今。美食家の注目を集めているのは、必ずしもアクセスが便利ではない「奥の地」。滋味溢れる素材に惹かれた料理人たちが紡ぎ出す料理は、心にもカラダにも深く染み入って、感動と幸福を呼びます。

「もうあのお店行った?」と交わされる美食家たちの囁きは、つい数年前まで東京や京都など都会の店が話題の中心でした。ところが今、その多くは北陸や軽井沢、そして南は九州まで、「奥の地」へと拡がっています。贅沢な食体験とはキャビアやフォアグラなどの高級食材だけではなく、その地でしか味わえない新鮮な旬の食材と、その地に根ざす料理人との出合いに尽きると、多くの人が気付き始めているのでしょう。

『Precious』8月号の特集「スモール&ラグジュアリーな14の美食宿」では、味わい、そしてそのまま泊まれる美食宿から14軒を厳選。

今回は、佐賀県の美食宿「御宿 富久千代」をご紹介します。

人気酒「鍋島」の贅沢な世界にひたる「御宿 富久千代」

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酒蔵内のギャラリースペースで、通常は出回らない稀少な「鍋島」をテイスティング。酒器はエミール・ガレのアンティーク。

CASTRONOMY with SAKE 食事によりそう日本酒をもっと身近に

肥前鹿島へは佐賀空港からクルマで約1時間……かなり“奥”なアクセスではありますが、入手困難な日本酒「鍋島」を味わい、その世界にどっぷりとひたることができるとしたら? 決して遠すぎることはありません。白壁の酒蔵が軒を連ねる肥前浜宿通りにあっても、ひときわ大きな存在感を放つ茅葺き屋根が目印です。

宿泊はまず通常は入れない酒蔵を訪ね、酒造りを見学したり、レアな「鍋島」を試飲することからスタート。酒米が蒸される、ほんのり甘い香りのなか味わう日本酒はひときわ芳醇に感じられます。

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唐津産の甘鯛を炭火焼きにして。下には酒蒸しにした新タマネギ、甘鯛の骨からとった出汁と共に。
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日田産の鮎をからりと揚げて木の芽をたたき込んだ甘酢あんと。

夕食は宿内のダイニング「草庵 鍋島」のカウンターで。「神楽坂 石かわ」で研鑽を積んだ西村卓馬料理長による12皿ほどのディナーはどれも小皿で素材の味を引き立てる繊細な味わい。「鍋島」はセットになっていませんが、ほとんどのゲストがペアリングするのだそう。そりゃそうでしょう。食後は“B&B ITALIA”のソファに身をゆだねながらもう一杯……美酒三昧の夜が更けていきます。

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“バング&オルフセン”の音響も素晴らしい書斎
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この6月に30歳になったばかりの西村料理長
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築230年の古民家
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古民家にイタリア製家具が不思議な調和を見せています。
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佐賀らしく有田焼や唐津焼の酒器のコレクションもお見事。

問い合わせ先

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  • 御宿 富久千代
  • 料金/1棟貸し切り 1泊2食付き¥88,000~(サ別)
    ※2~4名
  • ※ディナーのみ¥24,200~(税・サ込)
  • TEL:0954-60-4668
  • 住所/佐賀県鹿島市浜町乙2420-1

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PHOTO :
長谷川 潤
EDIT&WRITING :
秋山 都、安村 徹(Precious)