連載|キャスター・大江麻理子の「行ってみて、聞いてみて」
連載【キャスター・大江麻理子の「行ってみて、聞いてみて」】では、大江さんが気になる現場を訪れ、お話をうかがい、“現場”でしか分からない温度をお伝えします。
今回は【〈第四回〉梅に魅了され、和歌山へ!】をお届け。前編、後編の二部に分けてお送りします。こちらは前編です。
〈第四回〉 梅に魅了され、和歌山へ!
「梅ボーイズ」と考える日本の梅の未来/文・大江麻理子
梅の里、和歌山県みなべ町で梅の産業と文化をまもる
梅干しはお好きだろうか。思い浮かべただけで、頬がぎゅっとして唾液が出てくる。ごはんのお供であり、疲労回復や胃腸の不調などにも効くとして、梅干しは1000年以上前から日本で親しまれてきた。
6月1日。梅の実が熟し始め、収穫が本格化するタイミングで、和歌山を訪れた。実は、好きな食べ物を聞かれたら「梅干し」と即答するくらい梅が好きだ。そんな大好物が、どのように育てられ、加工されているのかをこの目で確かめてみたかった。
「梅の実がまさにすずなりですね」大江
「かわいいでしょう。枝の剪定を工夫したら、去年の4倍くらいできました」山本さん
今回は、梅の生産量日本一である和歌山県のなかでも有数の産地、みなべ町で活動する「梅ボーイズ」の山本将志郎さんが取材を受けてくださった。「梅さんが木になっているのを見てほしかったんです。かわいいんですよ」。梅にさん付けをしている。この方も梅のとりこに違いない。
梅ボーイズとは、志を持っている人が新たに梅農家になることを支援するプロジェクトチームだ。山本さんは5代続く梅農家を継いでいるが、梅農家全体で見ると後継者不足が深刻化していて、新規就農者を増やす仕組みがなければ日本の梅産業、梅文化が廃れてしまう。そこで、新規就農者をまず山本さんの会社「うめひかり」で雇用し、梅を栽培しながら梅干しの製造もする。それと同時に耕作放棄地などを梅畑に整備していき、いずれは独立も支援するというプロジェクトだ。
「梅の木の枝がのびのびして、気持ちよさそうに見えます」大江
「僕たちは、枝でじっくり完熟させることにこだわっています」山本さん
さっそく、梅畑に連れていってもらった。間隔をあけて植えられた梅の木が、のびのびと枝を伸ばしている。その枝には梅の実がすずなりだ。「今年ここの畑では和歌山県の平均の4倍くらい収穫できそうです」。山本さんがさらりと言う。目立つのは宝石のように色づいた完熟梅だ。全体的に黄色く、日が当たったところは赤く染まっている。「僕たちは完熟梅にこだわっています。完熟すると梅の実は自然落下するんです」。梅の木の下には下草を生やしていて、その上にシートとネットを敷き詰めている。それらがクッションになるので、熟して柔らかめの梅がぽとりと落ちても傷みにくい。さらに、ネットには傾斜がつけられていて、落ちた梅が転がってひとところに集まり、収穫しやすいようになっている。
「梅、塩、しそだけを使った昔ながらの梅干しを守っていきます」山本さん
「梅農家であり、梅干し製造者でもあることが強みになりますね」大江
こだわりの完熟梅で山本さんたちがつくるのは、原材料が梅、塩、しそだけの、昔ながらのすっぱい梅干しだ。最近の梅干しは、塩気と酸味を控えめにした甘くてフルーティーなものが主流だ。それに舌が慣れたからか、山本さんによると梅干しを買う客のうち昔ながらの味を求める人は1、2割なのだそうだ。しかし、山本さんはそのいまやマイノリティになりつつあるすっぱい梅干しをつくると決断した。自分たちは梅農家なので、つくり方を工夫し、良い味の梅をつくることができる。そしてその梅本来の味を最大限に引き出せる梅干しをつくる製造者になるのだと。
取材の合間に、山本さんの妹、実夢(みゆ)さんが梅を使った料理をふるまってくださった。驚いたのは梅酢の活用法だ。鶏肉を梅酢(好みでにんにくも)で味付けし、片栗粉と米粉を合わせたものをまぶして揚げると、さっぱりとした梅酢唐揚げが出来上がる。梅酢の作用で肉が柔らかくなるのも特徴だ。梅きゅうりは、ごま油とオイスターソースでアレンジするとコクがでて箸が止まらなくなる。梅を知り尽くした方のレシピは、簡単なのに絶品。忙しい人の味方だ。
【レシピ】
◉梅酢唐揚げ
鶏肉(1枚約250g)を一口大に切って袋に入れ、白梅酢大さじ1を加えて揉み込み、5分ほどおく。片栗粉と米粉を2:1の割合でまぶし、180℃の油で揚げる。二度揚げがおすすめ。
◉梅酢ごはん
ごはんを炊く際、お米2合に対して梅酢大さじ1くらいを目安に入れるだけ。白梅酢、紫蘇梅酢どちらでもOK。ほんのり塩味とコク、ツヤが出て甘い仕上がりに。
◉梅きゅうりのごま油オイスターソース和え
きゅうり1本に対し紫蘇梅1個、オイスターソース、ごま油、白ごま各小さじ1。きゅうりをビニール袋に入れてつぶし、袋の中でそのまま食べやすい大きさにちぎり、梅干しを丸ごと投入してしっかり揉み込む(梅と紫蘇チューブでもOK)。ごま油とオイスターソース、白ごまを袋に加えて混ぜ合わせれば完成。
- PHOTO :
- 川上輝明
- HAIR MAKE :
- 仲嶋洋輔(ペールマネジメント)
- EDIT&WRITING :
- 田中美保、濱谷梢子(Precious)

















