フォレ ル パージュの前身は、3世紀にわたって鉄砲や拳銃、弾薬、剣といった武器、そして甲冑などを製造していたフランスの鉄砲工です。
「鉄砲工とは作品を構想し、職人の手を導く芸術家である」とは、3代ジャン・ル・パージュの言葉。創業時よりヨーロッパじゅうの王侯貴族、ルイ15世以降の国王と皇帝、そしてフランス全土の君主たちの寵愛を受け、ルイ16世のために作製された精好な彫刻がある猟銃は、パリ・マレ地区にある狩猟自然博物館に。
現代紳士のアイコンバッグ「フォレルパージュ」
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シルバーにゴールドで厚くコーティングを施した、ヴェルメイユ(メッキ)によるナポレオンのサーベルと、ナポリ王ヨアヒム・ミュラの瑪瑙とマザー・オブ・パールがセットされたソード(両刃の剣)は今、マルメゾン城美術館に所蔵展示。また、7代にわたるル パージュの当主より王侯貴族に献上された美麗な武器のいくつかは、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館やメトロポリタン美術館でも見学できるそうです。ビジネスをクラスアップさせる名品バッグ
鉄砲師、錬鉄師、鋳造職人、溶接職人、錠前職人、研磨師、彫刻家、塑造職人、鋳型職人、彫金師、象嵌職人、金箔師、馬具職人、ケース職人、皮革職人、金銀細工師、宝飾技術者らの才能を統括し生産される逸品は、王侯貴族だけのものではありません。
1789年に勃発したフランス革命、1830年のフランス7月革命において、ル パージュの当主は革命軍へありとあらゆる種類の武器や弾薬を配布。芸術家として自由のために闘う市民を支持しました。
フランソワ=ルネ・シャトーブリアン、オノレ・ド・バルザック、アレクサンドル・デュマといった作家たちは、自著にル パージュの名を挙げて賞賛しました。
19世紀のフランス文学の隆盛は、革命によりもたらされた自由の高まりに起因するといいます。芸術は自由の味方。ジェン=ピエール・ウーエルの絵画『バスティーユ襲撃』に描かれている革命軍が手にする銃も、ウジェーヌ・ドラクロアによる『民衆を導く自由の女神』の中央の女性、少年、シルクハットの男が持つそれらもル パージュ製なのだろう、と想像をめぐらしてしまいます。
1925年、フォレ ル パージュの名で会社組織に改組。約10年前まで狩猟用の銃は製造していましたが、現在ではケース、バッグに特化したメゾンに。創業時より革細工の技術も心得ており、納品の際に付属品として必要であったことからケースやバッグにかんしてもオーソリティ。バッグは武器を収納し、弾薬や食糧に獲物、ブーツなどの備品を持ち運ぶ役割がありますから。
レザーコレクションはベルトにつける弾薬用ポーチ、大小の雑囊、バケツ型の弾薬入れから派生した使い勝手のよいものがメイン。少し蠱惑的な甲冑のエカイユ(うろこ)モチーフををキャンバス地にプリントし、コーティングした素材は軽量で丈夫なうえに防水性もあります。メゾンの狩猟用革製品に使われてきたもので、フォレ ル パージュ300年の歴史、その延長線上にある逸品なのでした。文・大住憲生(ファッションディレクター)
※価格はすべて税抜です。※2017年春号掲載時の情報です。
- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
- BY :
- MEN'S Precious2017年春号 フランス貴族の魂を継承したフォレル パージュ伝説より
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- クレジット :
- 撮影/小池紀行(パイルドライバー) スタイリスト/武内雅英(code)構成/山下英介