【「モロッコ暮らし」を選んだ人の物語】新たな生き方を求めて旅慣れたキャリアが選んだのは異国情緒あふれるこの場所!

エキゾチックな街の喧騒と混沌、そしてダイナミックな色彩と、雄大な自然の王国。北アフリカに位置し、西は大西洋、北は地中海に面するモロッコは、ジブラルタル海峡を渡ればスペインというロケーションともあいまって、ヨーロッパとアラブの雰囲気が漂う魅惑の国です。

そんな独自の文化をもつモロッコに魅せられ、移住、二拠点、別荘と、それぞれの暮らしを楽しむ方々を取材。仕事とプライベートのバランス、人生との向き合い方など…海と空、色と風…モロッコに恋した人たちの物語です。

【美しいひとの美しい部屋】アリアンヌ・ジュランさん(アンティークアートディーラー )の光と風の家

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白にこだわった開放的なリビング
別荘_1
海の街・エッサウィラから少し離れた地に別荘を購入したのはアリアンヌさん
アリアンヌ・ジュランさん
アンティークアートディーラー
(Ariane GERIN)ベルギーでアンティークとアートのディーラーとして活躍中。拠点はベルギーのブリュッセル。2023年4月、運命の出会いを経て、モロッコのエッサウィラにほど近い地に別荘を購入。2、3か月に一度の割合で別荘でのバカンスを楽しんでいる。

「家にいながら光と風を感じる、くつろぎと癒やしの場所。この家では完全に “スイッチ・オフ” で過ごします」(アリアンヌ・ジュランさん)

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明るく真っ白な空間に、自然素材を使った優しい風合いの家具やファブリックが心地いい。主役はリビングのサイズに合わせてオーダーメイドし、壁に沿って配した低めのソファ。中央に広めのスペースを残し、ゲストと共に床に座るようなイメージで食事をするのがモロッコ流のもてなし。その文化を残しつつ、インテリアはあえて白を基調に洗練のヨーロピアンテイストに仕上げた。


「友人がこの地に別荘をもっていたんです。ツーリストもいない静かでおおらかな環境に惹かれ、訪れるたびに、モロッコで家を探すならここがいいと思っていました」

大西洋に面する白と青の港町、エッサウィラから車で20分ほどの自然豊かな場所。ベルギーのブリュッセルを拠点に、アンティークアートディーラーとして働くアリアンヌ・ジュランさんがこの地に家を購入したのは運命の出会いがきっかけでした。

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ダイニングには、テーブルと椅子を設置。シェフでもあるジャンさんの手料理とワインで、光と風を感じながら、くつろぎの時間を過ごすふたり。

「3年前、いつものように訪れた友人宅のディナーで今のパートナー、ジャンと出会い、この土地の魅力について語り合ううちに意気投合。その後、彼と恋に落ち、一緒に物件を探すことに。友人から紹介されたこの家は、代々受け継がれてきた昔ながらの農家の住宅。ふたりとも、ひと目見てすぐに気に入りました。2023年4月に購入し、全面リノベーション。コロナ禍もあって、材料不足などで結局1年半ほどかかりましたが、モロッコのスピードを考えると想定内(笑)。むしろ早く完成したほうかもしれません。ともかく、憧れの地でパートナーと家を手に入れるなんて、想像もしませんでした」

家づくりのテーマは「メゾン・ド・バカンス」。ブリュッセルから飛行機で3時間ほどのこの家に求めたのは癒やしとくつろぎでした。

「ブリュッセルの都会の喧騒を離れて、ここに滞在するときには心も体もリラックスしたい。その思いはふたりとも同じ。窓を大きく設計し、ガラス張りのドアをつけるなど、モロッコの風が家中を吹き抜けるような開放感を大切にしました。 通常、モロッコの建築は遮光のために窓は小さく、外から中が見えないようなつくりが多いのですが、この家は、あえて光と風を取り入れる設計に。モロッコでは、完全に仕事モードをオフにして過ごしています」

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フラットな庭とプール、真っ白い建物。ふたりの好みは「セレニテ=静かな癒やしの空間」。プールの壁には、「物語と伝説が絡み合った運命の庭をわたしは強く誇らしい手で守り、優しく繊細に世話をする」と、ジャンさんのポエムが書かれている。ロマンティック!

