【目次】
【第9回のあらすじ】
直(白石聖さん)の死からわずか10日。その死を悼む間もなく、小一郎(仲野太賀さん)と藤吉郎(池松壮亮さん)、そして蜂須賀正勝(高橋努さん)の3人は、美濃へ向かう山中を歩いていました。織田信長(小栗旬さん)の命により、美濃国主・斎藤龍興(濱田龍臣さん)の家臣である、竹中半兵衛(菅田将暉さん)を味方に引き入れる工作のためです。
道中も藤吉郎の無茶振りは相変わらず…かと思われたのですが、実はその無茶振りは、愛する人の死で落ち込む弟に、あえて無理難題を押しつけることで生きる張り合いを与えてやろうという、藤吉郎なりの思いやりだったことがわかります。
今回、このドラマの脚本を担当している八津弘幸さんによれば、小一郎と藤吉郎の関係性は、『ドラえもん』をイメージして書かれているそうです。のび太役の藤吉郎が「助けて」と言えば、ドラえもん役の小一郎が問題を解決してくれる…なるほど、わかりやすい! そして一見、行き当たりばったりに見える藤吉郎の無茶振りも、常に互いの思いやりと優しさ、そして強固な信頼関係に支えられているのですね。
テンポのよい会話で描かれる、正勝を交えた3人のやりとりはどことなくコミカルで、J・R・R・トールキンの代表作『指輪物語』の第1部「旅の仲間」を連想させます。あるいはRPG(ロールプレイングゲーム)的、とでも申せましょうか。
筆者は第7回のレビューで「ツンデレでキュートな蜂須賀正勝が人気キャラになる予感」と書きましたが、この直感は当たっていました。正勝って、有り体に言えば「ゴツいオッサン」なんですが、微妙な乙女みが可愛らしいんです。
さて、知恵者と名高い半兵衛は、噂通りかなりの変わり者。小一郎たちはすっかり翻弄されてしまいます。
その一方、ふたりは斎藤家重臣・安藤守就(田中哲司さん)はじめ美濃三人衆から、思わぬ申し出を受けます。
「信長さまなら、新たなおもしろき世を必ずおつくりになる。龍興さまにはできますか⁉」と守就に詰め寄った、小一郎の言葉に感銘を受け、これを機に斎藤龍興を見限って信長に仕えたいと言うのです。
この報告を聞いた信長が斎藤家の居城・稲葉山城を包囲するも、窮地の龍興の前に突然、半兵衛が現れ、応戦を試みます。ところが、龍興は城を捨て、ひとりで抜け道を使って逃げ出そうとするのです。これには半兵衛も怒りを爆発させますが、まさにそのとき、抜け道から姿を現したのが、小一郎と藤吉郎たちでした。
彼らは半兵衛の居城・菩提山城(ぼだいさんじょう)からヒントを得て、抜け道の存在を突き止めていたのです。これにはさすがの半兵衛も、兜を脱がざるをえませんでした。
間髪を入れず、「わしらの仲間になってちょーだい!」と半兵衛に頭を下げる藤吉郎。「信長さまに仕えよ!」ではなく、「仲間になって」というセリフが藤吉郎らしい。まさに『旅の仲間』という感じ!
こうして、半兵衛はめでたく、織田家のために忠義を尽くすことを誓いました。藤吉郎&小一郎、今回も見事、ミッションコンプリートです!
稲葉山城落城の翌日、直の墓前に花を手向ける小一郎の姿がありました。大きな手柄を立てたにもかかわらず、生きる張り合いをなくしてしまった小一郎に、「死ぬんか? それとも侍をやめるか?」と声をかけたのは、直の父親・坂井喜左衛門(大倉孝二さん)でした。直を死なせてしまったことを懸命に謝罪する小一郎を、喜左衛門は一喝。娘と過ごした最後の夜、ふたりで交わした「賭け」について話しはじめます。
戦国の世、「争いごとはなくせなくても、むだな殺し合いはなくすことができる。とことん話し合って、考えて考え抜けば、必ず道はある」と小一郎の思いを語る娘に、「ばかばかしい。そんな世など来るはずなかろう」と否定する父。これに対し、直は自分のへそくりの全額、500文を賭けたのだと言います。
「もしかしたら本当にそんな世ができるのでは、とだまされたくなるのが私の旦那さまじゃ」
この言葉を聞いた小一郎の目に、たちまち生気がよみがります。「その賭け、必ずや直に勝たせてみせます!」
「わしは、兄者と共に、もっと強うなって、お前の見たかった世をつくってみせる」
もう大丈夫。小一郎は前を向いて走り続けます。藤吉郎と共に。直を賭けに勝たせるために。決して負けるわけにはいかない、戦が始まりました!
