フランス・パリのブランド「コルテ」。もともとは靴職人ピエール・コルテ氏による注文靴店としてスタートし、その後既製靴や革小物なども展開するブランドとして成長した。デザイナーとしてブランドのものづくりを担う一方、靴職人としてオーダー会などで世界各国を飛び回るコルテ氏。6月初め、日本に立ち寄った彼に先日発表された2018〜19年秋冬展開の「ポンディシェリー」コレクションと、新アイテムのバックパックについて話を聞いた。
フランス・パリのシューズ&レザーグッズブランド「コルテ」の新作
鮮やかで、どこか優雅な「ポンディシェリー」コレクション
ポンディシェリーとは、インド南東に位置する地域の名称。かつてフランスによってつくられた植民地で、現在もフレンチコロニアルを感じさせる街並みが残る観光地だ。
「実はインドには行ったことはないんです、いつも夢みてはいますが。ポンディシェリーはフランス統治時代の古い建物が残る、とてもロマンティックなところです。ポンディシェリー・コレクションのサフランスエードやバンブーグリーンなどの鮮やかな色は、かの地の写真などから着想しました。これらはインドに行くとまず目に飛び込んでくる色だと思います。そして、こうしたバンブーグリーンの靴などからは、リネンの服装に身を包んだ人々が町を行き交う在りし日のポンディシェリーの光景が思い浮かびます。そのムードは現代にも有効なのではと思ったので、今回のコレクションテーマとしたのです」
自身が手がけた靴を手に取り、このように説明するコルテ氏。紳士靴の既成概念を覆す鮮やかな色と、クラシックな靴づくりに裏打ちされたエレガントなシルエットの組み合わせは、確かに異郷感を醸している。
「この鮮やかなサフランカラーのスエードは、フランスのタンナーに直接オーダーしたものです。それを手作業のカラーレーションで少しくすんだ感じに仕上げています」
それにしても、こうした斬新なアイデアはどのように着想するのだろうか。
「現代のファッションのトレンドというのは、あまりに多くのものが、急速に過ぎ去っているように思います。私としては、人が一足の靴をどのように履くのかということそのものに興味があります。その観点から、映画や劇中での俳優の所作などから着想することも多いですね。また、カフェで一服する時に、1時間ほど街ゆく人を眺めていたり。メトロなどでふと見かけた人に、どういう靴をつくったらいいかと考えることもあります。人はいわば生ける彫刻みたいなもので、靴はその彫刻を載せる台座の役割。私の仕事は彫刻を際立たせるいい台座をつくることなんです。あと、14年間靴づくりをやってきて思うのは、建築の世界でヴァナキュラー(風土に応じて生み出されるスタイルや様式)という表現がありますが、靴にもそれが当てはまるように思います。周囲との調和がとれているということ。その点において、私は自分がつくる靴が常にウェアラブルであるべきだと思っています。たとえ色がブルーやピンクだったとしても、それは履ける靴になっていないといけないのです」
定番的なバックパックを、高品質の革で表現した「ツェルマット」
そして、話題は今回新たに発表したレザー製のバックパック「Zermatt(ツェルマット)」へ。スイスの山岳リゾートの名を冠したバックパックの佇まいからは、アウトドアやミリタリーの薫りが感じられる。
「少年時代にボーイスカウトで、布製の、サイドに少し革を使ったオールドスタイルなバックパックを使っていました。それはヨーロッパではごく一般的なもので、1960〜’70年代当時はトレッキングに行くと皆同じようなバックパックを使っていたものです。それがこのツェルマットのアイデアソースになっています。普遍性を持ったスタイルを、もう少し高級なマテリアルを使ってつくりたかった。印象的なバックルは自分が持っているヴィンテージのミリタリーベルトのものをベースに、モディファイしました。また、レザーカラーのベルトパーツは靴底にも使われるようなバケッタレザーを使用しています。使い込むごとに色や質感の変化が楽しめます」
デザインアクセントでもあるベルト部にはコルテの本店を示すGPSのナンバーが刻印されるなど、ユーモアを感じさせるディテールも。その一方で、2つの外部ポケットは縫い付けではなく、ボディ部の革を使いながらポケットを形成するようなデザインになっていて、マテリアルの上質さとクラフツマンシップ双方が感じられる。最終のデザインに仕上がるまでに4つのプロトタイプをつくり、微調整を重ねたそう。
また、バックパックのバリエーションとして、GPSのナンバーが刻印されたベルトと、サンダルも展開されるという。いずれもアクティブでスマートな旅の、頼もしい相棒となりそうだ。
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- TEXT :
- MEN'S Precious編集部
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