ヨーロッパのとある高級保養地、そこで一番の由緒あるホテルは、どこからも簡単には人を受け入れない“美しい近寄り難さ”をたたえていた。がらんとしたティールームには、5、6人の初老のご婦人たち…。なんだかしばらく見惚れてしまったのは、そのエリアだけが白いオーラで包まれていたから。穏やかなのに凛とした空気に、ただならぬものを感じたからである。白い紗がかかったように、透明なのに白っぽい空気感。言うまでもなくそれこそが、上流マダムの醸し出す“特別な空気”なのは間違いないが、でもその正体、一体何なのだろうと考えた。
肌色の質…おそらくはそれ。確かに上流マダムたちは、信じられないほど豊かな白髪に、半端ではない手間をかけているが、でもそれだけじゃない。上流の白肌は、白の色合いと放つ光の質がまったく違うのだ。少なくとも、上流のお手入れを積み重ねてきた結果なのは明らかだった。
そもそも美容は、ヨーロッパの宮廷貴族の間で発展してきたもので、手間の質と量はそっくり肌色に現れ出るからこそ、貴族たちは肌をおしろいで真っ白にして、その“地位”を形にしたのだろう。
今でこそ、“白肌願望”は日本人及びアジア人のものとなっているが、かつてはヨーロッパ貴族のものだったと考えてもいい。しかも、恋愛が一つの仕事のような当時の貴婦人たちには、赤い口紅や黒いホクロが映える純白の肌が不可欠だった。濁りなく、淀みなく、“清らかなのに艶めかしい白さ”がどうしても必要だったのだ。
そう、白い肌はなんだか艶めかしい。
肌の白さは、長い睫毛のように“女であることの象徴”で、触れられることを望んでいるよう。まさに、絞ったウエストくびれと、ドレスの襟ぐりから溢れ落ちそうな“胸の膨らみ”とともに、貴婦人たちにとっては、性的魅力の「三種の神器」だったのだろう。だから、ヨーロッパの上流マダムの肌には、そうした白さのDNAが今も息づいているのではないか。
ともかくそんなことを思い起こさせるほど、マダムたちの白肌は、美しいだけじゃない、艶めかしくもあったのだ。
ただ白いだけじゃない、“上等な女”の存在感を一目で思い知らせる白さの奥行き。それは、木綿の白でもレーヨンの白でもなく、めったに市場に出回らない、厚手のシルクの白。ぬめり感さえ孕んだ、なめらかな輝きがただならぬ存在感を放ち、その肌の白さだけで人々が道を開けるような、そしてその人を包む空気そのものが目に見えるような、特別な白肌。そこにシワがあっても、たるみがあっても、そんなものは取るに足らないことにしてしまう、肌色の質…。
例えば高級ブティックに入ると、隅でひっそりとハンガーに吊るされているだけのシンプルな服も、素材が上等というだけで目を奪うけれど、同じような差がそこにはあるのだ。
ふと、外資系トップブランドの美白が自然に築きあげている“ひとつ上のカテゴリー”が存在することに気づいた。そうか、外資の美白は、おそらくそこを目指しているのだ。言ってみれば貴族的な白を。
美白と言う概念は、確かに日本で生まれ、日本で進化を遂げたもの。言わば“色の白いは七難隠す国”から生まれたわけだけれど、日本で美白が生まれた時代、欧米では“ゴージャスなブラウン”に磨き上げることが“上流の証”になっていて、美白が生まれる余地はなかった。
でもそれ以前に、ヨーロッパには白さの質を問う文化があったからこそ、ラグジュアリーブランドの美白は、一般の美白市場にはない、艶めかしいほど魅惑的で、ときにはモードの一部になる洗練された白さへのこだわりが、とりわけ強いのである。
奇しくも今、美白は白さの質で選ぶ時代。一体何をもって“ひとつ上のカテゴリー”と言えるのか、それをどうか見逃さないで。「女はなぜ白くなりたいのか?」も。近寄りがたいのに、触れてみたくなるほどの“特別な白さ”をまとえたら、理想である。
美白の概念を変えた、上質な白肌に導く珠玉の名クリーム
外資系トップブランドの美白が、ある種“特別な使命感”を持ち始めるきっかけとなったのがこの一品。美白効果もさることながら、上質な白をつくるためのサイエンスがすべて盛り込まれた濃厚な白のクリームは、美白の概念も変えてしまった。
きれいな血色がふんわり湧き上がる、真珠のような色っぽい艶肌に
肌を白くする最古のクリームを作ったと言われる“ゲラン”は、振り返ればつねに“貴族的な白肌”を追い求めてきた。“真珠のなめらかな輝き”をテーマに、白さをていねいにつくっていく本気が日々伝わる一品は、もう美白美容液のスケールを超えている。
発想とテクニックが冴える美白ローションは、クチュールブランドならではの逸品
睡眠ホルモンに着目して“シミを眠らせる”という発想とテクニックが冴える“イヴ・サンローラン・ボーテ”の美白は、同時に、白いドレスを着ても負けてしまうことはない。それどころか、艶めかしいほどの“上質にして洗練された白肌”へと磨き上げていく、クチュールブランドだけのこだわりが素晴らしい。
問い合わせ先
- シャネル(香水・化粧品) TEL : 0120-525-519
- ゲラン TEL : 0120-140-677
- イヴ・サンローラン・ボーテ TEL : 03-6911-8563
- TEXT :
- 齋藤 薫さん 美容ジャーナリスト
- クレジット :
- 撮影/戸田嘉昭・宗髙聡子(パイルドライバー) 文/齋藤 薫 構成/渋谷香菜子