【目次】

【絵本の日とは?──なぜ11月30日なのか】

■「目的」は?

絵本の魅力や、絵本がもつ多様な役割を広く社会に伝え、絵本を通してこどもたちの想像力や感性、言語力などを育むことを目的としています。

なぜ11月30日

瀬田貞二が著した『絵本論』(福音館書店)の初版が発行された1985年11月30日にちなんで、この日に制定されました。

■『絵本論』って?

瀬田貞二は、昭和期に活躍した児童文学者であり評論家、絵本作家です。映画にもなって大ヒットした『ナルニア国物語』や『ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)』の翻訳者としても有名ですね。彼が「絵本とは何か」「“子どもに本を読むとはどういうことか」など、日本の絵本に関する基本的な考え方を提示し、 その後の日本の絵本文化に大きな影響を与えた本が『絵本論』なのです。

■「誰が」決めた?

「絵本の日」は、福岡県福岡市などでこどもの歯科医院を運営する「医療法人 元気が湧く」が開設した、絵本と図鑑の民間図書館「絵本と図鑑の親子ライブラリー ビブリオ」が制定。一般社団法人日本記念日協会によって認定、登録されています。


【今、大人に絵本が読まれている理由】

「KDDI Research」の調査レポートによれば、日本の出版市場全体は1998年〜2018年の間に、約半分にまで縮小したものの、絵本を中心とする「児童書」は、唯一成長を続け、出版不況の中で数少ない好調ジャンルとなっています。少子化が進むなか、なぜ絵本の売上が伸びているのでしょうか?

答えは、今や「絵本=子どものもの」ではなくなっているから。「大人のための文化の牙城」として2011年に開業した代官山 蔦屋書店でも、絵本の売り上げは好調です。オープン当初はわずかなスペースだった絵本コーナーが、今では1号館2階フロアのかなりの面積を占めています。

■ごくシンプルなストーリーに癒やされる

絵本は本来、子ども向けの本ですから、当然ながらストーリーはごく短くコンパクトでシンプル。読むのに負担がかかりません。しかも、可愛らしい挿絵に癒やされて、心がふわ〜っとほぐされていくような感覚を味わえるのが、何よりの魅力。

■「懐かしい、あの感覚」を取り戻せる

絵本を通じて「ピュアなもの」「素直な感情」のシャワーを浴びることで、少々鈍くなりかけていた感性や感情、想像力がよみがえってくるような感覚が味わえます。

■改めて自分発見! 時間旅行の旅が楽しめる

子どものころに読んだ絵本を改めて眺めていると、「この絵本、好きだったな〜」と、自然に当時の思い出がよみがえってくるもの。「あのころって、こうだったな〜」とノスタルジックな思いにふけったり、改めて「自分の原点」に遭遇したり。

■厳しい現実からしばしの逃避…

大人にとって、日々の生活はストレスフルで「情報過多。常に「スピード」が求められています。一方で絵本は別世界。まったく知らない世界に連れて行ってくれるのも魅力です。

■SNSで絵本の情報をキャッチ!

「絵本ナビ」をはじめ、絵本に関する情報を共有するウェブサイトやレビューサイトを読めば、絵本の新作やトレンド情報が簡単に手に入ります。SNSでも「大人も読むべき絵本」が拡散されるケースも多く、新たな「大人読者層」を広げています。

■実は絵本のつくり手も「大人」を意識している!

絵本市場の成長を受け、出版社や作家などつくり手側も、子ども向けだけでなく“大人の心に響く絵本”を意識的に制作するケースが増えているようです。さらに、絵本はもともと、本の大きさや形、紙の質など表現の幅が広いため、実はクリエーターにとっても魅力的なジャンル。近年ではさまざまな分野のクリエーターたちが絵本をつくるようになっています。


【大人に刺さる絵本の特徴】

「大人目線」で選ぶ、「刺さる絵本」にはどんな特徴があるのでしょう。

■色彩や構図が洗練されていて、アート作品のように楽しめる

■ストーリーはシンプルでも深いメッセージ性が感じられる

■喪失・孤独・旅立ち・生と死など、人生の「普遍的なテーマ」を扱っている

■インテリアに馴染み、センスアップしてくれる装丁


【改めて読みたい大人女性におすすめの絵本】

■『ふたりはともだち』作:アーノルド・ローベル、訳:三木 卓 (文化出版局)

