クルマは、自分らしくあるために欠かせないパートナー。移動手段として欠かせない機能に加え、オーナーの美意識に応えるファッション性を備え、意図する通りに反応する運動性能があればいうことなし。そんな大人の女性の欲求に応えてくれるのは、ものづくりの長い歴史を誇り、ラグジュアリーなライフスタイルを知り尽くした自動車ブランドのハイエンドモデルです。今回紹介するアストンマーティンは、その代表格。ブランドを代表する、ひときわ華やかなコンバーチブル(オープンカー)を紹介します。
英国の品格を今に伝える名門ブランド

スポーツカーは、軽さを生かした俊敏な乗り味が特徴。それにさらなる実用性を持たせたのがGTで、必要十分な荷物を積んで長距離を走る旅=グランドツーリング(GT)にも対応することからそう呼ばれています。1913年に創業したアストンマーティンは、好奇心にあふれ、遠く離れた地での文化や人とのつながりを大切にする富裕層の欲求に応える、高性能なGTを世に送り出してきました。自動車好きのコレクターの間でもファンは多く、クラシックカーとなった歴代モデルのほとんどが現存するともいわれています。
自国の文化への誇りにかけては随一の英国でも、アストンマーティンを所有することは名誉あることとされ、英国秘密情報部所属のスパイが活躍する『007』シリーズの映画版第3作『ゴールドフィンガー』(1964年)では、主人公が乗る“ボンドカー”としてアストンマーティンの『DB5』が登場し、同シリーズのアイコンのひとつとなりました。
近年は多様化するライフスタイルに対応したSUV(スポーツ多目的車)タイプの『DBX』も登場。エンターテインメント界の若きファッショニスタにも支持されています。
その姿は、まるで優美な小型クルーザー

写真の『DB12ヴォランテ』は、後席付きのGTにして幌式の屋根を備えたオープンモデル。ウエスト部分(ドアのあたり)を絞り、大きなタイヤの周りがぐっと張り出したグラマラスなデザインが目を引きます。特に後ろ斜めからの眺めは絶品で、流れるようなボディ後端のデザインは、幌を開けたときに見えるインテリア込みで、優美な小型クルーザーのよう。大きく口を開けた(ように見える)顔つきも威圧感はないどころか、伝統的なデザインをモダンにアレンジすることで生まれる品格が、このGTの正統性を物語ります。


そして内装。張りのあるレザーと表情豊かなウッドをふんだんに使い、細部のステッチに至るまで精緻につくられた内部空間がもたらす悦楽は、身を預けた瞬間から始まります。ほどよくタイトで、されど窮屈さとは無縁のラウンジ。椅子の文化が長い英国で、馬車から自動車へと変遷するなかで一貫して守られてきた、ミニマルで格調高いデザインと最高の素材がもたらす特別な時間は、乗り手に日々の雑念を忘れさせるほどの活力をもたらし、積極的にハンドルを握る気にさせてくれるのです。

乗り手と一体化する自然な運転感覚

『DB12ヴォランテ』の魅力は、走りだせばより濃厚に。始動時点から低くうなるエンジンは、アクセルペダルを深く踏み込まなくても力強く前に進むエネルギーを生み出します。お尻から背中、腿と腰回りをしっかりと支えるシートは、服を通してレザーの質感が伝わってくるほどのしなやかさ。やはりレザーで丁寧につくりこまれたハンドルを優しく握り、曲がりたい方向の手(左折なら右手)を前に押し付けるようにすると、すーっと車体が向きを変え、後ろ脚(後輪)が押し出すように走ります。この自然な動きは、スポーツカーづくりに長けたアストンマーティンの奥深さを象徴するものです。よくできたスポーツカーは乗り手に無理な操作や体勢を強いることがなく、それはつまり「美しい所作」として現れるのです。

私たちは高度な運転技術を体得したスパイではないので、『DB12ヴォランテ』の圧倒的な性能を解き放つ必要に迫られることはありませんが、レース場を果敢に走れる頼もしさを内に秘めていると知るだけで、ドライブが俄然楽しくなります。
金曜の遅くまで仕事に没頭し、熟睡したあとの土曜日は、朝からエクササイズをしたり、おでかけの支度をしたりと忙しいもの。そこにドライブの予定を入れるだけで、リュクスな週末が広がります。髪をまとめて幌を開け、足つきのいいスニーカーをはいて朝の大通りへ。まだ空いている街の美しさを楽しみながら、クルージングを楽しんで。

もちろん、GTの資質を備えた『DB12ヴォランテ』なら、遠出も余裕。宿泊用のバッグやトロリーを荷室に積んで、スプリングコートやハットを後部座席に置くだけで、こなれた旅スタイルが完成するのです。磨き抜かれた英国の正統は、名門ホテルやレストランでのお出迎えでも大いに威力を発揮すること確実です。

【Aston Martin DB12 Volante】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,725×1,980×1,295mm
車両重量:1,898kg
仕様:右・左ハンドル選択可、8速AT
車両本体価格:¥32,900,000(税込み)
問い合わせ先
- TEXT :
- 櫻井 香さん ライフスタイルエディター
- PHOTO :
- 櫻井 香、Aston Martin Lagonda