【イケメン軍師・竹中半兵衛が仲間に加わった!】
さて今回、菅田将暉さん演じる軍師・竹中半兵衛がチームに参入しました。
■竹中半兵衛ってどんな人?
半兵衛は、美濃・斉藤氏の家臣・竹中重元の子として天文13(1544)年に生まれ、齋藤道三とその子・義龍、孫の龍興に仕えた武将です。20歳のころ、酒食におぼれて政務を顧みない主君・龍興をいさめるため、わずか十数名の家臣を連れて、たった一日で稲葉山城(のちの岐阜城)を占拠するという離れ業をやってのけたことで、その名を天下に知らしめました。
この話を耳にした織田信長は半兵衛に稲葉山城を譲渡するよう交渉しますが、半兵衛は拒否。半年程立てこももったあとで、龍興に城を返し、しばらく隠棲しました。ドラマでは半兵衛は山奥の庵で暮らしていましたが、これは龍興から蟄居(家にこもって謹慎させる刑罰の一種)を命じられていたからなのですね。
前回の【『豊臣兄弟!』第8回レビュー】では『絵本太閤記』という絵入りの読本(よみほん)について解説しました。実は半兵衛もこの『絵本太閤記』に登場しており、ここでは中国の歴史書『三国志』に出てくる、神秘性を備えた軍師・諸葛孔明(しょかつこうめい)になぞらえ、秀吉により「三顧の礼(目上の者がある優れた格下の者のもとへ3度出向いてお願いをすること)」をもって軍師に迎えられたと描かれています。ときに半兵衛22歳でした。
半兵衛自身は、信長に直接仕えることは固辞し、彼がその才能を認めた秀吉の配下となることを望んだとう説もあり、ドラマでは、墨俣の作戦や稲葉山城の抜け道を見つけた小一郎と藤吉郎兄弟の才能を認め、配下に下ったというストーリーになっていましたね。
『絵本太閤記』のネタ元とも言える『太閤記』などの史料では、「その容貌、婦人の如し」と伝えられ、半兵衛は戦場にはそぐわない線の細い美男子であったようです。そのうえ、武術に優れ、学問に長けるというのですから、三拍子揃った美丈夫(イケメン)だったに違いありません。この半兵衛に菅田将暉さんをあてたキャスティングは見事ですね!
とはいえ、歴史資料には半兵衛がどんな活躍をしたかまでは記されておらず、実像はほとんどわかっていないようです。
■「岐阜」という言葉は信長がつくった
信長は「稲葉山城」から斎藤龍興を追い出し(逃げられ?)美濃を攻略したのち、町名と共に城名も「岐阜」と改めました。ドラマでは藤吉郎が「『岐』と『阜』。縁起のよい字を揃えましたな〜!」と言っていましたね! どんな意味があるのでしょう。
「岐阜」という地名は、尾張の政秀寺の禅僧である沢彦宗恩(たくげんそうおん)が進言した「岐山・岐陽・岐阜」の3つの名のなから選ばれたといわれています。中国の周時代、太平の世を築いた都・岐山の『岐』と、中国の学問の祖・孔子が生まれた曲阜(きょくふ)の『阜』に由来します。日本の県名で中国に由来する名前が付いているのは、岐阜県だけなのだとか。
秀吉による天下統一という険しい旅に、半兵衛という魅力的な仲間が加わり、チーム藤吉郎はますますパワーアップ。今後の展開が楽しみです!
【次回 『豊臣兄弟!』第10話「信長上洛」あらすじ】
信長(小栗旬さん)はついに美濃を攻略、半兵衛(菅田将暉さん)は藤吉郎(池松壮亮さん)の家臣となる。そんな中、足利義昭の使いとして明智光秀(要潤さん)が信長を訪ねてくる。さきの将軍を亡き者にした三好一族を討ち、上洛して義昭を将軍に擁立してほしいというのだ。申し出を承諾した信長は、上洛の妨げとなる浅井長政(中島歩さん)に妹の市(宮﨑あおい)を嫁がせ、和平を結ぶことに。市は嫁ぐ前に、あることを小一郎(仲野太賀さん)に頼む。
※『豊臣兄弟!』第9回「竹中半兵衛という男」のNHK ONE配信期間は2026年3月15日(日)午後8:44までです。
※宮崎あおいさんの【崎】は「たつさき」が正式表記です。
- TEXT :
- Precious編集部
- WRITING :
- 河西真紀
- 参考資料:参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『世界大百科事典』(平凡社) /『NHK大河ドラマ・ガイド 豊臣兄弟!~ 前編』(NHK出版) /『NHK2026年大河ドラマ完全読本 豊臣兄弟!』(産経新聞出版)/岐阜県公式補ホームページ「岐阜県の概要」(https://www.pref.gifu.lg.jp/page/109.html) :

















