連載「Tomorrow Will Be Precious!」明日への希望をアクションに変えるPrecious People

明日への希望をアクションに変える方たちの活動に注目し、紹介する「Precious」連載【Tomorrow Will Be Precious!】では今回、映画監督であり、建築ドキュメンタリー専門映画会社「キリン・グリム」の共同代表のチョン・ダウンさんにインタビュー。

イギリスで「建築と映画」を専攻し、「なぜ撮るのか」という問いを深めたチョンさん。多くの映像制作を手掛けるチョンさんの作品は、移ろいゆく光や風、四季の巡りを丁寧に映し取っているのが特徴です。

ふたりの息子さんたちをはじめ、未来を生きる子供たちへ、今の豊かな環境を確かな記録として手渡していきたいと、今日も静かにカメラを回し続けるチョンさんにお話しをうかがいました。

チョン・ダウンさん
映画監督、「キリン・グリム」共同代表
(Jung Da-woon)中央大学校映画学科を経て、イギリスのケンブリッジ大学建築大学院にて「建築と映画」を修了。’12年、夫と共同で建築ドキュメンタリー専門映画会社「キリン・グリム」を設立し、多くの映像制作を手掛ける。’21年に「ソウル国際建築映画祭建築文化貢献賞」、’22年に「大韓民国建築文化大賞 大統領賞」をそれぞれ受賞。映画『伊丹潤の海』日本上映に向け、準備中。

【Seoul】建築、都市、庭園など “空間” を主役に、その美しさを次世代へつなぐ

映画監督、「キリン・グリム」共同代表のチョン・ダウンさん
映画監督、「キリン・グリム」共同代表のチョン・ダウンさん。

「一般的な劇映画」「建築映像」「自身のドキュメンタリー」。映画監督であり、建築ドキュメンタリー専門映画会社の共同代表でもあるチョンさんは、まずこの3つの映像の違いについて、考えていることを教えてくれた。

「劇映画が登場人物の感情やドラマを追うものだとしたら、建築映像はクライアントの意向を汲んで、建物の美しさを撮り、空間体験を届けることが目的です。一方、私が撮るドキュメンタリーは、“空間” を主役に据えています。それは決して背景ではないのです」

イギリスで「建築と映画」を専攻し、「なぜ撮るのか」という問いを深めたチョンさん。在日韓国人2世の建築家・伊丹潤や、韓国のガーデニング界を牽引する女性造園家・鄭永善(チョンヨンソン)、また出版企業が集う計画都市・パジュ出版都市など、その人生や意義に深く感銘を受けた対象を、独自の視点で撮り続けてきた。

「空間をつくり上げた人の思いを読み解き、そこに息づく人々の人生をありのままカメラに収めたいと考えています。この重なり合いこそが、空間本来の魅力を解き明かしてくれるからです。実在の人物を撮る以上、丹念にリサーチを重ね、事実を歪めることなく、責任感と共に作品づくりを行います。『映画を通じてつくり手に直接会えた気がした』という言葉をもらったとき、意図が伝わったのだとうれしくなります。空間、人間、自然。この調和が最も美しく現れる瞬間を求めて、日々対象を泥臭く追いかけています」

チョンさんの映像は、移ろいゆく光や風、四季の巡りを丁寧に映し取っているのが特徴で、作品の完成まで6〜8年もの時間をかけることも少なくない。空間がもつ美しさを映像作品として残し続けるのは、ふたりの息子たちをはじめ、未来を生きる子供たちへ、今の豊かな環境を確かな記録として手渡していきたいからだそう。残すべき風景と哲学が次世代へつながっていくことを願って、チョンさんは今日も静かにカメラを回し続ける。

◇チョン・ダウンさんに質問

Q 朝起きていちばんにやることは?
小学校2年生になった次男の寝顔を見ることです。

Q 人から言われてうれしいほめ言葉は? 
「ご家族みんなの笑顔や雰囲気が似ていて、とても素敵ですね」と言われるとすごくうれしい気持ちになります。

Q 急にお休みがとれたらどう過ごす? 
行ってみたかった建築空間や展覧会がたくさんあるので、そこを訪ね、ゆっくり時間を過ごす。

Q 仕事以外で新しく始めたいことは? 
済州島に自分たちの家を建てること。小さくても心地よく過ごせる場所にしたい。

Q 10年後の自分は何をやっている?
その自分たちが建てた家で、家族と共に充実した暮らしを送っていると思います。

Q 自分を動物に例えると?
広い広い海を自由に泳ぎ回る、ザトウクジラではないでしょうか。

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PHOTO :
Xian Zhi
EDIT&WRITING :
喜多容子 ・木村 晶(Precious)
取材 :
Rumiko Ose