BMWには、かつてラグジュジュアリークーペの8シリーズがあった。格納式ヘッドライトを備えた優雅なスタイルは魅力だったが、残念ながら1代限りで消滅…と思いきや、ここにきて新しい8が登場。ル・マンで披露されたその姿を、ライフスタイルジャーナリストの小川フミオ氏がリポートする。

新しいBMWデザインの幕開け

全長4.85メートルと堂々としたサイズ感のM850i Xドライブ。
小ぶりなキャビンとなだらかなリアウィンドウで古典的なクーペの美を表現。
リアビューからはハイブリッドスポーツ、i8との共通点を感じる。

 男の服とおなじように、クルマにも一種の様式がある。さらにコーディネーションを考える必要があるなら、楽しみで乗るクルマはクーペだとおぼえておいてもいいかもしれない。

 クーペはもともと短くカットするという意味のフランス語「couper」の過去分詞に由来する。なにをカットしたかというと馬車のシャシーだ。

 前後輪のあいだを短くカットすることで小回りが効くようにした馬車がクーペ(英語ではクープと発音したりする)。馬を操って走らせる楽しみを追求したのがオリジンだ。

 馬車は自動車の原型であり、21世紀になっても(おそらく電気自動車が市場を支配するまでは)その影響から完全に脱していない。

 なにはともあれ、馬車をクーペに仕立ててくれたひとに感謝したいのは、自動車の時代になって、スタイリッシュな2ドア車が数多く生まれたことである。

 最近ではBMWが発表した新型8シリーズが好例だろう。「ここからBMWデザインは新しい時代に入る」。そう宣言したのはBMWのデザインを統括するアドリアン・ファン・ホイドンク氏だ。

 8シリーズの初代は1989年に発表された2ドアクーペで、クラウス・カティツァというオースリア人のデザイナーが低いノーズの印象的なスタイリングを手がけていた。

 新世代の8シリーズはより周到にラインナップの中での位置づけが明確化されている。従来の6シリーズの発展形として、エレガントさとスポーティさを併せ持ったクーペとして企画されたのだ。

 ジャーナリストむけ発表は6月16日から17日にかけてのル・マン24時間レースの前日。場所もレースが行われるサーキット内の特設会場でだった。

 流れるようなルーフラインと、車体側面は強いキャラクターラインをもたず面のカーブで美しさを表現する手法が、たしかに新しく、強く目を惹いた。

ラグジュアリーな装備も充実!

レザーがたっぷりおごられたエレガントさを感じさせるインテリア。
リアシートはおとなにはキツすぎるが大事な荷物を置くのによい。
オプションで美しいクリスタル製シフトノブも用意される。
ル・マンの特設会場での発表会風景(右から3人目はBMWデザインを統括するファン・ホイドンク氏)。
2018年のデイトナ24時間、スパ・フランコルシャン6時間、そしてル・マン24時間と出走して完走しているM8 GTE。
この記事の執筆者
自動車誌やグルメ誌の編集長経験をもつフリーランス。守備範囲はほかにもホテル、旅、プロダクト全般、インタビューなど。ライフスタイル誌やウェブメディアなどで活躍中。