西洋のお城の入り口には必ずと言っていいほど設置されている、鉄製の扉。その堅牢さと存在感で、今でもヨーロッパの街並みや豪邸には欠かせないエクステリアとして知られています。

外国映画や海外のドラマにもたびたび登場し、印象に残っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな鉄製の扉を実際に自邸に取り入れる場合、どれくらいの価格で、どういった費用や手間がかかるのか、気になりませんか?

今回は鉄の扉を中心に設計から製作まで幅広く取り組んでいる「メタルクリエイト」の代表取締役・桜井巳一さんに詳しく伺いました。

門扉に施される装飾も魅力のひとつ
門扉に施される装飾も魅力のひとつ

装飾用建材の鉄「ロートアイアン」

ーそもそも、鉄の扉にはどのような歴史があるのでしょうか?

「ロマネスク、ゴシック、ロココ、ヌーボーなど、ヨーロッパにはそれぞれの文化を彩ってきたさまざまな建築様式があります。けれど、建築様式が変わっても変わらないものもあります。それが、フェンスや門扉、階段やベランダの手すりなどの装飾用建材として用いられる『ロートアイアン(Wrought Iron)』です。

加工用の金属としては、鉄の他にもステンレス、銅、真鍮、アルミ等がありますが、加工性、強度、価格を考えると鉄が断然優れています。鉄がなければ、現在の建築物は存在せず、『鉄は国家なり』とも言われる理由でもあります。

明治維新以降、広くヨーロッパ文化に接するようになった日本では、先進文化と共にその美しさが積極的に取り込まれはじめ、さまざまな建築物が立てられました。残念ながら、現存するものは少なくなりましたが、近年では東京駅の修復をはじめ、明治・大正時代の建築物が改めて注目を集めるなど、西洋風建築への憧れは今も枯れることなく脈々と続いています。

そして今、建物や街並みにヨーロッパ文化の風合いを施したり、ゲストハウスウエディングの式場やテーマパークなどの商業施設において、非日常空間を演出したりするために欠かせない建材として、 ロートアイアンはその存在感を高めています。ロートアイアンのメリットは、一品製作によるオリジナル性と高級感がある点です。デメリットは、どうしてもコストがかかってしまい、価格の面でなかなか手が出なくなってしまう点だと思います」

定番の形なら施工費用は100万円前後

ーでは、ロートアイアンで門扉を施工すると、ズバリいくらかかるのでしょうか?

「一般的な両開き門扉サイズ(幅1,600×高さ2,000cm)、柱2本、シリンダー錠セットで88万円程度です。取付費は別途頂いています。私どもでは自社工場製作を特徴にしており、納期は図面決定後3週間でお届けする短納期を売りにしてきましたが、最近は注文に対して生産が追い付かず、4~6週間程度頂くケースが多くなっておりご迷惑をおかけしている現況です」

桜井さんによれば、総費用およそ100万円でロートアイアンの扉が設置できるそうです。

両開きのロートアイアンの門扉の一例がこちら。門扉の他に、ロートアイアンのフェンスを加えて統一感を出している。
両開きのロートアイアンの門扉の一例がこちら。門扉の他に、ロートアイアンのフェンスを加えて統一感を出している。

ー実際に鉄の門扉を自宅に取り入れる場合にすべきメンテナンスはあるのでしょうか? また、維持にかかる費用があれば教えて下さい。

「特に維持費用は発生しませんが、JIS規格のデータによると都市部で62年、田園地帯で113年、海岸地帯で25年の耐腐食性というデータがあり、塗装部分の経年劣化がおきます。しかし、サビ等のメンテナンスは必要ありません。ちなみに、当社の外部仕様のアイアン門扉は防錆処理をしており、耐久性にも優れています。維持費用としてかかる電気代ですが、店舗などの自動ドアの1000回の開閉で77円程度。電動門扉もモーターでの開閉なので、月に100回開閉しても100円くらいだと思われます」

メンテナンスはほとんど不要、維持費もそこまでかからないのですね!

駐車スペースには、リモコン式の電動の扉がオススメ

ー門扉には、電動と手動があるようですが、それぞれの特徴を教えてください。

「電動門扉には『スライド式』と『スイング式』の2種類あり、主にリモコンで操作し、車の開閉門扉として採用されます。手動式は、一般的に人の出入りのために使われます。その場合、住宅用の手動式、タッチパネルやカードキーで開閉する電気錠、共同マンションでは自動で閉まるドアチェックやクローザーなど特注ならではの細かな対応もしています。国内生産のものなら、アフターメンテナンスも安心ですよ」

電動門扉ならリモコンで車中からでも開閉できる
電動門扉ならリモコンで車中からでも開閉できる

最後に、桜井さんに実際にロートアイアンの門扉を設置した方の感想を教えていただきました。

「一般の住宅で使っている方からは、本物のロートアイアンは地域にあったデザインで景観の一部として溶け込むので、近所の方や通りかかった人にも印象が良いと評判です。夜にはライトアップ演出している方もいらっしゃいます」

欧米ではよく見られる「門扉」。日本ではまだ一般的ではありませんが、今回伺ってきたようにお値段もそこまで高価なわけではないので、設置を検討してみるのもいいかもしれません。

門扉の設置が難しい場合でも、フェンスや柵、手すりなどの一部分にロートアイアンを取り入れることもできるので、ヨーロッパ風のインテリアが好きな方はそちらをチェックしてみてくださいね。

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この記事の執筆者
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WRITING :
長祖久美子
EDIT :
青山 梓(東京通信社)