『Precious』は2024年4月号で、創刊20周年を迎えました。
日本の雑誌界に「ラグジュアリー」という新しいジャンルを生み出した画期的な月刊女性誌は、名実共に、ほかには類を見ない特別な存在に。
記念すべき創刊20周年記念号では、「人気コンテンツからひも解くPrecious20年間の軌跡」と題し、20年間の本誌人気コンテンツを、ページのつくり手たちと振り返りながら「Preciousらしさ」とは何か?ブレないエレガンスの本質は何か?を探りました。
今回は[名品編]。「上質なものは美しい」、そんなPreciousの哲学が凝縮された「名品」企画はどうやって生まれたのか、その舞台裏をのぞいてみましょう。
誌面で紹介した逸品は、即完売になることも…|モノの価値を詳細に掘り下げる名品企画は、Preciousの伝説に!
20年の歴史のなかで、欠かすことができないのが「名品」の存在です。本物の価値を知り尽くした成熟した女性にふさわしいものとは何かを追い求め、本誌はさまざまな視点からモノを選び、触れ、そしてあくなき探求心で、それぞれの「名品」を深く掘り下げてきました。そしてそのたびに実感したのが、「上質なものは美しい」という、揺るぎない「エレガンス」の法則でした。
「創刊当時、それまで触れたこともなかったハイブランドのスーツをお借りして、すみずみまで徹底的に観察したのを覚えています。レオパード柄のライナーが付いたそのジャケットは、裏返しにしても着られるくらいに、表からは見えない細部にも丁寧な処理が施され、そのテーラリングの技術の高さに圧倒されました。どうしてもその素晴らしさを読者に伝えたく、実際に裏返しにして撮影したのですが、本国のプレスの方からは怒られて…」(本誌・エディトリアル・ディレクター喜多容子)
時代を超越したエターナルな「名品」には、その背後に必ず心を揺さぶられる物語がありました。
「アイコンのひとつひとつに、職人たちの物づくりへの情熱やブランドの歴史があり、調べれば調べるほどその奥深さに興味をもちました」というのは、ライターの兼信実加子さん。ひとつの「名品」の背景を調べるのに、何冊もの本を夢中になって読破したこともあったとか。
また、セレブリティと名品のコラムを数多く書いてきた藤田由美さんは、「『名品』をまとった往年の女優の画像をじっくりと観察するうちに、その人なりの『名品』との付き合い方がかいま見え、美しさの秘密を発見したような気分に」と打ち明けます。
「名品」とどう向き合うかも、大きなテーマでした。
’22年の「持たない時代の名品」は、モノをもたない時代に、それでもあえて手に入れたいポジティブな「名品」とは?と問題を提起。改めて本物の価値を見つめ直すこととなりました。
創刊以来、数多くの「名品」を撮影してきたカメラマンの戸田嘉昭さんは、こう語ります。
「Preciousのスタッフがスタジオに運んできたモノは、どれも強いメッセージ性があり、にじみ出る品性で溢れていました。ある編集者は、自分が惚れ込んで選んだ『名品』を愛おしいと思う気持ちから、『この子』と呼び、もっともっと美しく撮影してほしいと、決して妥協を許さなかった。それに応えようと私も必死で撮影しました」
そこから、生み出された息を呑むような美しいビジュアルが、「名品」コンテンツの礎となったことは、いうまでもありません。
- PHOTO :
- 戸田嘉昭(パイルドライバー)
- EDIT&WRITING :
- 兼信実加子、長瀬裕起子、喜多容子(Precious)