カントリージェントルマンとは、単なる田舎暮らしの紳士を指す言葉ではない。都会から離れた場所に敢えて身を置き、国を動かす男たちに目を光らせ、風雲急を告げればすぐに駆けつける、そんな気概を持った男の住処、との意味合いもある。白洲次郎は、まさにそのように武相荘に暮らした。

今夏より、撮影機材を手掛けるSIGMAとの共同アートイベントが、現在は「旧白洲邸・武相荘」として公開される武相荘で行われる。このイベントは、国の行く末を担う次代へ向け、先人のメッセージを写真という形で伝えるための、現代の「カントリージェントルマン」的行為でもあるのだが、そのイベントについて紹介するまえにまずは、白洲次郎という、稀代のジェントルマンのことを知っておきたい。

メンズプレシャスで大特集! ニッポンには白洲次郎が必要だ

白洲次郎・正子夫妻。
白洲次郎・正子夫妻。

 対米従属を深める一方の日本。見せかけの景気対策に諦めムードの若い世代が親となる頃、この国は一体どうなっているのだろうか…。今求められるのは、情緒的なイデオロギー論にとらわれることなく、国家の進むべき道を明確に提示してみせるリーダーの登場である。「そんな人がいるわけない」と思うかもしれないが、かつては確かにいた。白洲次郎。1902(明治35年)に生まれ、若くして英国に渡り、一流を肌で感じた男。島国特有のコンプレックスとは無縁の度胸と高い志で、敗戦後の日本を陰で支えたこのジェントルマンこそ、男として、日本のリーダーとして、未来永劫忘れてはならない存在である。現在発売中のメンズプレシャス夏号では、そんな白洲次郎のダンディズムを様々な角度から大研究。ファッション誌の次元を超えた、静かで力強い未来へのメッセージを発信している。

武相荘を感じ、切り取ることで放たれる「次代へのメッセージ」

武相荘の正門(夏)。
武相荘の正門(夏)。
春先の武相荘の様子。
春先の武相荘の様子。

 グローバルな視点を持ち合わせていた白洲は、日米開戦からほどなく、近い将来の敗戦と食糧難を見越して東京南部の鶴川(現・町田市)に住まいを移し、自給自足の暮らしを実践した。ただの疎開ではない。それは地方に住みながら中央の政治に目を光らせる、カントリージェントルマンとしての生き方だった。

 白洲が後半生を過ごした、その名も「武相荘」は、前述の通り、現在は「旧白洲邸・武相荘」として公開されている。趣のある旧邸に足を踏み入れ、タフで洒脱でユーモアにも富んだ明治男の足跡を辿ってみてはいかがだろう。

 折しも今年(2018年)7月14日から2019年初旬にかけて、この地で趣向を凝らした写真イベントが開催される。アーティストのための撮影機材を手がけるSIGMAとの共同企画で、その名も「Art of Life(日常の美)」。会期中は写真家・大門美奈氏が武相荘の四季を撮る、「武相荘写真歳時記」展が2回にわたって開催されるほか、撮影講座や、受講者の作品によるグループ展も開催。旧邸の情景に息づく美を確かめ、自らの目と腕で切り取ることで見えてくる先人の意思を、是非ともこの機会に受け止めて欲しい。個々の静かなる衝動は、高潔な生き方を浮き彫りにして、未来への可能性として次代へと受け継がれていくに違いない。

抒情的で抑制の効いた作風で人気の、写真家・大門美奈氏。
抒情的で抑制の効いた作風で人気の、写真家・大門美奈氏。

■「Art of Life(日常の美)」開催要項

1|大門美奈写真展『武相荘写真歳時記』
2018年夏の「春夏編」、2019年頭の「秋冬編」の2回、四季折々に表情を変える武相荘を捉えた写真展を開催します。

【観覧料】写真展のみ観覧の場合、入館料1,050円が必要です。
1)春夏編:2018年7月14日(土)~8月31日(日)
2)秋冬編:2019年1月12日(土)~2月10日(日)

2|写真展オープニング・クロストーク
会期オープニング企画として、展示作品の解説や武相荘のインプレッション、撮影のエピソードなどを大門氏×SIGMAゲストの対談形式でお届けします。
【参加費】1,000円(税込)
【開催日】2018年7月21日(土)11:00~12:00 武相荘「能ヶ谷ラウンジ」
【参加費に含まれるもの】トークショー参加費/武相荘入館料/大門美奈写真展「武相荘写真歳時記」春夏編観覧料
【定員】先着30名(定員になり次第〆切)

3|撮影講座「Art of Life(日常の美)」
7月21日の午後には撮影講座を開催。講座の前半では、身近な情景に息づく「美」を写真に表すためのヒントやテクニックを大門氏が伝授。後半の撮影実習ではSIGMA製品もお試しいただけます。撮影講座の受講者には、作品制作期間中、有効な武相荘入館フリーパスをお渡ししますので、作品制作期間内は何度でも武相荘内で撮影していただけます。受講者が武相荘をテーマに撮影いただいた作品は、受講者によるグループ展として約1か月間、武相荘館内にて展示いたします。提出作品のうち佳作にはSIGMAおよび武相荘よりイベント限定の記念品を謹呈します。

【参加費】7,000円(税込)
【スケジュール】
1・撮影講座:2018年7月21日(土)13:30〜15:30 武相荘館内
2・作品制作期間:2018年7月21日(土)〜9月17日(月・祝)
3・作品提出期間:2018年9月18日(火)00:00〜9月24日(月・祝)23:59 ※オンライン受付
4・受講者によるグループ展:2018年10月13日(土)〜11月3日(金) 武相荘館内
【参加条件】
原則的にスケジュール1〜4のすべてに参加いただけること。スマートフォン以外のカメラをお持ちの方
【定員】15名(定員になり次第〆切)
【参加費に含まれるもの】
7月21日の入館料と昼食代、トークショー参加費、撮影講座参加費、武相荘入館フリーパス(有効期間:7月22日~9月17日)、受講者グループ展参加費(プリント制作実費込)、受講者グループ展へのご同伴者用特別入場券(適宜)

■クロストーク・撮影講座|参加申込の方法

【申し込み期間】6月20日(水)10:00〜7月13日(金)23:59
下記「武相荘オンラインチケット」ストアよりお申し込み・決済ください。
7月17日(火)に参加申し込み・引換用のハガキを発送しますので、当日会場でご提示ください。
「武相荘オンラインチケット」

この記事の執筆者
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MEN'S Precious編集部 
2018.6.16 更新
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