連載|キャスター・大江麻理子の「行ってみて、聞いてみて」
連載【キャスター・大江麻理子の「行ってみて、聞いてみて」】では、大江さんが気になる現場を訪れ、お話をうかがい、“現場”でしか分からない温度をお伝えします。
今回は【〈第四回〉梅に魅了され、和歌山へ!】をお届け。前編、後編の二部に分けてお送りします。こちらは後編です。
千年以上続いてきた日本の梅文化をこの先の千年につないでいく。一粒一粒にその想いがつまっている。/文・大江麻理子
「梅の不作は今年で3年目だそうですね」大江
「異常気象でなく、これが常態化したのだと認識する必要があります」山本さん
国産の梅は、不作が続いている。おととし、日本産の梅の収穫量は前年比でほぼ半減し、統計開始以来最低となる5万1600トンを記録した。
気温が高かったことで梅の花の開花が早まり受粉がうまくいかなかったことや、ひょうによる被害を受けたことなどが主な原因だ。カメムシの大量発生も追い打ちをかけた。去年は7万3900トンと少し持ち直したものの例年よりかなり収穫量が少なかったし、今年も不作だという。
「『今年は暑すぎや』と毎年言っていたけど、みんな気づいてきたんです。『もうこれが普通なんや』って」。山本さんは、暑いことが常態化したのだと認識して手立てを考えなければ、変化には対応できないと言う。
実際、一足早く暑さ対策を考えてきた。枝ぶりが素晴らしく元気な梅の木を見かけたら、誰が育てているのかを調べ、教えを乞いに行った。凄腕の農家たちは、喜んで自分の知見を教えてくれたそうだ。
梅は3年連続で不作の見込み それでも収穫量アップの理由
秘訣は枝の剪定だった。枝葉にまんべんなく日が当たるよう、3つくらいの高低差の層をつくり、枝が被らないようにした。これなら熱もこもりにくくなる。さらに収穫後のとても暑い時期に水をしっかり与えることなども実践した。その結果、山本さんが梅畑で言っていたように、和歌山県平均の4倍ほど収穫できそうなくらい、たわわに実ったのである。
梅ボーイズでは、耕作放棄地を梅畑にしていくだけでなく、梅農家をやめる人々から畑を譲り受けることも増えている。当初4000平米ほどだった面積は、およそ16万平米に広がり、農業を本格的に始めてからまだ5年ほどだが、いまや梅の収穫量日本一の組織となった。
しかし、日本全体では収穫が3年連続で不作だったことから、いま梅を取り扱う現場では急速に中国産の梅に取って代わられる場面が増えている。安定確保ができ、価格優位性もあるとなると、一度変わったものを日本産に戻すハードルは高くなる。だからこそ、山本さんは速やかに収穫量を増やし、供給を立て直すため、梅の栽培方法を広く共有しなければと考えている。
「やっと僕たちにも経験やデータが蓄積してきたので、いま最適な栽培方法を地域にも普及させていきたい。また、梅さんをAIで選別する機械の開発が実現したら、みんなで使えるものにしたい。すべてが待ったなし。もう囲い込んだりしている場合じゃないんです」
山本さんの次なる目標を聞いた。
「日本で一番売上の大きい農業法人になりたいです。そしたら国に農業政策を聞かれるポジションになれるかもしれない」。またしてもとても大きなことをさらっと言ってのけ、梅ボーイは屈託なくニコニコ笑った。
【取材後記】
「完熟梅、いくつか持って帰ってください」と山本さんがおっしゃるので、お言葉に甘えて大きくてきれいな完熟梅を5粒いただきました。最近は梅が出回る季節になると、SNSに「梅仕事」の動画がたくさん出てくるので、自分も挑戦してみたいと思っていました。
そこで、帰宅してすぐに梅を洗い、容器を消毒して、梅シロップを作ってみることに。初めての梅仕事なのにちょっとアレンジも加え、きび砂糖のほかに梅ボーイズさんの梅酢も入れてみました。冷蔵庫に入れて1日1回容器をゆすりながら待つこと1か月。ついに蓋を開け、シロップを炭酸水で割ってみると…、とても香りのよい塩梅サイダーの出来上がり!
真夏のたくさん汗をかいた日などに、塩分補給を兼ねてごくごく飲もうと思っています。暑い夏も楽しみになりました。
──前編はこちら
- PHOTO :
- 川上輝明
- HAIR MAKE :
- 仲嶋洋輔(ペールマネジメント)
- EDIT&WRITING :
- 田中美保、濱谷梢子(Precious)

















