【「モロッコ暮らし」を選んだ人の物語】新たな生き方を求めて旅慣れたキャリアが選んだのは異国情緒あふれるこの場所!

エキゾチックな街の喧騒と混沌、そしてダイナミックな色彩と、雄大な自然の王国。北アフリカに位置し、西は大西洋、北は地中海に面するモロッコは、ジブラルタル海峡を渡ればスペインというロケーションともあいまって、ヨーロッパとアラブの雰囲気が漂う魅惑の国です。

そんな独自の文化をもつモロッコに魅せられ、移住、二拠点、別荘と、それぞれの暮らしを楽しむ方々を取材。仕事とプライベートのバランス、人生との向き合い方など…海と空、色と風…モロッコに恋した人たちの物語です。

【美しいひとの美しい部屋】イザベル・トッポリーナさん(デザイナー・ファウンダー)の色とアンティークの家

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マラケシュ郊外の家で暮らすイザベルさんのテーマは「色」。ビビッドな黄色い壁が印象的なダイニング。

現在、イザベルさんが住む家は1920年に建てられた邸宅。大理石の床や室内の飾り窓、ドアなどは購入時のまま。家具はすべてアンティーク。アンティークショップや古物商、蚤の市でひと目惚れした大切な家具や道具だけを置いている。

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プールサイドにはグリーン×白のストライプのチェアを配して。
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ビビッドな黄色い壁が印象的なダイニング(上)から続くテラスにはピンクのガーデンチェアが。
イザベル・トッポリーナさん
デザイナー・ファウンダー
(Isabelle Topolina)パリ郊外ヴァンセンヌ生まれ。モロッコの色や柄に魅せられ移住。50歳で洋服ブランド『Topolina』を立ち上げる。シンプルなデザインながら、ダイナミックな色や柄使いが特徴的で、フランスの洗練が漂うコレクションが人気。現在、マラケシュに2店舗を構える。@topolinashop

「モロッコの強い日差しに映えるエネルギッシュな “色” 。ビビッドな色はパワフルで、クリエイティビティを刺激してくれます」 (イザベル・トッポリーナさん)

マラケシュのメディナ(旧市街地)から車で20分ほど。一歩足を踏み入れると、いかにもモロッコらしい色鮮やかな空間が広がります。色のパワーは浴びつつも、どこか心地よいこの家に住むのは、ファッションデザイナーのイザベル・トッポリーナさん。パリ郊外のヴァンセンヌに生まれ、国立芸術大学を卒業後、結婚。レストランを経営する夫が店を構えたのを機に、ノルマンディのドーヴィルに隣接する高級別荘地トゥルーヴィルへ引っ越します。その後、マラケシュへ移住。北モロッコの港町タンジェでの暮らしを経て、5年前、再びマラケシュ郊外にある今の家へ。その間、離婚を経て、専業主婦だったイザベルさんは、50歳で洋服のブランドを立ち上げます。

「バカンスでたびたび訪れていたモロッコの “色” は強烈でした。民族衣装、タペストリーやリネンなどの織物、建物外壁の色、ブーゲンビリアの鮮やかなピンク、 日が沈む直前の青のグラデーション…。フランスと違ってモロッコの色は圧倒的にシンプルでビビッド、インパクトが強い。そのエネルギッシュさは、この国の強い日差しに美しく映えます。街に溢れるパワフルな色彩は、クリエイティビティを刺激してくれます」

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鮮やかな黄色の壁が目を引くリビングは、イザベルさんのお気に入りの場所。テーブルや椅子など家具はすべてアンティーク。バンブー素材が好きで、多彩な色や柄を織り混ぜ、洗練されたコロニアル風にまとめている。毎週必ず市場で買う色鮮やかな花でも、色を重ねている。


最初に暮らしたマラケシュの家は典型的なモロッカン様式の邸宅。間口が狭く窓が小さくて、奥行きのある構造で、遮光が目的の建物でした。

「今の家は、モロッコの日差しや暑ささえ楽しめるような開放的なつくり。オープンで自然豊か、クリエイティブでとてもリラックスできる構造です。ひと目見て気に入り、即決しました。建築家だった前の住人のリノベーションをそのまま生かして、改装はせず、室内の壁だけ、好きな色に塗り分けました」

