「仇討ち」ってなんと読む?ケースバイケースかも・・・?

『忠臣蔵』で有名な赤穂浪士の討ち入りの日と言えば、年末の12月14日…というのが常識ですが、当時の旧暦を現在の新暦に変換して考えると、明日、1月30日がその日にあたるそうです。今風に言い換えると「上級国民のパワハラで非業の死に至らしめられた主君の無念を、長く周到な準備の上、部下たちが見事はした」となりそうな赤穂四十七士のエピソードは、歌舞伎や浄瑠璃を経て、映画や度玉などのエンタテイメントのモチーフともなり、長い間、日本人の心をつかんできました。…というところで、本日1問目のクイズです。

【問題1】「仇討ち」ってなんと読む?

「仇討ち」という日本語の正しい読み方を、すべてお答えください。

ヒント:「主君・親兄弟などを殺したものを討ち取って怨みを晴らすこと」「仕返しをすること」などの意味を持つ言葉です。

<使用例>

「赤穂四十七士の仇討ちの物語は、小説でも読んだことがあるわ」

「仇」の読みかた、いくつあてはまる?
「仇」の読み方、いくつあてはまる?

…さて、正解は?

※「?」画像をスクロールすると、正解が出てまいります。

正解は↓に‼
正解は↓に‼

正解は… 仇討ち(あだう-ち/かたきう-ち) です。

どちらで読んでも意味が通じます。
どちらで読んでも意味が通じます。

「仇」の訓読みには「あだ」「かたき」「つれあい」があり、「仇討ち」という言葉では「あだ」「かたき」のどちらで読んでも意味が通りますし、言葉の意味も同じです。武士の歴史や、それにまつわるエンタテイメント作品などをよくご存知の方は、一般に「あだうち」と読むことが多いですが、現代、多くの人に意味がわかるように読もうとすると「かたきうち」が適切かもしれません。

さて、2問目は、同じく読み方に迷う熟語のクイズです。

【問題2】「判官贔屓」ってなんと読む?

「弱者・敗者に同情し声援する感情」をいう「判官贔屓」という日本語の読み方として正しいものを、以下の選択肢の中から選んでください。

1:「ほうがんびいき」とだけ読む

2:「はんがんびいき」とだけ読む

3:1、2のどちらで読んでもよい

「はんがん」「ほうがん」どちらも耳にする気がしますよね?
「はんがん」「ほうがん」どちらも耳にする気がしますよね?

…さて、正解は?

※「?」画像をスクロールすると、正解が出てまいります。

正解は↓に!
正解は↓に!

正解は… 3:1、2のどちらで読んでもよい です。

詳細は解説をお読みください。

「日本人は昔から判官贔屓(ほうがんびいき/はんがんびいき)だから…」という言い回し、みなさま一度は聞いたことがあるのでは? これは「日本人は弱者・敗者に肩入れしたがる向きが強い」という意味ですが、「判官贔屓」という熟語に入っている「判官(ほうがん/はんがん)」は、平安時代の武将・源義経(みなもとのよしつね)を指しています。「判官(ほうがん/はんがん)」は、義経の「武士の役職名」でした。

源義経といえば幼少期は牛若丸と呼ばれ、武蔵坊弁慶を家来にしたエピソードなども有名な人気の智将です。しかしその人気がゆえに、兄の頼朝に疎まれ、策略にはめられて非業の死を遂げています。こうした義経のドラマティックなエピソードは、有名な『勧進帳(かんじんちょう)』ほか歌舞伎や浄瑠璃の題材となり、総じて「判官物(ほうがんもの)」と呼ばれ、長く広く親しまれています。ここからできた言い回しが「判官贔屓(ほうがんびいき/はんがんびいき)=(のちに鎌倉幕府を開く強者の兄・頼朝に対して)義経のような弱者・敗者を愛し、肩入れする嗜好」なのです。

さて、改めて「判官」という言葉にフォーカスします。「判官」は「武士の役職名」という意味では主に「ほうがん」と読みますが、これはもとは「はんがん」が音変化したもので、「はんがん」も不正解ではありません。
ですので、「判官贔屓」の読み方は「ほうがんびいき」が一般的ながら、「はんがんびいき」でも不正解ではありません。

更に…ややこしくなりますが「判官(はんがん)=裁判官」という意味の言葉もございます。歌舞伎や浄瑠璃の演目に登場する有名な裁判官に「小栗判官(おぐりはんがん)」もおり、これは義経とはもちろん別人で、義経の演目を「ほうがんもの」と呼ぶのに対し、「裁判官」の登場する演目は「はんがんもの」と呼ばれます。

まとめますと…

・「判官贔屓」の読み方は「ほうがんびいき/はんがんびいき」どちらでも正解だが、「ほうがんびいき」のほうがポピュラー

・「判官贔屓」のもとになった源義経を扱った歌舞伎や浄瑠璃の演目の呼び方は「判官物(ほうがんもの)」で、この場合の「判官(ほうがん)(一般的には「はんがん」とも読む)」は「武士の役職名」

・歌舞伎や浄瑠璃の演目で「判官物(はんがんもの)」とよばれるのは「裁判官」の登場人物を主としたもの

…という形です。日本の伝統文化に関連した、比較的よく使われる言い回しですので、覚えておくと無難です。

*** 

本日は、読み方に迷う、和文化に関連した日本語をピックアップし、

・仇討ち(あだう-ち)(かたきう-ち)

・判官贔屓(ほうがんびいき/はんがんびいき)

など、複数の読み方がある言葉と、その言葉の背景についておさらいいたしました。

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Precious.jp編集部 
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参考資料:『日本大百科全書(ニッポニカ)』『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』(小学館)/NHK放送文化研究所ホームページ/歌舞伎用語案内ホームページ/『漢字ペディア』(日本漢字能力検定協会)
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小出 真朱