プレミアムSUVの元祖「レンジローバー」
ひと昔前は、SUV(スポーツ多目的車)といえば、悪路での走行や積載能力を重視したクルマが主流だった。その流れが変わったのはここ10年ほど。インテリアの質感を上げ、デザインもゴージャスかつスポーティなプレミアムSUVが欧州ブランドから次々とリリースされたのだ。高い車高ならではの見晴らしのよさ、広く快適な室内、そして何よりも存在感あふれるスイタイリングは、ドライバーだけでなくパッセンジャーにも受けが良く、今やファーストカーの座をサルーンから奪い去ろうとしている。選択肢が増えたことは大いに結構だが、歴史に裏付けされた名品を愛する紳士ならば、まずは元祖たるクルマに着目し、その鍛え抜かれたパフォーマンスを体感して、審美眼を磨きたいと思う。

若々しくスポーティな最旬モデル

 
 

プレミアムSUVのルーツは、ランドローバーが1970年につくりだした「レンジローバー」だ。ランドローバーは60年代にイギリスの自動車ブランドが集まってできたブリティッシュ・レイランドに属し、もともとイギリス版「ジープ」である「ランドローバー」シリーズ(のちにディフェンダーと改称)をつくっていた。卓越した悪路走破性を誇るフルタイム4WDを活かしながら、乗用車と同じ感覚で扱える装備をもたせた新感覚のSUV、「レンジローバー」にいち早く注目したのは、郊外に広大な農場をもつイギリスのお金持ちだった。カントリージェントルマンに愛された「レンジローバー」は長いモデルスパンのなかで確実に進化していく。そんななか、より若々しいスタイリングとスポーツ性を重視した設計で登場したのが「レンジローバー スポーツ」だ。


ドライバーの不安を悦びへと変える先進の機能

「レンジローバー スポーツ」は「レンジローバー」よりも前後のオーバーハング(タイヤからボディ先端までの部分)を詰めていて、そのせいでとてもモダンに見える。それでいて立ち気味のドライビングポジションでボディの四隅を把握しやすい伝統の「コマンドポジション」は健在で、短いオーバーハングも相まって取り回しは容易だ。「レンジローバー」との違いはハンドリングにおいても顕著で、「スポーツ」のほうがシャープでスポーツカー的。インテリアはグレードやオプションの組み合わせにもよるが、基本的にはラグジュアリーでいて、モダンなコーディネートを主とする。伝統の悪路走破性ではハイ/ローレンジを選択できるうえ、路面状況に応じて4WDの走行モードを選択できる「テレインレスポンス」がドライバーの不安を消し去り、快適このうえない悦びをもたらしてくれる。早春の季節に雪の残る長野で試乗したときも、基本的に「テレインレスポンス」をオートモードにしておくだけで滑らかに雪道を駆け抜けることができた。

モードにも目配せしたい紳士は乗っておくべき!

渡河水深限界は850㎜を誇り、およそ考えうるあらゆる自然環境において卓越したパフォーマンスを発揮する「レンジローバー スポーツ」。これだけの素晴らしい性能を、街乗りだけで済ませるのはあまりにももったいない。スポーツカー的キャラクターをも兼ね備えた全天候型SUVとして、オンタイムからオフタイムまで乗り倒すのが正しい使い方といえるだろう。もちろんフラッグシップたる「レンジローバー」もおすすめだが、モードにも目配せをしておきたい紳士は、伝統の中にモダンなテイストをしのばせた「レンジローバー スポーツ」をまずは手に取って、スマートに"着こなして"いただきたい。

〈ランドローバー・レンジローバー スポーツ 〉
全長×全幅×全高:4855×1985×1800㎜
車両重量:2250kg
排気量:2994cc
エンジン:V型6気筒DOHCスーパーチャージャード
最高出力:340PS/6500rpm
最大トルク:450Nm/3500rpm
駆動方式:4WD
トランスミッション:8AT
価格:846万円(税込)~
(問)ランドローバー・コール ☎0120-18-5568

この記事の執筆者
TEXT :
櫻井 香 記者
2017.9.8 更新
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。