1994年、新宿副都心にオープンした「パーク ハイアット 東京」。天然素材を惜しみなく使い、アートピースを配した、まるで美術館のような洗練された内装、さらに超高層階からの煌びやかな夜景は、これまでになかった「ワンランク上のラグジュアリー」として、訪れた人の心を掴んできました。

そんな「パーク ハイアット 東京」は、30周年を迎えるのを機に、全館を改装。1年半余りの月日をかけた新たな装いが、この12月に晴れてお披露目となりました。

ホテル_1,東京_1
新宿パークタワーの39Fから52Fに位置する「パーク ハイアット 東京」。

さらに美食という面でも大きなニュースが。開業以来親しまれてきたブラッセリー「ジランドール」が、フランス料理の巨匠、アラン・デュカスさんとのパートナーシップのもと「ジランドール by アラン デュカス」として新たな一歩を踏み出します。

新生「ジランドール」のキッチンチームを率いるのは、「パーク ハイアット 東京」入社以来18年間ずっと「ジランドール」の厨房に立ち続け、常連ゲストの好みも把握する料理長の堤耕次郎さん。

ホテル_2,東京_2,レストラン_1
「ジランドール by アラン デュカス」料理長の堤耕次郎さんと、アラン・デュカスさん。

堤さんが受け継ぐ「ジランドール」の歴史に、世界で12の星付き店(※)を手掛けるデュカスさんが考える「上質をまとわせた、ラグジュアリー・ブラッセリー」とは何か、来日中のデュカスさんにお話をお聞きしました。

※2025年12月12日現在の情報

──まずは、この新宿、そしてパーク ハイアット 東京という場所について、どのように捉えていらっしゃいますか? フランスでも数々の歴史あるブラッセリーに新しい風を吹き込んでこられましたが、「ジランドール by アラン デュカス」において、東京らしさをどのように取り入れていますか?

まず、この「パーク ハイアット 東京」はシックでエレガント、そして多くの人に愛されてきた、歴史のある場所です。私はその歴史を大切にしながら、今の時代にあった革新を生み出したいと考えています。

ブラッセリーは、毎日食べる料理を提供する場所で、日本人はフランス人と並んで、世界で一番、毎日の食べ物にこだわる人々、日本人を満足させることができたら、世界中の人を満足させることができると思っているほどです。そして東京、特にこの新宿はビジネスマンが行き交う忙しい場所。美味しく、早く、安く、栄養バランスの良い食事ができる。こんな都市はほかにはありません。

同時に、とても競争の激しいマーケットと言うことができるでしょう。さらに、現代の消費者は情報をザッピングして、飽きやすいという特徴があります。そこで大切になるのは、全てにおける正確さ。アラカルトも提供しますから、一杯のワインと一皿の料理という利用の仕方をする人もいるでしょう。それでも、適切な温度のワインと、美味しく、どこか新しさを感じるような料理で驚かせたいと思っています。

──今回、長年デュカスさんのレストランのインテリアを手掛けてきた「ジュアン マンク」が、ホテルの改装にも関わっていて、デュカスさんのラグジュアリーの世界観が体感できるようになっていますね。

レストランでの体験というのは、料理は75%、残りは雰囲気やサービスで、それを全部まとめて「おいしさ」だと思っています。そしてその「おいしさ」を生み出すために、何よりも大切なのは「素材」です。

祖父が大工だったので、木には特にこだわりがあります。これまで以上に柔らかな、くつろげる印象になったのではないかと思います。この度パーク ハイアット 東京の一部のデザインを手掛けた「ジュアン マンク」は、10年以上前から一緒に仕事をする仲で、「ターブル リュミヌーズ(光るテーブル)」も彼らの作品です。

「ジランドール by アラン デュカス」の店内。Park Hyatt Tokyo, Jouin Manku (c)Yongjoon Choi
「ジランドール by アラン デュカス」の店内。Park Hyatt Tokyo, Jouin Manku (c)Yongjoon Choi

メニューも、イタリア産の上質な革にしました。兄弟で鞍を作る職人ですが、卓越した技術が凝縮された極上の仕上がりです。こういった上質なものは、年月を経た50年後でも美しく使うことができるでしょう。メニューの中の紙の質、フォントに至るまでこだわって選び、その全てが「おいしさ」を作るのです。

今の時代、人々はお腹が空いてレストランに来るのではなく、心を満たすためにレストランに来るのだと思っています。目に入るもの、手で触れるもの、そういった全てに上質がある。その感覚の集合体が、五感で感じる「おいしさ」だと思います。

ホテル_3,レストラン_2,東京_3
アラン・デュカスさん。

──新しく「ジランドール by アラン デュカス」で提供される料理のスタイルはどのような形でしょうか? これまでも日本で多くのレストランを手掛けていらっしゃいますが、他の店とどのように異なっていますか?

私はレストランをファッションと同じように捉えています。ファインダイニングの「エステール」はオートクチュール、「ベージュ」はモード、そしてこの「ジランドール」はラグジュアリーなプレタポルテという位置付けです。

ここで提供するのはシンプルで洗練された料理です。もちろん、食材は一番大切にしているもの。2022年に日本の生産者やシェフなどのネットワーク「コレージュ キュリネール デュ ジャポン」も立ち上げ、食に関わる職人的な仕事を次世代につなぎ、日本の食文化を世界に発信していこうと考えています。

食材のほとんどは国産で、程よい調理と調味で、食材の味が感じられる料理をご提供します。今年9月には3日間福井県に行き、見事なナスやトマトと出合いました。日本の素晴らしい食材と季節感の表現を通して、既存の「ブラッセリー」のイメージを底上げしたいと思っています。

――最後に、デュカスさんおすすめのメニューをいくつか挙げていただけますか?

例えば、季節の野菜をそれぞれに最適な火入れで味わいや香りを引き出した野菜の「ココット」、やパイ生地の中に具材を詰めた「ヴォロヴァン」など、フランスのブラッスリーで長年食べられてきたどこか懐かしい定番料理です。受け継がれて愛されてきたそれらの料理を美しく洗練させ、未来につながる定番料理として東京から発信していきたいと考えています。

ホテル_4,レストラン_3,東京_4
スペルト小麦と季節野菜のココット ハーブのコンディモン¥5,280
ホテル_5,レストラン_4,東京_5
鶏肉 リードヴォー クネルのヴォロヴァン クリーム仕立て¥10,230

以上、アラン・デュカスさんへのインタビューをお届けしました。愛され続けたブラッセリーのDNAを受け継ぎつつも新たな食体験と出合える、「ジランドール by アラン デュカス」を訪れてみてはいかがでしょうか?

※掲載した料理の価格は、すべて税込み・サービス料別です。

「ジランドール by アラン デュカス」詳細

  • 「ジランドール by アラン デュカス」 
    営業時間/朝食(宿泊客専用)7:00~10:30(L.O.)
         ランチ12:00~14:30(L.O.)
         ディナー17:30~21:00(L.O.)
    予約TEL:03-5323-3005
  • 住所/東京都新宿区西新宿3-7-1-2 パーク ハイアット 東京 41F

問い合わせ先

ジランドール by アラン デュカス

TEL:03-5323-3459

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
PHOTO :
横田紋子(小学館/人物)
WRITING :
仲山今日子
EDIT :
谷 花生(Precious.jp)