沖縄本島から南西へ約400km、八重山諸島に浮かぶ竹富島。赤瓦の家々や白砂の道、琉球石灰岩の石垣など、沖縄の原風景ともいえる美しい景観が今も大切に守られています。
そんな竹富島の東側に佇むのが「星のや竹富島」。約2万坪の広大な敷地に、琉球赤瓦をのせた客室が点在し、まるでもうひとつの集落のような景観が広がります。
2026年9月には、ミシュランガイドのホテル格付けである「ミシュランキー」において、「星のや沖縄」と共に新たに「1ミシュランキー(特別な滞在)」に選出されました。独自の個性と魅力を持った目的地であり、他にはない体験、一歩先をゆくサービスを提供しているとして評価されています。
今回は「星のや竹富島」に2泊3日で滞在。島の食材を味わう食事や、島に伝わる植物を取り入れたスパ、織物や三線、水牛車などの文化に触れる体験を楽しみながら、実際の竹富島の集落にも足を延ばしました。
ゆったりと流れる「島時間」に身を委ねる滞在をご紹介します。
竹富島にもうひとつの集落。「星のや竹富島」とは
石垣島からフェリーに乗って約10分、竹富港から送迎車で向かう島の東側にある「星のや竹富島」。
竹富島には「ウツグミ」という言葉があります。「一致協力」を意味し、島の人々が力を合わせながら、伝統や文化、美しい景観を守り継いできた精神を表すもの。星のや竹富島は、「ウツグミの島に楽土」をコンセプトに、島の文化や暮らしを尊重してつくられています。
敷地には、琉球石灰岩を積み上げた石垣や白砂の道など、竹富島の伝統的な集落の景観が踏襲されています。その中心には楕円形のプールが広がり、周囲にはダイニングや「集いの館」、スパなどが配置されています。
海側には見晴台が。小高い丘をのぼれば、集落景観を一望できます。開業から10年以上経ち、新しく塗り直したものもあるそうで、赤瓦の色合いもグラデーションがあるさまが見てとれます。海のほうまで360度見渡せるため、時間帯によってさまざまな景色を楽しむことができます。
一般的なリゾートホテルのようにひとつの建物の中で過ごすのではなく、白砂の道を歩きながら客室やダイニングへ。滞在そのものが、竹富島の集落で暮らすような体験につながっているのが大きな特徴です。
施設内にはハーブガーデンや畑があり、収穫できたものを使用することもあるそう。
竹富島は珊瑚礁が隆起してできた島であるため、土の層が薄く、水はけがよすぎるなどの理由で畑作業が大変な場所でもあります。ですが、竹富島では粟や稗、大豆、芋など、農作物は日々の食卓だけでなく祭事にも欠かせない存在。
そこで星のや竹富島では、島の伝統的な畑文化を未来へつなぐ「畑プロジェクト」にも取り組んでいます。島の農業に詳しい島民から栽培方法を学び、伝統作物の復興と継承を目指す活動を2017年よりスタート。島最大の祭事「種子取祭」に欠かせない粟の栽培・奉納をはじめ、島から姿を消した大豆「クモーマミ」や、島民の健康を支えてきた「命草」の活用も進めています。
一軒家のような客室で、竹富島の風を感じて過ごす
「星のや竹富島」の客室は、すべて独立した一戸建て。島の「景観形成マニュアル」に沿い、琉球赤瓦の屋根をのせ、周囲を琉球石灰岩の石垣で囲むなど、竹富島の伝統的な家屋を思わせる造りになっています。
客室は島の伝統建築にならって南向きに配置され、南から吹く風を室内に取り込む工夫も。室内には風が通り抜ける「南の座」が設けられ、エアコンだけに頼らず、島の自然を感じながら過ごしてきた先人の知恵を、現代のリゾートで体感できます。
全3タイプの客室は、定員3名の洋室「ズーキ(デイゴ)」、定員2名の洋室「ガジョーニ(ガジュマル)」、定員2名の和室「キャンギ(イヌマキ)」。今回は、「ガジョーニ」に宿泊しました。
洋室タイプの客室の特徴は、開放的な浴室。リビングからの地続きで、洗面所の前にバスタブが配されています。
すべての客室に置かれているというデイベッドはゴロンと寝転がれるゆとりある大きさで、のんびり過ごすのに最適。伝統的な建築でありながらインテリアはモダンで快適性が高く、居心地のよい空間です。
寝間着や、館内を歩くときにも利用できる室内着も用意されていて、第二の我が家のようにくつろげます。
