連載|キャスター・大江麻理子の「行ってみて、聞いてみて」

連載【キャスター・大江麻理子の「行ってみて、聞いてみて」】では、大江さんが気になる現場を訪れ、お話をうかがい、“現場”でしか分からない温度をお伝えします。

今回は【〈第四回〉梅に魅了され、和歌山へ!】をお届け。前編、後編の二部に分けてお送りします。こちらは前編です。

大江麻理子さん
(おおえ まりこ)キャスター。1978年福岡県出身。2001年テレビ東京に入社。バラエティ番組から政治経済番組まで幅広く担当。経済ニュース番組『WBS(ワールドビジネスサテライト)』メインキャスターを11年務めたのち、2025年に退社。本誌連載で本格再始動。
山本将志郎さん
(やまもと しょうしろう)1993年和歌山県出身。日本一の梅の産地、みなべ町の梅農家に生まれる。北海道大学薬学部及び大学院でがんの新薬を研究していたが、故郷に帰り2019年、昔ながらの梅干しをつくる「うめひかり」を創業。梅文化を継承する次世代が集う「梅ボーイズ」を立ち上げる。

〈第四回〉 梅に魅了され、和歌山へ!

「梅ボーイズ」と考える日本の梅の未来/文・大江麻理子

梅の里、和歌山県みなべ町で梅の産業と文化をまもる

キャスターの大江麻理子さんと梅ボーイズの山本将志郎さん
左/まんべんなく日が当たるよう枝を剪定した梅の木。木陰が心地よかった。右/完熟して枝からぽとりと落ちた梅を収穫する。6月が収穫の最盛期。

梅干しはお好きだろうか。思い浮かべただけで、頬がぎゅっとして唾液が出てくる。ごはんのお供であり、疲労回復や胃腸の不調などにも効くとして、梅干しは1000年以上前から日本で親しまれてきた。

6月1日。梅の実が熟し始め、収穫が本格化するタイミングで、和歌山を訪れた。実は、好きな食べ物を聞かれたら「梅干し」と即答するくらい梅が好きだ。そんな大好物が、どのように育てられ、加工されているのかをこの目で確かめてみたかった。

「梅の実がまさにすずなりですね」大江
「かわいいでしょう。枝の剪定を工夫したら、去年の4倍くらいできました」山本さん

和歌山県の「梅ボーイズ」を訪れたキャスターの大江麻里子さん
上/青梅の選別作業。機械を動かすと穴の大きさに合う梅が落下し、サイズが選別される。この作業には人手がかかるため、現在AIで選別できる機械を開発中。左下/キズのある梅の実は目で確認し手作業で取り除いていく。右下/収穫したその日のうちに発送するのがこだわり。収穫期は常に時間との勝負。

今回は、梅の生産量日本一である和歌山県のなかでも有数の産地、みなべ町で活動する「梅ボーイズ」の山本将志郎さんが取材を受けてくださった。「梅さんが木になっているのを見てほしかったんです。かわいいんですよ」。梅にさん付けをしている。この方も梅のとりこに違いない。

梅ボーイズとは、志を持っている人が新たに梅農家になることを支援するプロジェクトチームだ。山本さんは5代続く梅農家を継いでいるが、梅農家全体で見ると後継者不足が深刻化していて、新規就農者を増やす仕組みがなければ日本の梅産業、梅文化が廃れてしまう。そこで、新規就農者をまず山本さんの会社「うめひかり」で雇用し、梅を栽培しながら梅干しの製造もする。それと同時に耕作放棄地などを梅畑に整備していき、いずれは独立も支援するというプロジェクトだ。

「梅の木の枝がのびのびして、気持ちよさそうに見えます」大江
「僕たちは、枝でじっくり完熟させることにこだわっています」山本さん

和歌山県の「梅ボーイズ」を訪れたキャスターの大江麻里子さん
上/広大な梅畑。完熟梅が自然落下する際の衝撃を和らげるため、収穫の時期には地面にネットを敷き詰める。ネットの下にはシートも敷き、その下には草も生やしているので、フカフカだ。左下/青梅と違って完熟した梅には毒素がないため、そのまま食べられる。右下/ひときわかぐわしい完熟梅。

