【目次】

【第15回のあらすじ】

大河ドラマ『豊臣兄弟!』も第15回を迎え、戦国を描く大河らしく、毎週毎週、戦のシーンがてんこ盛りです。『光る君へ』『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』で大河を見始めたライトファンのみなさんのメンタルは大丈夫でしょうか? 

前回、「わが弟」と見込んだ浅井長政(中島歩さん)の裏切りにより、窮地に陥った織田信長(小栗旬さん)。決死の撤退劇により、命からがら京都に逃げ帰ります。信長の怒りはすさまじく、早々に浅井・朝倉を討つべく、軍議を開きます。

(C)NHK
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小一郎(仲野太賀さん)は市(宮﨑あおいさん)の身を案じ、和睦の道を提案しますが、信長は「裏切った者の末路は地獄である」と断じ、一切の妥協を許しません。そこにけがから復活した藤吉郎(池松壮亮さん)が現れ、「そのお役目、この猿めにお任せください!」と高らかに宣言します。いつもながら軽いですね(ほめてます)。いやむしろ、今回の大河はこの藤吉郎の「人たらしで陽気な猿ぶり」が救いでもあるのです。

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藤吉郎が考えた小谷城攻略の策は…

・まずは浅井家の居城である小谷城を、周囲の支城から孤立させること。
・具体的には、苅安城(かりやすじょう)と長比城(たけくらべじょう)を調略し織田に寝返らせたのち、浅野の家臣が多くいる横山城を攻めることで、守りが堅い小谷城から長政をおびき出す。

というものでした。

信長は藤吉郎の提案を承認しますが、小一郎と藤吉郎はひそかに、調略による時間稼ぎの間に、長政を降伏させようと考えていました。

ところが、軍師・竹中半兵衛(菅田将暉さん)はすでにふたつの城はこちらの手に落ちていると伝えた上で、長政の降伏の可能性を否定します。それでも、せめて市だけでも織田家に戻るよう、小一郎は市を説得するための使者を送ります。

元亀元年(1570)年6月19日、織田軍は進軍を開始。金ヶ崎からの撤退後、わずか2か月というスピード侵攻でした。信長の怒りが伝わってきますね! 半兵衛の根回しが効果を発揮し、苅安城と長比城はあっさり降伏。織田軍は一気に北上し、小谷城の目と鼻の先にある虎御前山に陣を構え、城下に火を放ちますが、朝倉軍を待つ浅井軍は小谷城から動きません。

そこで信長は、横山城に向けて出陣の命令を下します。織田軍による横山城包囲の知らせに、浅井軍の重臣たちは焦りを募らせます。そしてそのとき、ようやく朝倉一門の朝倉景健(重岡漠さん)が小谷城に到着します。長政は当主の朝倉義景(鶴見辰吾さん)が来ないことに内心失望しますが、実は義景は浅井に全面の信頼を寄せてはおらず、一乗谷で高みの見物を決め込んでいたのです。

朝倉軍の鉄砲の音が聞こえたころ、織田本軍に徳川家康(松下洸平さん)の軍勢が到着しました。今回のドラマでは、近年まれに見る腹黒なタヌキっぷりを好演している“松下家康”ですが、実は、この到着の遅れも、信長に自らの重要性を強く印象づけるため、あえての遅参だったのです。要するに、もったいつけたのですね。

ところが、信長は家康のそんな薄っぺらい思惑はお見通し。前田利家(大東駿介さん)ら強面の臣下で家康を取り囲み、強烈な圧をかけます。これには家康も全力で謝罪するしかありませんでした。狼狽(うろた)えておびえ、ビビりまくる家康…爽やかさ0%。姑息(こそく)な小者感100%…実はこんな描写に、筆者の家康に対する好感度は爆上がりしたのでした(笑)。

6月28日の早朝、姉川を挟み激突した両軍は、浅井・朝倉軍1万3000、織田・徳川軍2万1000程だったといいます。これが世に言う「姉川の戦い」です。

これまで、戦場で多くの敵とまみえても、人を殺(あや)めることに常に迷いを感じていた小一郎ですが、この戦いではもはやその余裕もなく、兄を助けるために初めて人を斬り、鬼の形相に変わっていく様子に、戦国の厳しさ、残酷さが表れていました。

戦いの序盤、織田軍は川の深みに苦戦し、地の利がある浅井軍が有利に戦いを展開していました。徳川勢が総崩れ寸前かに見える場面もありましたが、そこに部隊の一部を率いた家康が、敵の本陣を横から急襲。一気に形勢が逆転します。

撤退する浅井軍を確認し、勝鬨(かちどき)を上げる織田・徳川軍。激しい戦いの果て、屍(しかばね)の山が広がる凄惨な光景のなかで、「本当にわしらは勝ったんかのう」と呟く藤吉郎。小一郎は「ここは地獄じゃ」と応じます。ふたりは戦乱の非情さ、戦いの虚しさを痛感するのでした。


【現代にも通じる戦場での食料事情は?】

第15回「姉川大合戦」では、小一郎たちが泥まみれになりながら地獄のような戦場を駆け抜けました。そのすさまじい活動量を支えたのは、現代の「お弁当」のルーツともいえる「腰兵糧(こしびょうろう)」でした。これは「究極の機能食」です!