ちなみに、屋根の上には1棟ごとに違った表情を見せるシーサーが。なかには、風車をもっているなどレアなシーサーもいるそうなので、集落を散歩しながらさまざまなシーサーを見つけてみるのも楽しいですよ。
「命草」から「島テロワール」まで。2泊で味わう八重山の食
「星のや竹富島」での楽しみのひとつが、八重山の自然や食文化を感じられる食事です。今回は2泊したことで、夕食も朝食もそれぞれ異なるスタイルを楽しむことができました。
■1:1泊目の夕食はお部屋で「命薫る島鍋」
1泊目の夕食に選んだのは、客室でいただく「命草薫る島鍋」。沖縄では、身近に生える植物を、健康を支える「命草(ぬちぐさ)」として暮らしに取り入れてきたのだそう。「命草薫る島鍋」では、そんな命草の香りとともに、肉や島の野菜などをたっぷりと味わいます。
命草ブーケを鍋の中の出汁に入れ、命草の香りが立ったらお皿に出し、肉や野菜をその出汁にくぐらせて、肉で野菜を巻いていただく鍋。出汁には味がついているのでそのまま食べてもおいしいですが、お好みでピーヤシ(島胡椒)、胡麻だれ、シークヮーサーポン酢をつけていただくと様々な味わいが楽しめます。
〆はもずくそばと島豆腐。命草の爽やかな香りとともに、肉や野菜のうまみが溶けだした滋味深い出汁でいただくもずくそばは絶品です。
客室でいただけるため、外へ出る必要がなく、自分のペースでゆっくりと食事を楽しめるのもうれしいところ。島に着いたばかりの1泊目にぴったりの夕食でした。
■2:2泊目の夕食はダイニングで提供される「島テロワール」
そして2泊目の夕食は、ダイニングで「島テロワール」を体験。「テロワール」とは、食材が育つ土地の気候や風土、土壌などの環境特性を表す言葉です。「島テロワール」では、八重山諸島の個性的な食材にフレンチの技法を掛け合わせ、この土地だからこそ生まれる料理へと仕立てています。
アミューズの「鰹と牛肉のミキュイ」からスタート。島唐辛子を泡盛に漬け込んだ、ピリッとした辛味が特徴の調味料コーレーグースをアクセントにした焼きトマトのソースとミョウガでさっぱりといただけます。付け合わせには、鶏のレバーを使ったリエット。小さなお花畑のような仕立てが可愛らしい一品です。
続いて、沖縄の高級魚であるミーバイに、島豆腐を熟成させた伝統発酵食品である豆腐ようをまとわせて焼き上げた一品が登場。車エビの出汁からとったスープとともに、島文化を感じながらいただける魚料理です。
肉料理は、上から牛タン、熟成牛のサーロイン、豚肩ロースを串焼きでいただく一品。竹富島の島醤油のもろみとピーヤシで味付けされており、お好みで小皿に入ったグリーンソースや、手前の赤いトマトソースをつけていただきます。また、お肉の下にある小さな焼きおにぎりはお肉との相性抜群です。
デザートは、パイナップルのシブースト。黒糖アイスとともにいただきます。
竹富島での観光や施設内でのアクティビティなども楽しんでほしいという思いから、4皿とあえて品数はおさえたショートコースにしているそう。4皿でもそれぞれのお料理は満足感があり、しっかりお腹も心も満たされました。
沖縄料理をそのまま再現するのではなく、一皿一皿を通して八重山の自然や食材について知ることができるのも、このコースの魅力です。
■3:3種類の朝食から「島の九品朝食」「ゆし豆腐粥朝食」を体験
朝食は、「島の九品朝食」「ゆし豆腐粥朝食」「海風ブレックファスト」の3種類から選ぶことができます。今回は2泊だったので、「島の九品朝食」と「ゆし豆腐粥朝食」をそれぞれ体験しました。
「島の九品朝食」は、沖縄の伝統的な重箱料理をアレンジした朝食。
重箱には、紅芋ぜんざい、タコの酢味噌和え、ラフテー スンシー煮添え、かまぼこ 生姜餡添え、車エビとウサチー、島豆腐の白和え、牛肉と蒟蒻 牛のしぐれ煮、出し巻き卵、クーブイリチーと沖縄らしい9品が並びます。
沖縄の炊き込みご飯であるじゅーしーに香の物、車麩の味噌汁もついて、充実の朝ごはんです。
一方の「ゆし豆腐粥朝食」は、沖縄で親しまれているゆし豆腐を使ったお粥を中心に、朝の体にやさしい料理が並びます。主菜はミーバイと海老のマース煮、5種の小鉢はアーサー、ソデイカの昆布和え、もずくの佃煮、黄身漬け、ゴーヤの佃煮。いずれも豆腐粥がすすむお味でした。
