ハケット ロンドンの会長であるジェレミー・ハケット氏は、「紳士は決して悪目立ちしません。しかし、自分のスタイルには自信を持っています」と説いている。とするならば、形式的とも言えるスーツにおいて、自身のスタイルを確立できる一着を是非とも手にしたいものだ。そこで、いざという時頼りになるのが今回紹介するセレクトショップのオリジナルスーツ。これらをベースにあなたらしい着こなしを、この春挑戦してみてはいかがだろう。

セレクトショップ別スーツ

トゥモローランド

スーツ¥160,000・シャツ¥14,000〈トゥモローランド ピルグリム〉 タイ¥26,000〈トゥモローランド〉/以上トゥモローランド )、チーフはスタイリスト私物
スーツ¥160,000・シャツ¥14,000〈トゥモローランド ピルグリム〉 タイ¥26,000〈トゥモローランド〉/以上トゥモローランド )、チーフはスタイリスト私物

誠実さはもちろん大切だが、その中に潜ませた遊び心にこそ大人としての深みは表れるものだ。トゥモローランド ピルグリムの新作は、それをより実感させてくれる。この一着を生み出すまでに掛けた時間はおおよそ1年。その間、計4回にわたり事細かな修正を行った渾身のジャパンメイドのスーツだ。

これまでスーツでは、ドロップ(ウエストの絞り値)を8〜8.5に設定していた。しかし、こちらはドロップ6とよりシャープに仕上げている。毛芯はのりを抜くためひとつひとつ湯付け・手洗いを行い、釦はというと手付けしかできない穴の間隔に設定。しかも素材は、エルメネジルド ゼニアとロロピアーナの最高級を使用している。無地と思しき生地だが、うっすらとウィンドウペンが入り、さりげない楽しさも表現しているのだ。

ユナイテッドアローズ

スーツ¥72,000・シャツ¥16,000〈ユナイテッドアローズ〉・チーフ¥6,000〈シモノゴダール〉/以上ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店 タイ¥18,000(ザ ソブリンハウス〈ロバート フレイザー〉)
スーツ¥72,000・シャツ¥16,000〈ユナイテッドアローズ〉・チーフ¥6,000〈シモノゴダール〉/以上ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店 タイ¥18,000(ザ ソブリンハウス〈ロバート フレイザー〉)

ここ最近は、スーツにもリラックス感が求められるようになってきた。そのため、快適さを強みに持つモデルが多数登場している。だからこそ、今季から新たにレギュラーモデルと銘打ったこのユナイテッドアローズのスーツはより新鮮に見えるかもしれない。

昨今のユナイテッドアローズのオリジナルスーツは、肩パッドを外し、丸みのあるシルエットで軽快かつコンパクトに仕上げられたコンフォートモデルが一般的だった。しかし、こちらは、3㎜の肩パッドを入れた実に構築的な出で立ち。ややもすると懐古的になりがちだが、モダンなシルエットで仕立てているため色褪せて見えないのだ。生地はというと、世界でも類を見ない細さと柔らかさを兼ね、希少性も高いピュアタスマニアウールを用いた完全別注で、うっすら入ったストライプがスマートさをより際立たせる。

その柄を引き立てるならやはり無地のタイが理想だろう。さらにトーンを揃えれば、どんなシーンにも活用でき、確かな存在感を放ってくれるはずだ。

バーニーズ ニューヨーク

左/スリーピーススーツ¥150,000・シャツ¥22,000・タイ¥12,000・チーフ¥5,800(バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンター) 右/スリーピーススーツ¥150,000・シャツ¥19,000 ・タイ¥12,000・チーフ¥5,800(バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンター)
左/スリーピーススーツ¥150,000・シャツ¥22,000・タイ¥12,000・チーフ¥5,800(バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンター) 右/スリーピーススーツ¥150,000・シャツ¥19,000 ・タイ¥12,000・チーフ¥5,800(バーニーズ ニューヨーク カスタマーセンター)

ドレスの分野においても原点回帰が叫ばれて久しい昨今である。3ピースなどはその最たる例だが、バーニーズ ニューヨークのそれに袖を通してみると、便利という事実にも気付かされる。

ジャケットを脱ぐ機会が増える夏場。シャツ一枚でデスクワークをこなすことも日常茶飯事だろうが、それでは心許ない。では、ジレを加えたらどうだろう。たとえ座った姿でも精悍に見える。異なるジャケパンスタイルに挿して雰囲気を変えることだってできるのだ。

そこでふたつの選択肢を。写真右は、マンハッタンで働くビジネスマンをイメージし製作したマンハッタンというモデル。ナローなシルエットにウールシルクの生地がエレガントで実にスタイリッシュ。Vゾーンを同じ寒色のミントグリーンを基調に構築すれば清々しい印象に仕上がる。写真左のマディソンは、スーパー110’sで仕上げたブリティシュスタイルとも相性がいいシャークスキン生地。胸元はローズピンクのタイ&シャツで柔らかな雰囲気と季節感を取り入れたいところだ。頼れる男か包容力のある男か。どちらを演出してもきっと正解といえるだろう。

ビームス

左/スリーピーススーツ¥115,000・チーフ¥2,800〈ビームス F〉 シャツ¥21,000〈オリアン〉・タイ¥15,000〈ジエレ〉/すべてビームス ハウス 丸の内 右/スーツ¥80,000〈ブリッラ ペル イル グスト〉・シャツ¥18,000・チーフ¥2,800〈ビームスF〉・タイ¥16,000〈ホリデー&ブラウン〉(ビームス ハウス 丸の内)
左/スリーピーススーツ¥115,000・チーフ¥2,800〈ビームス F〉 シャツ¥21,000〈オリアン〉・タイ¥15,000〈ジエレ〉/すべてビームス ハウス 丸の内 右/スーツ¥80,000〈ブリッラ ペル イル グスト〉・シャツ¥18,000・チーフ¥2,800〈ビームスF〉・タイ¥16,000〈ホリデー&ブラウン〉(ビームス ハウス 丸の内)

気品と威厳に満ちたクラシックスタイルは誰もが望むところだが、今の空気にマッチさせるためにもモダンさをさりげなく匂わせたいところである。そのさじ加減をよく心得ているのがビームスだ。

ダークグレーのそれは、一見プレーンな見た目だが実は繊細なハウンドトゥース柄が落とし込まれている。さらにラペルは幅を広めにとったピークドラベル。Vゾーンは、ストライプシャツにヴィンテージ調の柄をプリントしたタイで仕上げている。ツルッとしたタイのツヤ感などは、デザインコンシャスに仕上げたスーツとも気が合いそうだ。

ネイビースーツは、オーダーで仕立てたスーツをイメージしたもの。グレンブレイドにウィンドウペンをミックスした柄をあしらっているが、ベースの生地と同系色のためワル目立ちしない。ジレはダブルブレスト型で、スラックスにはサイドアジャスターを兼備。クラシカルな意匠をちりばめながらも、副資材を使わない軽やかな仕立てはナポリスーツをイメージさせる。そのモダンとクラシックの邂逅が実に心地いい。

※価格はすべて税抜です。

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PHOTO :
西山輝彦
STYLIST :
河又雅俊
WRITING :
菊池 亮
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