小学校の教科書にも掲載された、子どもから大人まで多くの人たちに40年以上も愛され続けている、アーノルド・ローベルによる名作です。主人公は、仲良しのかえる、がまくんとかえるくん。ふたりの間で繰り広げられるのは、濃くて、おかしくて、ちょっぴり切ない…さまざまな愛すべきエピソードです。

■『おまえ うまそうだな』作・画:宮西 達也(ポプラ社)

舞台はむかしむかしの大昔。山がドドド……と噴火して、アンキロサウルスの赤ちゃんがひとりぼっちに。「お父さん!」としがみついたのは、なんとティラノサウルス。草食恐竜と肉食恐竜の、思いもよらないやり取りが展開されます。親子の絆や愛に、号泣する大人も続出と話題です。

■『100万回生きたねこ』作・画:佐野洋子(講談社) 

「大人の絵本といえば…」との問いに必ず名前が挙がる、佐野洋子さんの名作。シンプルだけど骨太のストーリー、生きるパワーみなぎる絵。何度も語られるのは、「100万回生きたねこ」の、それぞれの人生です。そのひとつひとつに物語があり、愛があり、別れがあり…読むたびに違う気持ちになれる、「りっぱなとらねこ」の、ふしぎな物語です。

■『あさになったので まどをあけますよ』作・画 新井良二(偕成社)

新しい1日を迎えるために窓をあける子どもたち。なにげない日々の繰り返し、そのなかにこそある「生きることの喜び」を描いた絵本です。作者の荒井良二さんは、東日本大震災で被害を受けた東北地方沿岸部の町を訪ねる旅を繰り返し、思いをこめてこの絵本を描き上げたそうです。とても美しい絵から、今日一日を生きるポジティブな力が伝わってきます。2012年、産経児童出版文化賞・大賞含む6つの賞を受賞した作品。

■『ゆうやけにとけていく』作・画 ザ・キャビンカンパニー(小学館)

ページをめくる度に少しずつ沈んでいく太陽が印象的な、静かに噛みしめる雰囲気の絵本です。だんだんと沈みゆく太陽を背景に、ジャングルジムで遊ぶ男の子、悔しくて石を蹴る女の子、買い物帰りの親子など、昭和初期を思わせるような少しノスタルジックな絵が展開されます。楽しいことも嬉しいことも悲しいことも。夕焼けがすべてを優しく包み込み、誰にでも静かな夜がやってきます。

そのほか、心がふっとほぐれると人気なのが、かこさとしさんの『からすのパンやさん』や『だるまちゃんと○○ちゃん』シリーズ、中川李枝子さん作・山脇百合子さん絵の『ぐりとぐら』シリーズも「永遠の宝物」として愛され続けています。

***

シンプルな言葉と絵で紡がれる絵本は、心の深いところにそっと触れ、忘れかけていた感情や記憶、感性を静かに呼び覚ましてくれます。そして、物語が終わっても、その余韻はページを閉じたあとも静かに残り続け、まるで香りのように思考の隙間に漂います。

言葉で多くを語らないからこそ、読む人の人生経験がその物語に意味を与えていく——それが、絵本の持つ豊かさなのかもしれません。情報にあふれ、スピードを求められる日常のなかで、少しだけ立ち止まって、絵本の世界に身をゆだねてみる――。その静けさが、あなたの内側にある「本当の豊かさ」への扉を、そっと開いてくれるかもしれません。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:一般社団法人 日本記念日協会HP(https://www.kinenbi.gr.jp) /医療法人 元気が湧く 絵本と図鑑の親子ライブラリー「ビブリオ」(http://bibliokids.jp) /KDDI Research(https://www.kddi-research.jp/topics/2020/022802.html?utm_source=chatgpt.com) /代官山 蔦屋書店「代官山T-SITE」(https://store.tsite.jp/daikanyama/) /すてきテラス「代官山 蔦屋書店・コンシェルジュがおススメする絵本5選 〜大人のクリスマスプレゼントにも〜」(https://e-suteki.haseko.jp/lifestyle/2022-november-book04.html) 絵本ナビ(https://www.ehonnavi.net) :