学産業社会学部准教授。社会学的視角から人々の生活における政治的側面、社会運動・政治活動の文化的側面をとらえる。著書に『社会運動のサブカルチャー化』(せりか書房)等。

「キャリアを積んだ今。私は私の意志で『可愛い』を選びます」(富永 京子さん) 

イヤリング_1
”ヴァン クリーフ&アーペル”『ヴィンテージ アルハンブラ』のペンダントとイヤリング。四つ葉のクローバーに着想を得たコレクションはメゾンの幸運のシンボル。存在感があるのに主張しすぎないデザインは秀逸。「今後も自分の成長に合わせて、買い足していきたいコレクションです。最近は”シャネル”のコスチュームジュエリーと一緒に装うスタイルも楽しんでいます」

ブランドの伝統に敬意を払い、ジュエリーに対してはかなり慎重な立場をとっていました。長いこと楽しんでいたのはコスチュームジュエリー。30歳を過ぎて大学の教員となった頃、自分の職業や地位、キャラクターに合うジュエリーを、これまで頑張った証として購入したいと考えるようになりました。

かなり迷った末に選んだのが、”ヴァン クリーフ&アーぺル”の『アルハンブラ』コレクションです。四つ葉のクローバーのモチーフには正統派の可愛らしさが漂い、オニキスにすることでモダンな印象が加わるのも魅力ですね。

実は私自身、社会運動の研究者という職業のためか、ファッションやメイクに時間や労力を費やすことに抵抗感を抱いていた時期がありました。女性であることを楽しんだり、消費を謳歌することはくだらない、という価値観に影響されていたのかもしれません。

でも、女性が可愛らしく装うことは社会に対する媚びではないし、ましてや非難されるべきことではないはずです。キャリアを積んだ今だからこそ、私は私自身の意志で「可愛い」ジュエリーを選びたいと思います。私にとってジュエリーは、私という人間が、「可愛らしく、かつ知的で理路整然とした研究者でありたい」と願う意思表明でもあるのです。(富永さん)

※掲載アイテムはすべて私物になりますので、ブランドへのお問い合わせはご遠慮ください。

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PHOTO :
小池紀行(cask)
EDIT&WRITING :
喜多容子(Precious)
取材・文 :
河西真紀