連泊することで、その日の気分に合わせて異なる朝食を楽しめるのもうれしいですね。
島の植物に癒やされる「命ぐすい草の休息 ぶがりのーすん」
食だけでなく、島に根付く植物の力を体感できるのが「星のや竹富島」のスパです。今回は「命ぐすい草の休息 ぶがりのーすん」を体験しました。
沖縄には、心や体を元気にしてくれるものを「命(ぬち)ぐすい」と表現する文化があります。このトリートメントでは、長命草やフーチバー(ヨモギ)などを包んだ温かな「命ぐすい玉」を使い、体を温めながら脚や背中、腕、デコルテ、頭皮などを丁寧にケアしていきます。
施設内でとれたハーブを使ったハーブティーをいただきながらのカウンセリングからスタート。パソコンに向かうことが多く、首・肩まわりの凝りや目の疲れがあることをお伝えしました。
気になる部分を命ぐすい玉でじっくりと温めながら、強く揉んだり押したりせず、ゆっくりと包み込むように、全身をほぐしていきます。痛みもなく、波のリズムを感じるような施術に、ついウトウトしてしまう心地よさでした。
トリートメント後、クミスクチンという水分の排出作用がありむくみをとるハーブのお茶をいただきました。
食事にも登場した「命草」を、今度は体を休めるために取り入れる。島の人々が身近な植物とともに暮らしてきた文化を、違った角度から感じられる時間となりました。
水牛車に織物、三線、星空。朝から夜まで竹富島の自然や文化に触れる
「星のや竹富島」には、島の自然や文化を知るためのさまざまなアクティビティが用意されています。今回は2泊の滞在中、朝から夜まで時間帯ごとに異なる体験に参加しました。
朝に体験したのは「朝の水牛車散歩」。まだ観光客の少ない静かな時間帯に、水牛車に揺られながら竹富島の集落を巡ります。
日中のにぎやかな観光地としての竹富島とは違う、島の暮らしが始まる時間を眺めながら、水牛のゆったりとした歩みに合わせて集落を巡りました。
この日車をひいてくれたのは、人間でいうと40歳半くらいの働きざかりだという「りゅうた」くん。運転技術には個人(牛)差があるそうですが、3位に入るほど上手な水牛との紹介がありました。水牛は歩みは遅いものの2トンの重さのものを引ける力があり、賢くてコースも覚えているのだとか。
運転手さんの水牛や竹富島にまつわるお話もとても面白く、途中には三線の演奏も。あっという間の1時間でした。
また日中は、施設内の「ゆんたくラウンジ」で、島に古くから受け継がれてきた織物文化に触れられる「織りあそび」にも参加。
八重山地方には伝統的な織物が2種類あります。「5つ」と「4つ」の絣(かすり)模様が特徴の八重山ミンサーと、琉球王朝時代には王府への献上品として重宝され、現在は国の重要無形文化財にも指定されている八重山上布です。
そんな伝統的な機織り文化が深く根付く竹富島ならではの「織りあそび」では、機織り機を使ってお守りを作ります。毎年11月に行われる、子孫繁栄や五穀豊穣を願う「種子取祭」で祈祷されたお米や粟などを入れた小瓶に巻き付ける布を織りました。
最初はぎこちなさがあったものの、慣れていくとトントンとリズムよく織っていけるように。手先に神経が集中していき、頭の中が無になるような没入感があるため、海外の参加者は「メディテーションだ」と言うこともあるそう。完成する頃には、「もっと織りたい」と思うほど、没頭して楽しめる作業でした。
実際に自分で手を動かしてみることで、島に受け継がれてきた手仕事をより身近に感じることができるアクティビティです。
夕暮れ時には、三線の演奏「夕凪の唄」へ。三線の音色とともに、八重山で歌い継がれてきた唄に耳を傾けます。竹富島に伝わる代表的な沖縄民謡である「安里屋ユンタ」をはじめ、もの悲しい望郷の唄、スローテンポな子守歌など、バリエーションに富んだ唄を披露してくれました。
その後は、日没の時間にあわせて竹富島を代表する夕日の名所・西桟橋へ。地元の方か観光客の方か、すでに桟橋には多くの人が集まっていました。遠く水平線に夕日が落ちていくさまを眺めていると、あっという間に時間が過ぎ、気が付くとあたりが暗くなっていました。
そして夜には、プールで行われる「てぃんぬ深呼吸」を体験。