さっそく、梅畑に連れていってもらった。間隔をあけて植えられた梅の木が、のびのびと枝を伸ばしている。その枝には梅の実がすずなりだ。「今年ここの畑では和歌山県の平均の4倍くらい収穫できそうです」。山本さんがさらりと言う。目立つのは宝石のように色づいた完熟梅だ。全体的に黄色く、日が当たったところは赤く染まっている。「僕たちは完熟梅にこだわっています。完熟すると梅の実は自然落下するんです」。梅の木の下には下草を生やしていて、その上にシートとネットを敷き詰めている。それらがクッションになるので、熟して柔らかめの梅がぽとりと落ちても傷みにくい。さらに、ネットには傾斜がつけられていて、落ちた梅が転がってひとところに集まり、収穫しやすいようになっている。

和歌山県の「梅ボーイズ」を訪れたキャスターの大江麻里子さん
ネットに傾斜をつけ、落下した梅がコロコロ転がって1か所に集まってくるようにしている。収穫の知恵だ。

「梅、塩、しそだけを使った昔ながらの梅干しを守っていきます」山本さん
「梅農家であり、梅干し製造者でもあることが強みになりますね」大江

キャスターの大江麻理子さんと梅ボーイズの山本将志郎さん
この日一緒につくった梅料理(レシピは下に)。上から、梅酢唐揚げ、梅酢ごはん、梅きゅうりのごま油オイスターソース和え。

こだわりの完熟梅で山本さんたちがつくるのは、原材料が梅、塩、しそだけの、昔ながらのすっぱい梅干しだ。最近の梅干しは、塩気と酸味を控えめにした甘くてフルーティーなものが主流だ。それに舌が慣れたからか、山本さんによると梅干しを買う客のうち昔ながらの味を求める人は1、2割なのだそうだ。しかし、山本さんはそのいまやマイノリティになりつつあるすっぱい梅干しをつくると決断した。自分たちは梅農家なので、つくり方を工夫し、良い味の梅をつくることができる。そしてその梅本来の味を最大限に引き出せる梅干しをつくる製造者になるのだと。

キャスターの大江麻理子さんと梅ボーイズの山本将志郎さん
上/料理は山本さんの妹、実夢さんが協力してくださった。“いい塩梅”を知り尽くした絶品レシピに舌鼓。下/山本さんのお祖母様宅で調理・撮影させていただいた。ふだん梅ボーイズのYouTube撮影もここで行っている。

取材の合間に、山本さんの妹、実夢(みゆ)さんが梅を使った料理をふるまってくださった。驚いたのは梅酢の活用法だ。鶏肉を梅酢(好みでにんにくも)で味付けし、片栗粉と米粉を合わせたものをまぶして揚げると、さっぱりとした梅酢唐揚げが出来上がる。梅酢の作用で肉が柔らかくなるのも特徴だ。梅きゅうりは、ごま油とオイスターソースでアレンジするとコクがでて箸が止まらなくなる。梅を知り尽くした方のレシピは、簡単なのに絶品。忙しい人の味方だ。

梅ボーイズが手掛ける製品と調理の様子
上/「梅と紫蘇 チューブ(練り梅)」¥920、「無添加 梅と紫蘇」280g¥1,220、「完熟南高梅の紫蘇梅酢」¥740 ※「完熟南高梅の白梅酢」¥650ほか、商品は梅ボーイズオンラインショップ(https://umenokuni.com/)でも購入できる。右下/唐揚げ用の鶏肉。味付けは梅酢だけ。酢の作用で肉が柔らかくなる。左下/体重をかけ手できゅうりをつぶしていく。

【レシピ】

◉梅酢唐揚げ
鶏肉(1枚約250g)を一口大に切って袋に入れ、白梅酢大さじ1を加えて揉み込み、5分ほどおく。片栗粉と米粉を2:1の割合でまぶし、180℃の油で揚げる。二度揚げがおすすめ。
◉梅酢ごはん
ごはんを炊く際、お米2合に対して梅酢大さじ1くらいを目安に入れるだけ。白梅酢、紫蘇梅酢どちらでもOK。ほんのり塩味とコク、ツヤが出て甘い仕上がりに。
◉梅きゅうりのごま油オイスターソース和え
きゅうり1本に対し紫蘇梅1個、オイスターソース、ごま油、白ごま各小さじ1。きゅうりをビニール袋に入れてつぶし、袋の中でそのまま食べやすい大きさにちぎり、梅干しを丸ごと投入してしっかり揉み込む(梅と紫蘇チューブでもOK)。ごま油とオイスターソース、白ごまを袋に加えて混ぜ合わせれば完成。

PHOTO :
川上輝明
HAIR MAKE :
仲嶋洋輔(ペールマネジメント)
EDIT&WRITING :
田中美保、濱谷梢子(Precious)