【目次】

【第3回のあらすじ】

身分は違えど想いを寄せ合っていた幼なじみの直(白石聖さん)を連れ、兄・藤吉郎(池松壮亮さん)と3人で織田信長(小栗旬さん)の家臣となるべく清須へやって来た小一郎(仲野太賀さん)。しかし、屋敷とは名ばかりの藤吉郎のボロ屋に3人で住むわけにもいかず…。

(C)NHK
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直を、織田家に仕える浅野長勝(宮川一朗太さん)の娘・寧々(浜辺美波さん)の侍女にうまく収めるあたりは、この兄弟の機転の利かせ方や人を巻き込む能力が本作の大きな魅力のひとつだと確信するシーンでしたね。藤吉郎と小一郎のトークの応酬も小気味よく、けなし合いやののしり合い、罵倒など、大声による会話を聞くのが苦手な筆者も、本作は許容範囲と胸をなでおろしたのでした。

駿河・遠江の大名、今川義元(大鶴義丹さん)と対立を深めていた信長が、2万5千もの兵が攻め来ると家臣たちからやんややんや言われて放ったのは、「何もせぬ」。慌てるな、時を待てということでしょうか。あれ? 信長は「鳴かぬなら 殺してしまえ」のはずですが…。

信長は妹の市(宮崎あおいさん)からも「市は喜んで今川の人質となりまする」「懐に忍び込み、必ずや義元と刺し違えてごらん入れまする」と提案されるも、「義元ごときの首と引き換えにするには、お前はもったいない妹よ」と一笑。

(C)NHK
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市にしろ直にしろ、そして豊臣兄弟の母・なか(坂井真紀さん)や姉のとも(宮澤エマさん)も、闘う男たちには強い女性の支えが必須。『光る君へ』『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺』と、ドンパチのない作品で新たな女性ファンをつかんだNHK大河ドラマ。脚本の八津弘幸さんは、そんな女性たちをうまく戦国ど真ん中の『豊臣兄弟!』へと誘ってくれました。

冬の寒い日、外出する信長の草履を懐で温めるという気遣いで信長の信頼を得た、というのは秀吉にまつわる有名な話(後世につくられたもののようですが)。それを、父の敵(かたき)へのいたずらと、降雨を予測したエピソードに転換したアレンジもお見事でした。

「ご出陣は?」と息巻く藤吉郎は信長から「ならば勝つ方法は?」と問われ、小一郎は「勝つすべはなくても負けぬことならできるかも、和睦なされませ」と進言。激高した信長は――「たとえ負けるとわかっていても、命を懸けて闘わねばならぬことがある。それが侍じゃ!」なのだそうです。「志のない者はいらぬ、失せよ」と一喝された小一郎は「侍なんぞ、こっちから願い下げじゃ」と言い捨て立ち去ります。

さらには、「一緒に中村へ帰ろう」と懇願した直にも一喝される小一郎。「あんたは利口だから、勝てない相手には最初から負けを認めるようになった。負けたくないって言いながら負けるよりも、そっちのほうが傷つかないからね」「あんたは下剋上に魅せられたんじゃ。それなら今闘わなくていつ闘うんじゃ。あんたが侍になったのは、あんた自身のためでしょ」。強い、戦国時代も女は強かった! 白石聖さん、いや直、ブラボーです!

さてさて、のちの徳川家康となる松平元康(松下洸平さん)も登場し、戦国三英傑が『豊臣兄弟!』に揃い踏みとなりました。

(C)NHK
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松平元康は幼いころに織田家の人質となり、父の死後には変わって今川義元の配下に。桶狭間の戦いで重要な任務を果たしますが、今川の敗北後に再び信長と同盟を組むことに。やがて戦国時代に終止符を打ち、江戸に幕府を開く――と、大変忙しい人生を送りました。第3話ではチラ見せ程度の出番でしたが、存在感は十分。「たぬきおやじ」とも呼ばれた家康を、松下洸平さんがどう演じていくのでしょう。

さぁいざ出陣、桶狭間です。2万5千の兵に対し、その10分の1の戦力でどう戦ったのか。知っている話とはいえ、次週も楽しみではありませんか!


