杉玉に竹の陰影、純然たる和の構え。そこに躍る、”George”の筆文字。この小気味よい裏切りが、店主である大宮 譲司さんの持ち味だ。大宮さんは、青森県むつ市大畑町のすし屋に生まれ、すしと日本料理を学び、仙台の人気料理店の板長を長年務めた生粋の料理人である。今年、独立しを果たし早くも注目を集めている。

おいしいお酒がありますよ、と静かに誘う杉玉が印象的 
おいしいお酒がありますよ、と静かに誘う杉玉が印象的 

樹齢180年を経た秋田杉のきっぱりとしたコの字型のカウンターが広がる。白く美しい色調と木目が主役のカウンターで飲む酒はまた格別。主たる酒は、日本酒とワインの二枚看板。日本ソムリエ協会認定のソムリエであり、日本酒に特化した“SAKEDIPLOMA”でもある大宮さんならではの趣向だ。

秋田杉のカウンターを設えたメインフロア
秋田杉のカウンターを設えたメインフロア

信頼を置く鮮魚店から届くとびきりの魚は、「いいとこを全部」とでも言うような贅の極まる刺盛りで。本まぐろに銀鮭、伊達岩魚に鰹、北寄貝、タコに帆立に牡丹海老と、全国津々浦々から取り寄せた海幸が吟味の皿の上で光る。ぱんぱんに身の詰まった石巻産のガゼウニは、8月の半ばくらいまでのお楽しみだ。『秋鹿 へのへのもへじ 純米吟醸生原酒』は、生酛造りの無濾過、一貫造り。ひと口ごとにさまざまな脂質、香り、味わいを展開するそれぞれの刺身を豊満に受けとめ、秋鹿特有の渋みで鮮やかに切り返す。

  • その季節ごとに最上の蕎麦粉を選んで手打ちする『薬味たっぷり 手打ちそば』(1,200円)
  • メニューにある刺身は『刺盛り』(1人前・2,000円~)でもオーダー可能。写真は2人前の9種盛り込みで6,500円。『秋鹿 へのへのもへじ 純米吟醸生原酒』(180ml・1,300円)

牡鹿半島の猟師・小野寺 望さんが獲った鹿肉のロースは、熟成をかけて炭火焼きに。遠火でじっくりと炙り、やわらかくジューシーに仕上げる。合わせるワインは、宮城県にワイナリーを構える【Fattoria AL FIORE(ファットリア・アル・フィオーレ)】の『ブッチ』。メルローとデラウェアが醸す複雑さに満ちた甘み、渋みが、野性味あふれる鹿肉の風味と同郷の友のように親しみ合う。

生産者として、人として大宮さんが尊敬する猟師の小野寺さんが獲った『鹿ロース 炭火焼き』(150g・3,000円~。入荷のない日もあるので確認を)、『Fattoria AL FIORE ブッチ』( グラス・1,100円)
生産者として、人として大宮さんが尊敬する猟師の小野寺さんが獲った『鹿ロース 炭火焼き』(150g・3,000円~。入荷のない日もあるので確認を)、『Fattoria AL FIORE ブッチ』( グラス・1,100円)

根幹にあるものは、やはり純然たる日本料理。しかし、ゲストを喜ばせる工夫や遊びを忘れない。【George(ジョージ)】にひそむ多面性は、まだまだ底が知れない。

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WRITING :
ナルトプロダクツ
EDIT&WRITING :
MEN'S Precious編集部