近年、日本はちょっとしたミュージカルブームだ。
ドラマ『下町ロケット』でブレイクした山崎育三郎さんやミュージカル界のプリンス・井上芳雄さん、歌姫・新妻聖子さんらミュージカル俳優たちの人気はうなぎ上り。ミュージカルに挑戦する俳優も増えてきた。
アカデミー賞を総ナメ!実力派ぞろいの俳優・スタッフ
そんななか、久しぶりに登場した本格的ミュージカル映画が『ラ・ラ・ランド』だ。
ハリウッド女優を目指すミア(エマ・ストーン)とジャズピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴズリング)のロマンスを描いた王道ラブストーリー。ふたりが歌う喜びや悲しみにしっかり心を揺さぶられる。
『雨に唄えば』や『シェルブールの雨傘』など往年の名作ミュージカルの数々を彷彿させる仕掛けもたっぷりで、懐かしささえ漂う。これがまた、気持ちを盛り上げてくれる。
冒頭から驚きのダンスと歌のパフォーマンスで観る者を圧倒する。なにしろロサンゼルスの渋滞中の高速道路で歌い踊りだすのだから。
主演のストーンは『アメイジング・スパイダーマン』や『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』などに出演してきた若手人気女優。舞台にも立っているだけあって、歌も踊りもバッチリ決まっている。
もうひとりの主人公を演じるのは、『きみに読む物語』で日本でも一躍人気者となったゴズリングだ。ピアノは初挑戦にもかかわらず、全部吹き替えなしで弾いているという。ふたりの演技を見ながら、改めてハリウッド俳優の実力を思い知らされた。
俳優だけでなく、監督にも驚いた。アカデミー賞でも話題となった鬼教師の狂気を描いた『セッション』のデイミアン・チャゼルとは。本作の企画は『セッション』よりも前に練っていたらしいが、こんなにゴージャスで切ないロマンスを描く人だったとは!
音楽に明るいのは間違いない。まだ32歳という若さだけにこれからの作品が楽しみだ。
最後に、この映画を観終わったあとの数日間は、若かりしころの切ない恋を思い出し、じんわりとその余韻に浸っていたことを告白しておきます。
『ラ・ラ・ランド』
売れない女優とジャズピアニストの恋を描いたミュージカル映画。エマ・ストーンの主演女優賞、デイミアン・チャゼルの監督賞をはじめ、本年度のアカデミー賞で最多となる6部門を受賞。
監督:デイミアン・チャゼル、出演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーンほか。
TOHOシネマズみゆき座ほか全国公開中
http://gaga.ne.jp/lalaland/sp.html
- TEXT :
- 坂口さゆりさん ライター
- クレジット :
- 文/坂口さゆり