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庭からテラスへ続く階段。ブルーの窓枠の部屋はゲストルーム。
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シックな緑色が特徴のタムグルートの花器や燭台もオブジェに。

「大好きな人たちと食卓を囲み、地元の食材を使った料理と会話を楽しむ。夜は静かに星を眺めてリラックス。明日もまた頑張ろうと思えるんです」(アリアンヌ・ジュランさん)

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寝室の籐の椅子は、70年代のコロニアルスタイル。

この家でのふたりのお気に入りの場所は、寝室。リビング同様、真っ白い空間に、庭へと続く大きなガラスの扉、風に揺れる薄いコットンのカーテンと虫除けの天蓋、ふわりと包み込まれるようなベッドリネン…。

「ここでシエスタをしたり、読書をしたり。夜は庭にたくさんのキャンドルを灯して幻想的な雰囲気に。家の中にいながら外とつながっているような感覚になります。風を感じながらぼんやりしていると、ふっと仕事のイメージが湧くことも。心身共にリラックスしているとクリエイティブなアイディアが湧くものだね、とふたりで話しています」

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寝室にあるカラフルな飾り棚は、エッサウィラのアンティークギャラリーでひと目惚れ。
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寝室からゲストルームへ続く扉は、ブルーに塗り替えて。

インテリアのテーマは「Dar les Voiles =ダール・レ・ヴォワル」。モロッコの言葉で風の家という意味。随所に風を感じる家のデザインや家具選びはアリアンヌさん、キッチンはジャンさんが主に担当。モロッコの伝統的な暮らしにインスピレーションを受け、大切に受け継がれてきたアイテムを配しています。

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天窓から光が降り注ぐ明るいキッチン。

「モロッコは職人の街です。原住民族ベルベル人が織るカラフルな織物でつくられたクッションや、モロッコ伝統のムートンのラグ、 “Feu Beldi” と呼ばれる暖炉、400年もの歴史をもつモロッコの陶器・タムグルートの器など、白がベースのニュートラルな空間に、モロッコの職人の手仕事が光るオブジェを合わせました。また、素材は木やコットン、石など天然素材にこだわり、モロッコの明るい光が映える、シンプルで優しい美しさを追求しました。時間を見つけてはモロッコ中のアトリエやお店を訪れ、インテリアの着想を得ています。値段や流行にとらわれず、自分で足を運び、実際に見て感じた直感を大切にしています。これは仕事にも通じる私の哲学といえるかもしれませんね」

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白いテラスにはモロッカンファブリックが映える。「星空を眺めながらここで食後酒を飲むのが至福のとき!」。
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庭の一角にあるシャワーコーナー。

仕事があるブリュッセルの住まいは、ライフスタイルの「動」。対するモロッコの家は完全にスイッチをオフできる「静」の場所。このふたつの家を行き来しながら、バランスを保っている今が理想の暮らし、とアリアンヌさん。

「地元の食材を使った料理が並ぶ食卓を大好きな人たちと囲み、会話を楽しむ。夜は静かに星を眺めながらゆっくり過ごす。光、風、星、月、鳥の声、山羊の鳴き声…。自然に五感をゆだね、癒やされることで、明日も頑張ろうと思えるんです」

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ガーデンテーブルは、モロッコの伝統的な陶器タムグルートのタイルが天板に。

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料理は主にジャンさんが担当。滞在中は、エッサウィラ近くの市場に通い、新鮮な魚介や野菜を調達。スイカとシェーブル(山羊のチーズ)のサラダ、ナスのポワレ、にんじんとコリアンダーのサラダなど、ジャンさんのヘルシーで色鮮やかな料理が並ぶ。


アリアンヌさんのHouse DATA

●場所…エッサウィラから車で約20分
●広さ…敷地は300平米、建物は140平米
●間取り…リビング、ダイニング、キッチン、ベッドルーム×3、バスルーム×3、トイレ×3、ルーフトップテラス
●家族構成…パートナーと愛犬
●住んで何年?…約8か月

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PHOTO :
篠あゆみ
EDIT :
田中美保
取材 :
鈴木ひろこ