ストレスを感じない「普段履き」を手に入れる

スーパー・スポーツカーやプレミアム・サルーンを手に入れたとしよう。実用的なクルマでは決して味わえない圧倒的なパフォーマンスを堪能し、ラグジュアリーな装備満載の空間に、思わず時を忘れてしまうだろう。一方で、不便に感じることも少なくないはずだ。一番の原因はサイズで、全長5mや全幅2mを超えるクルマが珍しくない今、それらを日本の狭い道路で日常的に乗りこなすには、とてもストレスを感じる。やはり、スーパー・スポーツカーは郊外のワインディングロードやサーキットで、プレミアム・サルーンは渋滞の少ない高速道路で乗ってこそ真価を発揮する。従って、普段使いにはセカンドカーを用いることになるのだが、「どうせ足代わりだから」と実用的なコンパクトカーを選んだところで、そのパフォーマンスや装備の落差にストレスは増すばかりだ。その点、プレミアムカーブランドが作るコンパクトカーは上位モデルと設計思想を共有している分、小さくても楽しめる。メルセデス・ベンツは、その代表格だ。

AMGのパフォーマンスを手軽に堪能できる
 

 
 

メルセデス・ベンツで最も小さいモデルはAクラスだが、価格を抑えたぶん、上位モデルとは装備やドライブフィールなどで差を強く感じる。自分専用と割り切れるなら、おすすめは2シーターオープンの「SLC」だ。以前は「SLK」と名乗っていた、この全長4m強の小型車は、バリオルーフと呼ばれる電動開閉式のルーフを備えることで、オープンカーの宿命であるボディ剛性の低下を最低限にとどめ、不快な揺れや騒音の少ないドライビングが楽しめる。エンジンは3種類。1.8リッターと2リッターの4気筒は車格に見合った瞬発力が味わえて、それなりに楽しいが、一番のおすすめはメルセデス・ベンツのモータースポーツ部門、メルセデスAMG がてがけた「SLC 43」だ。新開発の3リッター6気筒ターボを積むこのモデルは、暴力的とはいかないまでも、走行モードを「スポーツ+」に設定したときのフィーリングと加速は素晴らしく、小さなボディに見合った快適性とスポーツ感覚を兼ね備えていて、とても楽しい。なお、晴天時でもルーフを閉じた時に、スイッチひとつでルーフトップ(ガラス部分)の透過率を瞬時に変更できる装備が付いていて、風の強い日などはこちらで走ったほうが気持ちいい。効果的な装備をしっかり付けてくるところは、さすがである。

「スマート」で常識を覆す楽しみを!

メルセデス・ベンツは90年代半ばから、都市部の渋滞や環境問題を解決することを目標にした、まったく新しいシティコミューターブランドを作り上げた。それが「スマート」であり、現行型は3mを切るごく小さなボディの後方にエンジンを積み、2人乗り/4人乗りが選べる。今秋限定発売された「フォーツーカブリオ ターボ リミテッド」はキャンバストップを備え、ルーフのみを開けたり、ルーフ左右の支柱を外してフルオープンにすることもできる楽しいクルマ。見た目の可愛さで周囲の注目を浴びることは確実だが、実は意外なほど"大人びた"走りが味わえ、インテリアの作りにも安っぽさは微塵もない。特にシートはあらゆる体型にフィットするホールド性と快適性で、むしろこっちをファーストカーにしてもいいのでは、という気にさえなる。それに、依然としてボディサイズがクルマのヒエラルキーを構成している日本で、敢えてスマートのような「思想のある」コンパクトカーに乗ることで、常識を覆す楽しみもある。技術と作り込みの良さで世界を牽引してきたメルセデス・ベンツは、本当のラグジュアリーとは何かを、我々に問いかけているようだ。

〈メルセデスAMG・SLC43〉
全長×全幅×全高:4140×1845×1305㎜
車両重量:1620kg
排気量:2996cc
エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ
最高出力:367PS/5500~6000rpm
最大トルク:520Nm/2000~4200rpm
駆動方式:2WD
トランスミッション:9AT
価格:970万円(税込)
(問)メルセデス・コール ☎0120-190-610

〈スマート・フォーツーカブリオ ターボ リミテッド〉

全長×全幅×全高:2755×1665×1540㎜
車両重量:990kg
排気量:897cc
エンジン:直列3気筒DOHCターボ
最高出力:90PS/5500rpm
最大トルク:135Nm/2500rpm
駆動方式:2WD
トランスミッション:6AT
価格:248万円(税込)
(問)メルセデス・コール ☎0120-190-610

この記事の執筆者
TEXT :
櫻井 香 記者
2018.2.11 更新
男性情報誌の編集を経て、フリーランスに。心を揺さぶる名車の本質に迫るべく、日夜さまざまなクルマを見て、触っている。映画に登場した車種 にも詳しい。自動車文化を育てた、カーガイたちに憧れ、自らも洒脱に乗りこなせる男になりたいと願う。