■戦場のフリーズドライ「干し飯」

戦国時代の戦場での代表的な主食は、蒸し米を洗って天日干しした「干し飯・糒(ほしいい)」や米を煎って乾燥させた「炒り米」です。そのままポリポリとかじったり、水やお湯で戻して食べることもありました。なんと言っても、腐りにくく、軽くて持ち運びに便利なのがメリット。まさに現代のフリーズドライ食品の先駆けです。

■「みそ玉」は「調味料」兼「サプリメント」

戦国武士にとって、みそは欠かせないタンパク源でした。みそに火を通し、丸めて乾燥させた「みそ玉」を腰にぶら下げておき、お湯に溶かせば即席のみそ汁に、あるいは干し飯に塗って食べることもできました。また、里芋の茎を煮てから乾燥させ、「縄」状に編んだ「芋茎(ずいき)」は、荷物を縛る縄として使うほか、いざというときは千切ってお湯に入れれば、具だくさんのみそ汁になるという驚きの知恵です。また、殺菌作用のある「梅干し」も戦場食の定番でした。

■「おむすび」はハレの日の贅沢?

現代のお弁当のアイコンといえば「おむすび」ですが、戦場では少々扱いが異なったようです。炊きたての強米(こわいい)を握ったおむすびは「屯食(とんじき)」と呼ばれ、水分が多く重いため、携行には不向きでした。むしろ合戦直前の「景気付け」としてふるまわれることが多かったようです。特に姉川のような激戦地では、ゆっくりおむすびを食べる余裕などはなく、懐に忍ばせた干し飯やみそ玉を移動中に口にする、今風にいえば「エナジーバー」のような食スタイルが主流だったようです。

■調理道具は?

戦国時代後期になると、兵たちが頭にかぶった陣笠が鉄製になり、それを逆さにして鍋代わりにすることもあったとか! そのほかの食料は、野草を採ったり、川で魚を釣ったり、集まってきた物売りから購入したりと、現地で調達していたようです。これでは兵士への「食料供給」がいかにも不安定ですね。

■やがて、小一郎は「兵站」のプロフェッショナルに!

「兵站(へいたん)」とは、「戦を遂行するために必要な人的および物的戦闘力を部隊の後方において維持・補給すること」。このなかには当然、食料も含まれます。のちに「豊臣の調整役」として、兵士や食料の補給や軍資金の管理の分野で、類いまれな才能を発揮することになる小一郎。彼は姉川での地獄のような経験から、「兵たちをいかに飢えさせず、いかに効率よく栄養を摂れるか」という物流(ロジスティクス)の大切さに気付いたに違いありません!


【次回 『豊臣兄弟!』第16回「覚悟の比叡山」あらすじ】

浅井の忠臣・宮部継潤(ドンペイさん)の調略を請け負った藤吉郎(池松壮亮さん)。継潤は、藤吉郎の子を人質に寄越すなら織田につくという。子のない藤吉郎は、とも(宮澤エマさん)の子を差し出そうとするが、ともは激怒。困り果てた藤吉郎は、小一郎(仲野太賀さん)に説得を任せる。

(C)NHK
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一方、敗走した長政(中島歩さん)と朝倉義景(鶴見辰吾さん)は、比叡山延暦寺に立てこもる。信長は、織田に従わないなら寺を焼き払えと光秀(要潤さん)に命じ…。

※『豊臣兄弟!』第15回「姉川大合戦」のNHK ONE配信期間は2026年4月26日(日)午後8:44までです。

※宮崎あおいさんの【崎】は「たつさき」が正式表記です。

この記事の執筆者
美しいものこそ贅沢。新しい時代のラグジュアリー・ファッションマガジン『Precious』の編集部アカウントです。雑誌制作の過程で見つけた美しいもの、楽しいことをご紹介します。
WRITING :
河西真紀
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『世界大百科事典』(平凡社) /『NHK大河ドラマ・ガイド 豊臣兄弟!~ 前編』(NHK出版) /『NHK2026年大河ドラマ完全読本 豊臣兄弟!』(産経新聞出版) /農林水産省「うちの郷土料理」(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/type/rice.html) :