「てぃんぬ」とは「天の」という意味です。日中とは表情を変えた夜のプールで、天からのパワーをいただきながらゆっくりと呼吸を整え、心身共にリラックスしていくアクティビティです。
腹式呼吸で鼻から吸って、口からはいて、を繰り返しながらストレッチをしていきます。ゴロンとあおむけで行うストレッチもあり、この日は晴れていたため、夜空にはたくさんの星が見えました。自然の音を聴きながら満天の星空を眺めていると、宇宙空間に漂っているような気分に。
夜はプールに人がいなかったため、ただひとりプールのど真ん中でぷかぷかと浮かびながらゆったりと星空を眺める贅沢なひととき。この時間だけで星のや竹富島に来たかいがあったと思えるほどの非日常体験でした。
水牛車が進む静かな朝から、三線の音色が響く夕暮れ、星空を眺める夜まで。予定を次々とこなすというより、島の時間の流れに合わせて過ごすことそのものが、ひとつの体験になっているように感じられました。
ホテルを飛び出して、竹富島の集落を歩く
「星のや竹富島」でさまざまな島文化に触れたら、実際の竹富島の集落にも足を延ばしたいところ。
竹富島は、中心部に東集落(アイノタ)、西集落(インノタ)、仲筋集落(ナージ)の3つの集落があり、すべて国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されています。
赤瓦の屋根にシーサーをのせた家々、琉球石灰岩を積み上げた石垣、真っ白な砂を敷いた道。竹富島らしい景観は、単に昔ながらの建物が残っているから生まれているものではありません。現在も人々が暮らしながら、道を掃き清め、家々や石垣を手入れし、島の景観や文化を守り続けています。
「星のや竹富島」で見てきた赤瓦や石垣、白砂の道。そのモデルとなった本来の集落を実際に歩くことで、「ウツグミ」の精神が、島の暮らしの中に息づいていることをより身近に感じられます。
「織りあそび」で使用したような機織り機がたくさん保管されている竹富民芸館に立ち寄ったり、島で唯一の商店で島のおばあ手づくりのアイスキャンディを食べたりしながら、島をぐるりと散策。
かつては島が一望できた展望台は、現在のぼることができないのですが、近くのカフェ「ハーヤナゴミカフェ」からは展望台と同じくらいの高さから島を見渡すことができます。
カフェではパフェやかき氷などのスイーツ、タコライスやカレーといった軽食や各種ドリンクを楽しむことができます。マンゴーのかき氷をいただき、ほっと一息。島を歩きながら立ち寄ったカフェでひと休みする時間も、竹富島滞在の楽しみのひとつです。
竹富島の西側に位置する「コンドイビーチ」も、ぜひ立ち寄りたいスポットのひとつ。透明度の高い海と白い砂浜が広がり、遠浅で波も比較的穏やかなため、海水浴にも人気のビーチです。
日中の美しさはもちろん、宿泊者の特権として観光客の少ない早朝に訪れるのもおすすめ。静かな浜辺で、竹富島らしい澄んだ海をゆっくり眺めることができます。
季節を変えれば、また違う島時間に出会える
今回訪れたのは夏でしたが、竹富島は季節によってまた違った表情を見せます。
2026年11月30日(月)までは「秋風(あきかじ)島時間」を開催中。「種子取祭」をはじめ、五穀豊穣への祈りや祭事が行われる秋に合わせ、島の農事や祭事、芸能文化に触れるさまざまな体験が用意されています。
今回も体験した「夕凪の唄」では秋ならではの演目が披露されるほか、「秋の祭事朝食」や「畑人ランチ」、「秋の畑あそび」なども登場します。
食、植物、織物、唄、そして美しい集落の風景。2泊3日を通してさまざまな角度から島の文化に触れているうちに、少しずつ竹富島の時間になじんでいくような感覚がありました。
ただ美しい景色の中で非日常を楽しむだけではなく、その土地で受け継がれてきた暮らしや文化を知る。「星のや竹富島」は、竹富島という島そのものをより深く知るきっかけを与えてくれる場所でした。
問い合わせ先
- 星のや竹富島
- TEL:050-3134-8091(星のや総合予約)
- 住所/沖縄県八重山郡竹富町竹富1955
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 小林麻美

