【異なるキャラを把握!おさらい「戦国三英傑」】

織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。この3人が「戦国三英傑」と呼ばれるのは、功績はもちろん、それぞれが魅力的なキャラクターであったことも大きな要因でしょう。後世につくられた話も多い――ということはさておき、『豊臣兄弟!』をよりおもしろく鑑賞するために押さえておきたい彼らの人物像を、さくっとおさらいしておきましょう。

■織田信長(1534~82年)「鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス」

安土桃山時代の武将。18歳で家督を継ぐと次々と戦に勝利し、桶狭間で今川の大軍を討って大勝利、尾張(愛知県名古屋市)を統一します。京都に上って比叡山を焼き、浅井氏・朝倉氏を破って将軍・足利義昭を追放。室町幕府を滅亡させ、ついに安土(滋賀県近江八幡市)に築城して天下を取りました。しかし中国出陣の折、立ち寄った京都の本能寺で家臣・明智光秀の謀反にあいます。火をつけられても堂々としたもので、侍女たちを逃がしたのち、切腹により自ら命を断つという、壮絶な最期を遂げました。

信長は江戸時代につくられたとされる上記の俳句が表すように、冷徹さや残虐性が伝わる革命児ですが、小栗旬さんが演じる『豊臣兄弟!』のドスが効いた信長は、とってもセクシーですよね!

第1回より。(C)NHK
第1回より。(C)NHK

■豊臣秀吉(1536~98年)「鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス」

安土桃山時代の武将。織田信長に仕え、次々と手柄を立てて重用されました。もちろん、弟の秀長なくして秀吉の活躍はなかったでしょう。信長の死後は謀反者である明智光秀を討ち、続いて柴田勝家を破り、四国・九州・関東・奥州を平定。この間、天正13(1585)年に関白に、その翌年には太政大臣となり豊臣姓を受けます。また、検地や刀狩りなどを行い、兵農分離を促進しました。大坂城や伏見城、京都の邸宅・聚楽第、金碧障壁画、茶の湯など、華麗な桃山文化を開花させたのも秀吉の功績のひとつ。しかし朝鮮出兵時、戦局半ばで病死してしまいます。

信長と秀吉は2歳しか違いませんが、身分の違いが人物を大きくも小さくも見せています。殿さまと百姓侍の関係構築も、本作の見どころのひとつです。

第1回より。(C)NHK
第1回より。(C)NHK

■徳川家康(1542~1616年)「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス」

江戸幕府初代将軍。織田信長と結んで駿河を、豊臣秀吉と共に関東を支配しました。豊臣氏のトップ5である五大老の筆頭として活躍し、秀吉の死後は石田三成を関ヶ原の戦いに破って征夷大将軍に。1603(慶長8)年3月24日、江戸に幕府を開きます。2年足らずで三男の秀忠に将軍職を譲ったのち駿府に隠退していましたが、1615(元和元)年の大坂の陣で豊臣氏を滅ぼし、武家諸法度を定めるなど、幕政の基礎を築いたのは家康でした。駿府城にて75歳で死去。死因については天ぷらによる食中毒説が主流でしたが、近年は胃がん説も。

「たぬきおやじ」と呼ばれるほど、腹の底を見せず、忍耐強かった家康。ずる賢く、人を騙すことに長けていたともいわれます。『豊臣兄弟!』で家康を演じる松下洸平さんからはまだその片鱗はうかがえませんが、「たぬき」や「おやじ」へどう変貌していくのでしょうか。


次回 『豊臣兄弟!』第4回「桶狭間!」あらすじ】

ついに信長(小栗旬さん)が出陣の決断を下し、小一郎(仲野太賀さん)と藤吉郎(池松壮亮さん)は対今川軍
の前線基地である善照寺砦に向かう。兄弟にとって初めての大戦が始まるが、彼らの真の狙いはかつて父の命を奪った城戸小左衛門(加治将樹さん)を討ち果たすこと。信長は善照寺砦に集った兵たちを前に檄を飛ばし、決戦の地である桶狭間へ向かう。城戸を討つ千載一遇のチャンスを前にした兄弟の決断とは⁉

(C)NHK

※『豊臣兄弟!』第3回「決戦前夜」のNHK ONE配信期間は2026年1日25日(日)午後8:44までです。

※宮崎あおいさんの【崎】は「たつさき」が正式表記です。

この記事の執筆者
美しいものこそ贅沢。新しい時代のラグジュアリー・ファッションマガジン『Precious』の編集部アカウントです。雑誌制作の過程で見つけた美しいもの、楽しいことをご紹介します。
WRITING :
小竹智子
参考資料:『NHK大河ドラマ・ガイド 豊臣兄弟! 前編』(NHK出版)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/『松村邦洋 とにかく「豊臣兄弟!」を語る』(プレジデント社)/ 『NHK大河ドラマ 歴史ハンドブック 豊臣兄弟!<豊臣秀長とその時代>』(NHK出版)/『デジタル大辞泉』(小学館) :