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リビングの一角。ソファでくつろぐのは愛犬のシューペット。

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「クッションやリネンなど暮らしのなかに色や柄を取り入れてみて。家中が鮮やかにいきいきと輝きます」 (イザベル・トッポリーナさん)

ファッションデザイナーという仕事柄、暮らしの中で光と色は欠かせない、とイザベルさんは話します。

「真っ白な壁なんて絶対にイヤ(笑)。大好きなローズピンクやオレンジ、イエローにミントグリーンなど、部屋ごとに壁の色を変えました。また、新しい家具を置かないというのも私のこだわりです。ミッドセンチュリースタイル、バンブーを使ったコロニアル風、モロッコの伝統的な家具、1930年代のアールデコ調など、すべてアンティーク。異なる背景や時代、様式を思うままに配置していますが、なんとなくまとまりが出て気に入っています」

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寝室の壁は大好きなローズピンク。インドで購入した黒がベースのベッドカバー。
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1900年代初頭のアンティークの鏡台、締め色のラグがアクセントに。

インドやアフリカ、アジアなどを旅して目にした景色や、滞在したホテルのインテリア、異国の人々の暮らしや着こなし。すべてが彼女のインスピレーションの源だとか。

「大がかりなリノベーションや家具を買い替えるのは大変ですが、暮らしのなかに色を添えることは簡単です。まずは好きな花や季節のフルーツをお気に入りの器に入れて飾ってみる。ベッドカバーやクッション、ラグ、キッチンリネンなど、ファブリックで色や柄を遊んでみる…。いきいきとした色彩をぜひ暮らしに取り入れてみて」とイザベルさん。

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現在はブランドの社長を引き継ぐ長男のピエール・アンリさんと。こちらのテラスは主寝室から通じるイザベルさんのお気に入りの場所。
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テラスへ続く通路の壁は植物の色が映えるテラコッタ色に。

「私は50歳で自分のブランドを立ち上げましたが、色のパワーが後押ししてくれた気もします。経験値やマーケティングなどにとらわれずに、自分の感性に素直に従い、感じたままの表現を楽しんでいます。インテリアでも、人生の選択でも、迷ったらやってみること。やらずに後悔するのは私らしくありません。楽しみながら、美しくユニークなものを生み出したいと思っています」

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ゲストルームの壁はライトグレー。’60年代の花柄×グリーンのヴィンテージ生地でソファを張り替えた。
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ゲストルームのテラスにはフェズ焼きのアンティーク皿を飾って。

最近はモロッコとはまた違う色彩感覚に溢れるインドに夢中。

「人が生きるエネルギーを感じられる国。手作業の美しさにも惹かれます。引っ越しが趣味なので、ビビッときたら、いつでもすぐに大胆に動き回れる軽やかさをもっていたい。どこにいても、自分らしさと、心地よさを追求していきたいです」

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メインエントランス横の廊下の壁はペパーミントグリーンにペイント。マラケシュのギャラリーで購入したモノクロポートレートを帽子と一緒にディスプレイ。センスが光る。
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主寝室とゲストルームを結ぶ廊下。部屋ごとに廊下の壁の色が変わり、各所に柄の違うラグを敷いてゾーニング。
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水色のシャツにストライプのパンツ姿。プールサイドのチェアと調和。
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庭のグリーンの芝に映えるのはピンクのソファ。ここでお茶や読書を楽しむ。

イザベルさんのHouse DATA

●場所…マラケシュ郊外
●広さ…敷地は4500平米、建物は450平米
●間取り…リビング(サロン)、ダイニング、キッチン、ベッドルーム×4、バスルーム×4、テラス×2
●家族構成…長男と愛犬3匹
●住んで何年?…移住して5年

PHOTO :
篠あゆみ
EDIT :
田中美保
取材 :
鈴木ひろこ